小町通りに佇む、チョコレート専門店
古くは武家社会が誕生した鎌倉時代から、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮は今に残る歴史や文化の起点となってきました。今回ご紹介する「MAISON CACAO(メゾン カカオ)」は、そんな伝統のある地のほど近く、たくさんの人が行き交う小町通りの一角に本店を構えています。
「MAISON CACAO」は、「ca ca o」という屋号で2015年に小町通りにオープンし、2020年、会社名と同時に「MAISON CACAO」と屋号を一新しました。
「質の高いチョコレートを日常で気軽に食べられるように」との思いから誕生した菓子「生チョコタルト」をはじめ、食べ歩きやお土産などをお目当てに、多くのお客さまで日々にぎわっています。
ふわっととろける、みずみずしい味わい
ご紹介する返礼品は、「アロマ生チョコレート」。水分量を限界まで高めることで実現した驚くほど優しい口溶けと、溶けた後に鼻に抜けるアロマの香りが特徴の上質なチョコレートです。定番のフレーバーのほか、入れ替わりのある季節限定や数量限定のフレーバーも私たちを楽しませてくれる、「アロマ生チョコレート」。その美しいパッケージも相まって、お土産や贈り物にも多く選ばれています。
今回は、なんともぜいたくな4箱セットです。一つ目は、一番人気であり定番、ミルクフレーバーの「CACAO45」。ほのかにスパイシーさが香る、力強いカカオテイストのミルクチョコレートです。
二つ目が、いちごのピューレと果肉を、ホワイトチョコレートにそのままブレンドした「LOVE」。いちごの甘酸っぱさが口いっぱいに広がります。
三つ目は、ゆず果汁を贅沢に使用したフレーバーの「YUZU」。ワインにも緑茶にも合い、合わせるドリンクによって違ったおいしさが楽しめます。
そして四つ目が、ほのかにスパイシーさが香る、力強いカカオテイストのミルクチョコレートに、創業300年を迎える新潟の青木酒造が作り上げた銘酒「純米酒 雪男」をブレンドした、「YUKIOTOKO」です。
アロマ生チョコレートは、2019年に行われた天皇陛下即位の礼の際、参加された各国元首へ送られた旅客機内手土産にも選ばれた逸品です。イギリスの世界品評会「Academy of Chocolate2019」では、金銀銅賞を総なめ受賞。300ブランドを代表する「ブランド・エクスペリエンス」で、2020年度、最高金賞に続く快挙を成し遂げました。さらに各国の首脳が集う「G20」(Group of Twenty)で、機内手土産にも採用。そんな「MAISON CACAO」がセレクトしたおすすめの4品をお楽しみください。
鎌倉を創業地に選んだ理由
MAISON CACAO取締役の石原 なつみ(いしはら なつみ)さん(左)、Whole Salesマネージャーの寺前 友己映(てらまえ ゆきえ)さん(右)に、鎌倉本店でお話を伺いました。まずは、前から気になっていた質問を。前身となる「ca ca o」をオープンした2015年には、まだ鎌倉にはチョコレート専門店はほとんどありませんでした。なぜ、鎌倉にチョコレート専門店をオープンしたのでしょうか。
「『チョコレートの新しい文化を、ここ日本でつくっていきたい』という思いが強くあったので、1号店は文化や歴史のある都市で開こうと思っていました」と石原さん。古都という点では、京都や奈良といった都市も浮かびますが、「鎌倉でなくては」という理由があったといいます。
「鎌倉は唯一“武士の都”なんです。昔ながらの良さや伝統はありつつ、新しい物事を切り開いていくイノベーティブな精神やチャレンジ精神がある。そんな空気が強く感じられて、『チョコレートで新たな文化を創造したい』と活動する我々の創業の地には、鎌倉という街がぴったりだと思いました」。
もうひとつ、鎌倉がぴったりだとする理由が。それは、鎌倉が禅宗文化の発祥の地であるということです。「アロマ生チョコレートは、茶室からインスピレーションを受けシンプルなキューブの形をしています。小さなキューブの中にも、チョコレートの味わいや世界観を詰め込み、禅の美意識を反映させています」。
全てはカカオから
「MAISON CACAO」がカカオを追求する理由には、社長自らが訪れたコロンビアでの体験が原点にあります。そこで出会った農園スタッフたちの実直で誠実な仕事ぶりや生のカカオのみずみずしさ、チョコレートドリンクを飲む人々が笑い合っている日常風景に、価値観を大きく揺さぶられたそう。帰国してからはカカオに傾倒し、触れた人の人生と価値観を変えるほどのチョコレートを目指し、妥協することなく“最高”を突き詰めてきました。
今では、多くの契約農家さんとコロンビアで一緒にカカオを作っており、「FARM TO CUSTOMER」をテーマに事業を行っています。FARM TO CUSTOMERとは、コロンビアでカカオの豆を植えて栽培するところから、日本で商品を製造し、お客さまに届けるまでの全工程に丁寧に向き合いこだわること。カカオの栽培から関わることでおいしさやサステイナビリティを追求し、お客さまだけでなく、コロンビアのカカオ農家の人々にも健やかで幸せな日常を送ってもらいたいのだそうです。
日本ブランドとしてのこだわり
チョコレートの主成分は油分。もしかすると、海外のチョコレートは口に合わないな、と感じたことのある人もいるかもしれません。実は、日本人は欧米人に比べ、唾液量が圧倒的に少ないといわれています。であれば、おいしいと感じるチョコレートも違うはず。そこに気がついた「MAISON CACAO」は、日本人の唾液量に合わせて水分量を調節し、ふわりととろけるための空気量を決め、ひとつひとつハンドメイドでつくってきました。
そうして、日本ブランドとして日本人の舌にあわせたみずみずしい生チョコレートが誕生。科学を駆使した商品開発と、職人技によるハンドメイドの両方をブランド創設時からぶれずに実践しているのです。
チョコレートの販売だけでなく、「MAISON CACAO」は常にさまざまな取り組みに挑戦しています。例えば、“カカオ料理”という、魚とカカオのマリアージュをコース形式の料理で提供する新ジャンルレストラン「ROBB(ロブ)」を立ち上げたり。日本全国を旅して出会った素晴らしい旬の食材とチョコレートのコラボレーション商品「旅するメゾン」シリーズを販売したり。カカオの持つ美容成分に着目して、「カカオコスメ」をつくったり。
カカオの可能性を広げたい
「一見いろいろやっていて幅広いなという印象を持たれるかもしれないのですが、その軸にあるのは、とにかく『カカオの可能性を広げたい』という思いだけなんです。カカオの可能性を、自分たち自身が楽しみながら、お客様に伝えていきたい。そんな活動の積み重ねが、新しい文化になっていったらいい。なので、形にはこだわらず、むしろ形を変えて、カカオの魅力を提案し続けています」と寺前さん。
「海外展開も見据えているし、カカオをもっともっと磨いていきたい。『美味しいチョコレート』は当たり前に、それ以外のアプローチにどんどん挑戦していきたいと思っています」と石原さんもいいます。これからの「MAISON CACAO」の動きに、ますます目が離せません。
関東支部(神奈川県鎌倉市担当) / 庄司 賢吾(しょうじ けんご)・真帆(まほ)
夫婦で土曜日だけの珈琲店「アンドサタデー」を営む傍ら、逗子・葉山を拠点に、企画や執筆、撮影、デザインなど編集カンパニーとして活動しています。記事を通して、事業者さんの人柄や温かみをお伝えしていきたいと思っています。
海と山、自然の豊かさはもちろんのこと、魅力的な人や心高鳴る素敵なお店がたくさんある鎌倉が大好きです。