松本市の「楽都」を支える有名ギターメーカー
長野県の中心部にある松本市は、3つの「ガク」がある「3ガク都」と呼ばれます。北アルプスを代表とする山岳観光に恵まれる「“岳”都」、日本で最も古い小学校のひとつとされる旧開智学校を中心に、教育を重んずる「“学“都」、そして、セイジ・オザワ松本フェスティバルを代表にして積み上げられた音楽文化や芸術を作り出す「“楽”都」の面を持ちます。特に「楽都」としての松本市が発展した背景には、楽器メーカーの活躍は無視できません。
2020年のギター(電気ギターを含む)の出荷額において、シェア47.6%と全国1位の長野県(工業統計調査2020年確報品目別統計表より)。その中でも特に盛んなのは、森林に囲まれ、楽器に適した乾燥した気候を持つ松本市です。世界の音楽シーンと共に、ギター製造の技術を重ねてきたメーカーが多く存在します。今回、取材したのは1967年からギター製造を開始した「モーリス楽器製造株式会社」。特に、アコースティックギターをメインに、世の中に楽器を送り続けてきました。
フィンガー・ピッキング・スタイルに特化したモデル
お話を聞いた返礼品は、モーリスオリジナルブランド「モーリスギター S-106III」です。Sシリーズと呼ばれ、和音ではなく指弾きで短音を奏でる表現方法・フィンガー・ピッキング・スタイルに最適なギターとなっています。
モーリス楽器製造株式会社の取締役・統括部長を務める森中巧(たくみ)さんにお話を伺いました。「当時は、今ほどフィンガー・ピッキングに特化したギターは多くありませんでした。アメリカ進出のため、現地のピッキング・コンテストの視察や、ギター製作家との交流を重ねてマーケットリサーチをした結果、“フィンガーピッカーのプレイに対応できるギター”の開発が必要との結論に至りました」。以来、モーリスは、フィンガーピッカー向けギター製造の、先駆けのような存在として知られています。
お話を聞いた返礼品は、モーリスオリジナルブランド「モーリスギター S-106III」です。Sシリーズと呼ばれ、和音ではなく指弾きで短音を奏でる表現方法・フィンガー・ピッキング・スタイルに最適なギターとなっています。
モーリス楽器製造株式会社の取締役・統括部長を務める森中巧(たくみ)さんにお話を伺いました。「当時は、今ほどフィンガー・ピッキングに特化したギターは多くありませんでした。アメリカ進出のため、現地のピッキング・コンテストの視察や、ギター製作家との交流を重ねてマーケットリサーチをした結果、“フィンガーピッカーのプレイに対応できるギター”の開発が必要との結論に至りました」。以来、モーリスは、フィンガーピッカー向けギター製造の、先駆けのような存在として知られています。
プロギタリストからの信頼も厚い森中さん。「フォークグループ『アリス』の谷村新司さんと堀内孝雄さんのギター制作も担当しています。お2人には、活動初期からモーリスのギターを愛用いただいています。私は、還暦祝いのギター制作をしました。ネックにペガサスマークを入れたデザインです。今でも、テレビ番組やコンサートでよく使用してもらっていますよ」
音の良さ、弾きやすさ、見た目。3拍子揃ったギター
Sシリーズは、先述の通り、通常のギターよりもフィンガー・ピッキングに特化したモデルです。ネックの厚みを薄くして握りやすくする一方で、幅を広くすることで各弦の間を広めに取りながら、やや細目で硬めのフレットを正確に打っています。これらのこだわりによって、細かいメロディーを奏でやすくなるのが特徴です。「全工程において、注意深く製造しています。それでもSシリーズにおいて、特に気をつけている点を聞かれたら、ボディに対するネックの角度ですかね」と森中さん。
通常のものより、ボディに対して、ネックをほんの少し角度をつけて仕込んでいます。これによって低い弦高となり、弾きやすくなるのだそう。振動する弦がフレットに連続的に当たった時のノイズが生じにくくなります。「また、ピックに比べてフィンガー・ピッキングでは、はじく力が弱くなるため、音量を出す難易度が特に高くなってしまいます。それでも力強い低音と鳴りが出るように、ギター内部に入る力木の調節にも気をつけています」
Sシリーズの中でも、“モーリスギター S-106III”は最も高価なモデル。モダンなデザインにもこだわりがあり、サウンドホール周りには、木と貝と石で彩られるロゼッタが、きらりと輝きます。また、ボディ上部の形は左右非対称で、弦を支えるブリッジもキリッとしたデザインが特徴です。小さなこだわりが、印象をガラリと変えます。
「音の良さ、弾きやすさ、見た目。これらの条件が全て満たされないと、フィンガーピッカーには満足してもらえません」
メーカー各々が研究を進めていることから、競争が激化するギター業界。それにともなって、求められるレベルも高くなっています。それでも愛用者からは、嬉しい感想がいくつも届いています。
「この1本だけでいいっていう人はなかなか出てこないんですけれども、なかには『自分が望むもとしてドンピシャだった』『もうこれじゃないとダメだね』なんて言ってもらえる方もいて、とても嬉しいですね。“モーリスギター S-106III”の対象者は、初心者から上級者まで問いません。一生物として、この一本でずっと弾き続けてもらえると、嬉しいです」
フィンガー・ピッキングシーンを盛り上げるイベントも開催
発売と同年から、フィンガー・ピッキング・スタイルムーブメントを高めるため、アコースティック・ギターのフェスティバル「フィンガー・ピッキング・デイ」を横浜赤レンガ倉庫で開催しています。イベントでは、プロのフィンガーピッカーによるデモンストレーションライブと、アマチュアのフィンガーピッキングコンテストを同時開催。コンテストでは、音源応募による予選があり、全国から選ばれた20人がステージに立つことができます。
「フィンガーピッカーの中には『いつか赤レンガ倉庫で優勝する』という目標を持ってくれている方もいます。これからも、できる限り大会を続けていきたいですね」
音楽ムーブメントも盛り上げる一流ギターメーカーの一本を
フィンガー・ピッキング・スタイルがまだポピュラーではなかった頃から、未来を見据えてプレイヤーのニーズに応えてきたモーリス。同時に「フィンガー・ピッキング・デイ」を開くことにより、フィンガーピッカーにとっての目標となる舞台を開催しています。
モーリスは、楽器製造というモノの提供だけにとどまらず、音楽を楽しむ文化の創造、音楽の価値提案、そして音楽ムーブメントを盛り上げる役割も、担っています。そんな音楽を愛するギターメーカーの、一生ものの一本を手にしてみませんか?
中部支部(長野県松本市担当) / 竹中 唯(たけなか ゆい)
長野県在住。7年間の会社勤めを経て、フリーライター活動を開始。思考の文章化や、表現のお手伝いを担います。目標は、魅力や思い、ストーリーが伝わるように整理された、最後まで読みたくなるテキストづくり。
松本市は、恵まれた自然と、住みやすさが両立する街。自然や文化、それに伴う商いを活かして発展してきた城下町です。地域の人々や民間企業に、この街を自分達の手で活気づけていこうとする雰囲気があります。