鎌倉という街を体現する、質実剛健な革靴
山と海に囲まれた自然豊かな古都、神奈川県鎌倉市。古くは日本初の武家政権である鎌倉幕府のころから、この街には質実剛健を旨とする文化が積み上げられてきました。その独自の歴史や多くの寺院、三方を山に囲まれた豊かな自然に惹かれ、江戸時代にはすでに多くの人が訪れる街だったそうです。
外から訪れる人を受け入れ賑わう「小町通り」と対をなして、地元の人も多く行き交うのが「御成通り」。この通りの中ほどで、格式高い鎌倉の男たちを足元から支えてきたのが、メンズオーダー靴ブランド「IL PULEDRO(イル プレドロ)」です。80年ほど続く「鎌倉靴 KOMAYA(コマヤ)」の2階で、靴職人の神座健次さんは今日も誰かの人生に寄り添う一足を仕立てています。
国産の上質革で丁寧にお仕立てする、一点もののシューズ
「IL PULEDRO」の階段を上がっていくと、艶やかで色気のある、ショーケースに飾られた革靴が迎えてくれます。うっとりとしてしまうほどの滑らかなフォルムと温かみのある色合いは思わず見惚れるほど。ドアを開け工房に入ると、そんな特別な靴を作る神座さんが、革を裁断する手を止めてお話を聞かせてくださいました。
「まずは実際に靴を見てみてください」と神座さんがご紹介してくれたこの革靴は、キップと呼ばれる若い牛の革を使用したもの。国産の上質革はきめが細かく、ハリと強度があり、ハードワークにも適しているそうです。 豊富なデザインパターンの中から、自分色の革靴を仕立ててもらうことができるそうです。
履き手と作り手が一緒になって作る一足。この一足があれば、人生がより豊かになること間違いありません。
形式を尊重しつつ遊び心を忘れない靴づくり
「靴づくりは自分の全てかもしれないですね」と話す、KOMAYAの三代目でもある神座さんの人生の隣には、常に靴づくりがあったと言います。生き方を決める時にも自然の流れで靴職人を志し、飽くなき探求は海を渡り、さらなる技術を求めてイタリアへ。フィレンツェの工房「STEFANO BEMER」などに飛び込みで修行を志願し、靴づくりだけに没頭する6年もの日々を送りました。「その日々で学んだ、確かな技術はもちろん、少しの遊び心が、自分の靴づくりの下地となっています」と神座さん。イギリスのトラディショナルなスタイルとは少し違う、靴の横で靴ひもを編み上げるサイドレースや細身のシルエットといった遊び心のある表現がイタリア流だそうです。
例えば神座さんが時折使うのが、本来カッチリとした紳士靴にはあまり用いられない「フルタンニンレザー」。化学薬品を使わずに植物の渋でなめしたレザーで、少し変わった風合いに仕上がります。「牛が生きていた時の傷までも味として生かすくらい、革そのものの良さや個性を引き出したいんです」と教えてくれました。
デザインも一つの形に決してとらわれることはありません。変化に富んだ遊び心を感じさせてくれる靴づくりから感じるのは、靴職人としての幅の広さ。それらを押し付ける訳ではなく、物腰柔らかな対話を通して、履き手にとって納得できる一足を作りあげていきます。
そして出来上がる一足は、一つ一つ表情の違う、紛れもない世界で一足だけの革靴。経年変化も楽しみながら、履き手と一緒に年を重ねていけるような、特別な相棒になるはずです。
手間を惜しまず、一足一足心を込めて
「靴は手のひらの上で出来上がるもの。お客さまと一緒に、一足を作りあげていく過程にこそ醍醐味があります」と、神座さんは大切そうに革靴を手に抱えます。
靴を作る際には、実際に一度はお店に来てもらい、どんな靴にするかの相談から、足の採寸までを必ずお願いしているとのこと。「その方にとって一生物の靴ですから」と手際良く足のサイズを測っていき、履き心地の良い靴の形を考えてくれます。
するすると紙の型を基に革を流れるように裁断していき、仕上がりに緩みがないよう革を木型に「つり込み」という作業で合わせていきます。もちろんその全ての工程が手作業。丁寧で妥協のない仕事を通して、少しずつ靴に神座さんの魂が宿っていきます。
「一足作り終えると、次に挑戦したいことが新しく生まれてくるんです。靴づくりには終わりがないので、人生を懸けて靴づくりと向き合っていきたい」と真摯に話してくれました。そんな神座さんの人柄そのものを表した、誠実で丁寧な革靴は、足元に確かな品格を与えてくれるはずです。
これからも、生まれ育った鎌倉という街の静かな工房で、誇り高き靴職人の探求の旅は続いていきます。
メンズオーダー靴のブランド ”IL PULEDRO”(イル プレドロ) のお礼の品