美しいサンゴの海に囲まれた島奄美を救った「ナリ」  鹿児島県奄美市

鹿児島の南方約380kmの海上に浮かぶ奄美大島の、北部~中心部に位置する奄美市。
サンゴ礁の青い海やマングローブの原生林が広がる自然豊かなこの地には、
かつて飢饉で苦境に立たされた人々の命を救った「ナリ」という伝統食が根付いています。
その魅力を探るべく、奄美の食文化の継承に努める「マシュやどぅり」を訪ねてみました。

美しいサンゴの海に囲まれた島奄美を救った「ナリ」  鹿児島県奄美市

鹿児島の南方約380kmの海上に浮かぶ奄美大島の、北部~中心部に位置する奄美市。サンゴ礁の青い海やマングローブの原生林が広がる自然豊かなこの地には、かつて飢饉で苦境に立たされた人々の命を救った「ナリ」という伝統食が根付いています。その魅力を探るべく、奄美の食文化の継承に努める「マシュやどぅり」を訪ねてみました。

奄美ブルーに魅了される岬の展望台へ

奄美ブルーに魅了される岬の展望台へ

 「あと10分少々で着陸です」の機内アナウンスに窓外を見下ろすと、コバルトブルーにきらめく海と、びっしりと木々に覆われた森が目に飛び込んできました。その自然の豊かさから世界自然遺産の登録候補地にも選ばれている奄美大島です。
 島に着いてまず向かったのは、空の玄関口である奄美空港から車で約10分の「あやまる岬」。奄美十景にも数えられる景勝地で、「あやまる」の名は、丸い地形が綾織の鞠(まり)に似ていることに由来するのだそう。岬の駐車場から歩いてすぐの展望台から見える景色は、サンゴ礁の海が一望できる大パノラマビュー! 視界も広く、地球の丸さが実感できました。

〈上〉奄美ブルーとよばれる独特な海の色が満喫できるあやまる岬。広々とした海と空のコントラストが気持ちいい 〈左下〉あやまる岬展望台。写真左手の水平線上には喜界島もうっすらと見えている 〈右下〉岬全体が公園となっており、海をせき止めて作られた海水プールのほか、グラウンド・ゴルフ場や遊具広場などがある


奄美の食文化を継承し、地域を活性化

奄美の食文化を継承し、地域を活性化

 美しい海景色を堪能した後は、車で約20分の「打田原(うったばる)のマシュやどぅり」へ。「ナリ(ソテツの実)」や「マシュ(塩)」を使った料理が味わえる店です。出迎えてくれたのは、ナリやマシュを加工する打田原集落会事業部の代表・和田昭穂さん。「打田原のマシュやどぅり」も、この事業の一環として運営されています。
 打田原集落で生まれ育った和田さんは、大阪で教員として30年あまり勤めた後に帰郷。かつての活気を失っていたこの集落を元気づけたいと、2006年にマシュ加工場を立ち上げたそう。「先人たちの作り上げた食文化を継承する“道場”的な施設を作りたかったんです。集落の皆で協働すれば地域の活性化にも繋がると考えました」と和田さん。

〈上〉御年88の和田さん。集落の人々を引っ張るリーダーだ 〈左下〉ナリと呼ばれるソテツの実。毎年9月ごろに赤い実をつける 〈右下〉ナリを手作業で割って実の中身を取り出し、アク抜きしてから乾燥させたもの(右)と、その後毒抜きをしてデンプンのみを取り出したナリ粉

 ナリは江戸時代から食されていたそうで、奄美が薩摩藩の厳しい統制下にあったことや、干ばつに襲われるなど慢性的な食糧難だったことから生まれた食材だといいます。
 「ナリには毒があるので、先人たちは、天日晒し、発酵晒し、そして川での流水晒しと大変な手間をかけて毒抜きをし、ようやく食べられるようになったナリで飢えをしのいでいました。かつてのナリ粉はセメントみたいな色をしており味にもクセがあったのですが、私たちは独自の毒抜き法を編み出したので、この集落で作るナリ粉は嫌な味がしないんですよ」。そういって和田さんが出してくれたナリうどんを味わうと、本当にクセがなく、つるりとしたのど越し。ナリ粉入りカステラも、嫌な匂いがしないばかりか、ナリのデンプンのおかげで少しモチッとした食感も楽しめました。

〈上〉鶏ガラと干し椎茸でとったスープも秀逸な「元祖 奄美のナリうどん」500円。「ナリガイ(粥)」200円はおかわり自由。漬物はうどんにもガイにも付く 〈左下〉コーヒー(ブルーマウンテン)300円にはナリ粉入りカステラが付く 〈右下〉ピンクとブルーで彩られたマシュやどぅりの飲食スペース

 また、マシュやどぅりとは奄美の方言で塩焚き小屋のこと。店名の通り、敷地内には塩焚き場があり、天然塩づくり体験も行っています。実際に塩の汲み上げを体験しましたが、まだ水分を含んだ塩は見た目より重く、なかなかの重労働。塩づくりで生計を立てていた人々の苦労を感じることができました。体験すると、体験料の半額相当の塩やにがりを持ち帰ることもできます。旅の思い出に体験してみてはいかがでしょうか。

 島民の命を繋いだナリと、美しい海から生まれるマシュ。「この食文化は奄美の宝」という和田さんの言葉がいつまでも心に響く旅となりました。
(2019年7月)

〈左〉塩釜で焚き、結晶化した塩を汲み上げるスタッフの平俊也さん 〈右上〉塩の汲み上げ体験。最初は重さにふらつくがコツを掴めば楽しくなってくる 〈右下〉体験後に持ち帰ることができる塩やにがり。店頭でも販売している

打田原のマシュ 袋詰 小袋

打田原のマシュ 袋詰 小袋

「打田原のマシュやどぅり」が提供するお礼の品。マシュやどぅりの目の前に広がる打田原海岸の海水をそのまま自然濾過して煮詰めるという、古くから奄美市に伝わる製法で作られた天然塩です。打田原のマシュは、市販の精製塩よりもミネラル分が豊富で辛さもまろやか。環境への配慮から、塩を焚く燃料は流木をはじめとした木材や廃油を使用しています。天然塩以外に、ナリを使った「ナリうどん」や「ナリみそ」も返礼品として人気です。
※掲載の「お礼の品」は品切れや季節の都合で受付を終了・中止していることがあります。

〈左〉すべて手作業で作られる打田原のマシュ 〈右〉透明度の高い海が広がる打田原海岸。ここから海水を汲み上げている

SPOT LIST

あやまる岬(あやまるみさき)

【電】0997-63-8885(あやまる岬観光案内所)【住】奄美市笠利町大字須野【交】奄美空港から車で約10分【料】【時】【休】散策自由【P】50台

打田原のマシュやどぅり(うったばるのましゅやどぅり)

【電】0997-63-2378(事業部長・和田氏宅)【住】奄美市笠利町喜瀬3265-1【交】奄美空港から車で約25分【料】天然塩づくり体験1000円〜、粗塩すくい体験2000円〜(要予約)【時】【休】飲食店は土~月曜の10〜15時、体験は予約時に応相談【P】5台

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