優れた県産品に贈られる「プレミア和歌山」に認定されたしらす
海・山・川など自然環境に恵まれている和歌山県。黒潮がもたらす恵みによって昔から漁業がさかんで、マグロやカツオをはじめとした海産物が有名です。
そんな自然豊かな和歌山県の北部・九度山町からお届けするのが、産地直送の釜揚げしらす。安心・安全を基本に、幅広い分野で優れた県産品を“和歌山らしさ”、“和歌山ならでは”の視点で推奨する「プレミア和歌山」に認定された逸品です。
明治32年創業の老舗しらす屋
今回訪れたのは湯浅町にある「まるとも海産」。1899(明治32)年創業の老舗です。卸売やインターネットでの販売が中心のため直売所はありませんが、ここのしらすはおいしいという評判を聞きつけて工場まで買いに来る人もいるほどの人気店です。
創業以来守り続けているという、丹精込めた昔ながらの天日干しの風景は今も変わらず受け継がれています。天候に左右されるため大量生産は難しいですが、機械乾燥の味とは全く違うそう。天日干しすることで自然の風味豊かな味わいを楽しめます。
初めて食べた湯浅のしらすに感動
「湯浅のしらすは間違いなく和歌山で一番!」と笑顔でしらすについて語ってくれたのは、まるとも海産の樫原亜沙子(かしはらあさこ)さん。初めて湯浅のしらすを食べた時、パサパサ感や臭みがなく、白くてふっくらした見た目と、しっとりした味わいに感動したそう。
スーパーや飲食店への営業や百貨店の催事に自ら出向き、しらすのおいしさをお客様に伝えます。地域の子どもたちが工場見学に来ることもあり、食育にも力を入れているのだとか。
海の恵みと山の恵みを受けた豊かな漁場
湯浅のしらすの特徴は、海の恵みと山の恵みを両方受けていることです。湯浅湾は紀伊山脈の深い山々から流れるたくさんの小さな川が集まる河口に位置し、植物性プランクトンを多く含みます。川が運んできた植物性プランクトンと、黒潮や瀬戸内海からの海流がもたらす海のプランクトンが混じり合い、豊富なエサ場となっています。
イワシなどの稚魚であるしらすは、大きな魚から身を隠すため透き通った体をしています。水が汚れていると黒っぽくなりがちですが、湯浅の温暖な気候と良質な水が育んだしらすは茹で上げるときらきらと白く輝くきます。
水揚げから10分以内に釜揚げ
しらすはとにかく鮮度が命!まるとも海産のしらすは漁港に水揚げされてから10分以内に一気に釜茹でします。水揚げの時間には釜を沸かし、市場で目利きして買い付けた「生しらす」の到着を待ちます。大量のしらすを順番待ちさせないため自動厚釜も使いつつ、職人である社長自らも釜揚げします。茹ですぎでも茹で足りなくてもおいしいしらすにならないため、ベテランの職人が最高のタイミングで茹で上げます。
釜茹でする際の味付けには赤穂(あこう)の塩を使用。色々試した結果、薄塩である赤穂の塩が一番おいしく仕上がると感じたそうです。できるだけ塩分を抑え、かつ薄すぎない程度に加減したたっぷりの塩水で茹でます。同じ地域のしらす屋でもそれぞれ味が違うのは塩加減によるところが大きいのだとか。
しらすの旬は春と秋の2回。春に獲れる「春しらす」は小さくてふわふわの食感、秋に獲れる「秋しらす」は冬越しのため脂の乗ったうまみが特徴。湯浅湾は禁漁期間がなく一年中しらすが獲れるため、常に新鮮なしらすを提供できるのもまるとも海産ならではの強みです。
おすすめはしらす丼!洋食アレンジも相性抜群
しらすを知り尽くした樫原さんに、しらすのおいしい食べ方についてお伺いしました。一番のおすすめは、何といってもしらす丼。白いご飯の上にしらすと大葉を乗せて、ポン酢やごま油をかけていただきます。お好みでねぎや梅干しを加えてもおいしいですよ。
洋食のアレンジレシピもたくさんあります。パスタ、ピザ、サラダにしらすをかけると、見た目も美しくほんのり海鮮の風味も出ます。とろけるチーズにしらすを乗せてフライパンで両面焼きにした洋風パリパリせんべいも人気。主張しすぎないしらすはどんな素材とも相性抜群です。
「おいしい」の一言を励みに受け継いでゆく伝統
「営業活動や子どもたちへの食育を通じて、自分たちが作ったしらすを目の前でおいしいと言ってくれた時は本当に嬉しいです。ふるさと納税を通じて特産物で地域を盛り上げ、昔ながらの伝統的な製法を守りながらおいしいしらすを作り続けたいです」と話す樫原さん。
明治の頃から、しらす文化を守り続けてきた老舗企業の言葉には重みがありました。地域の人々はしらすを取り尽くさないよう取り決めを守りながら漁をしているそう。大切に守りながら育まれたしらすの味は格別。ぜひそのおいしさをお楽しみください。
近畿支部(和歌山県九度山町担当) / 小山 志織(こやま しおり)
紀南在住。県外の大学卒業後、和歌山にUターン。和歌山を拠点にしつつ旅するライター&エッセイストとして旅で得た経験などを元に執筆活動をしている。地域の情報発信にも関心があり、県内の取材に出かけることが多い。書くことが好きで、自分自身が地域の魅力を知りたい!という気持ちで取材執筆しています。
海・山・川がそろった自然豊かな和歌山県。温暖な気候で、農業や漁業がさかんです。ぜひレジャーの後においしいものを味わう旅を!