三方を太平洋に囲まれた漁業のまち・銚子市の絶品缶詰
関東平野の最東端に位置する銚子市は、三方を太平洋に囲まれ、日本一の流域面積を誇る利根川を有する自然豊かな場所。利根川の河口にある銚子漁港は、2020年現在、9年連続で日本一の水揚げ量を誇り、漁業が盛んな地域です。そんな銚子で100年以上にわたり水産加工業を営むのが信田缶詰株式会社。缶詰「国産鯖水煮」をはじめ、サバやイワシ、カツオなどの太平洋の恵みを原料に、素材の持ち味を生かした缶詰や瓶詰、レトルト商品を製造しています。
明治の創業から「銚子の魚を銚子で加工」を貫く
信田缶詰は、1905(明治38)年に創業。当時は主に、クジラ肉の加工を行っていました。「現存する水産缶詰の会社の中で最も歴史があるのではないか、といわれています」と話すのは、営業部の半谷仁希(はんがい・かずみ)さん(写真右)。110年以上にわたって「銚子の魚を銚子で加工する」にこだわり、地元と共に成長してきました。
銚子という立地にこだわる理由をお聞きすると、「昔は利根川を運河として、流通の便も多少は良かったのかもしれませんが、陸路では高速道路に乗るまで約1時間。都内への流通を考えると、正直少し不便な立地かもしれません。ですが、目の前の港で水揚げされた新鮮な魚を、新鮮なうちに加工する。そのことは何にも代えられない価値だと思います」と教えてくれました。
長い歴史の中で、数々のヒット商品も生まれました。県内の学校給食用に開発された「いわし角煮」は、千葉育ちの人にとって懐かしい思い出深い一品(2019年に終売)。もりもりとごはんが進むこの角煮、千葉育ちの私も小学生のころ大好物でした! また、銚子土産の定番である「サバカレー」は、テレビドラマから人気に火が付き、今では同社の看板商品となっています。そんな魅力的なアイテムの中で、主力商品の一つが今回ご紹介する「国産鯖水煮」です。
一番おいしい時期のサバを缶詰にする
サバは寒さが増す10月下旬ごろになると、脂が乗り、旬を迎えます。特に銚子のサバは「脂が乗っているのに上品な味わい」と評判。その最も味が良い、1月下旬までに水揚げされたサバのおいしさを閉じ込めたのが「国産鯖水煮」です。銚子漁港からすぐ近くに工場があるため、輸送による劣化が少ないのが一番のポイント。やはり魚は何よりも鮮度が重要なんですね。ちなみに、サバなどの脂の強い魚の缶詰は、製造年月日から最低1カ月、できれば半年ほど置いてから食べると、味がなじんで一層おいしくなりますよ。
安定した「おいしさ」を保てる理由
「国産鯖水煮」には、主に銚子産のサバを使用しますが、その年の漁獲量によって、予定量が賄えない場合も。その際には、銚子産と遜色のない良質な国産のサバを独自のルートで仕入れ、旬の時期に年間分を調達し、旬以外の魚に手を出さない工夫をしているそう。
そもそも、生産規模がそこまで大きくはないので、供給量を満たすために原料を妥協しなければならないという事態が防げるのだそう。安定して良い原料が調達できるため、身の大きさや味に大きな違いが出ることもなく、缶詰一つ一つのおいしさを均等に保てるのだと教えてくれました。
下処理にこだわり、製造はシンプルに
信田缶詰では、内臓をきれいに取るため、一部工程を機械化。それまで手作業で取り除いていましたが、どんなに丁寧に作業をしても、内臓が残ってしまうのが課題でした。そこで、手作業の前に、機械で尾の付け根に切り込みを入れる工程を加え、尾と一緒に内臓の大部分を除去することに成功。最後に手作業で取り除き、内臓を極力残さないよう努めています。
輪切りされたサバは缶に入れられ、そこに塩水を注入。ふたで密封後、高圧殺菌窯で加熱殺菌することで、中まで火が通り水煮となります。入念な下処理と驚くほどシンプルな製造方法から、素材の持ち味を大切にしていることが伝わってきます。
発想次第でアレンジ無限!おすすめの食べ方を紹介
ほどよい塩分がサバ本来のおいしさを引き立てる「国産鯖水煮」。おすすめの食べ方を半谷さんに教えてもらいました。「まずは、そのまま味わっていただきたいですね。醤油をちょっと垂らして食べるのが、個人的には一番おいしいなって思います。あとは、新タマネギのスライスを乗せて、ポン酢で食べるのも好きです」。手軽でおいしそう!ごはんのおかずにも、おつまみにも良さそうですね。また、ほぐした身を缶汁ごとそうめんと和えてめんつゆにつけて食べるなど、アレンジメニューもいろいろ。意外なところでは、お味噌汁の具として。「冷えると臭みが出てしまうので、アツアツのお味噌汁に加えて、冷めないうちに食べてください」と半谷さん。また、おからと混ぜて成形後、フライパンでこんがり焼けばヘルシーな「サバハンバーグ」に!
アイデア次第でいろいろ楽しめるのは、シンプルな味わいだからこそ。献立が思い付かない!というときでも常備しておくと安心ですね。
いつでも旬が味わえる缶詰は最高のぜいたく品
「腹の脂が入ってきたよ」。漁師さんたちから、こんな風にその日の漁の状況を教えてもらえることもあるのだそう。生きた情報をキャッチできるのは、地元の企業ならでは。製造者と生産者の距離が近いということは、消費者の安心感にもつながります。
「国産鯖水煮」は、2020年6月にパッケージをリニューアルし、「国産」の文字が登場しました。「これまで国産が当たり前だと思っていたので、パッケージには載せてなかったのですが、より安心して手に取ってもらうためにリニューアルしました」と話す半谷さん。安全な原料を使うのは当然だと言い切れる企業姿勢が、おいしさの源なのでしょう。本来ならば、その時期に現地でしか楽しめない獲れたての旬の味が、海から遠く離れた場所でも、食べたいときにいつでも味わえる。そんなぜいたくがかなう至極の缶詰です。