山梨県富士河口湖町
自然に癒される穴場スポット「くにの松原」
2022.06.24
日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は鹿児島名物スイーツ「南国白くま」を製造するセイカ食品株式会社・乳業製造部の窪田昌平さんに、大崎町の「くにの松原」をおすすめいただきました。
7km続く“白砂青松”
志布志湾沿い約7kmに渡って、何百本ものクロマツが白い砂浜に林立する鹿児島県大崎町松原の中心地域、通称「くにの松原」。“白砂青松(はくしゃせいしょう/白い砂浜と青々とした松原)”“銀と緑の帯を締めたよう”と言われる、美しい風景が広がっています。
日南海岸国定公園内に位置し、ウミガメの産卵地としても知られるくにの松原は、キャンプ場やプール、遊歩道など子どもから大人まで楽しめる施設が充実。季節ごとの鳥の声や潮騒を聞きながらのんびりできる癒しのスポットです。
くにの松原の歴史は明らかではありませんが、クロマツは潮風に強く、よくしなるため、海風から暮らしや農業を守るための防風林として植えられたと言われています。
クロマツの寿命は約120年と長く、植樹や手入れなど人間が関わり続けてきたことによって現在の松原ができあがりました。漢字では「救仁(くに)の松原」と書き、昔この一帯で有力だった「救仁郷」という名の豪族に由来するとされています。
先人が受け継いできた風景
そんな「くにの松原」を100年先に残したいものとして紹介してくれたのは、鹿児島名物スイーツ「南国白くま」を製造するセイカ食品株式会社の窪田昌平さん(くぼたしょうへい)さん。
窪田さんは、くにの松原の魅力について「景観が美しく、歩くのが気持ち良いところです。くにの松原から見る太平洋の波は迫力満点!松原は先人が植樹や手入れをして受け継いできたもので、これからも長く残していかなければならないかけがえのないものだと思います」と推薦してくれました。
潮騒に癒される、キャンパーたちの“穴場”
海岸沿いを歩くのも気持ちがいいですが、くにの松原は九州のアウトドア好きがキャンプを楽しみに訪れる穴場のキャンプスポット。静かで潮騒が聞こえる環境とコストパフォーマンスのよさがキャンパーたちを引き寄せ、リピーターも多くいます。せっかく訪れるならキャンプ場に泊まって、満天の星や太平洋の地平線から昇る朝日など、松原の大自然を一日中満喫するのがおすすめです。
キャンプ場は、松林の中に持ち込みテントを張ることができるフリーサイト(1サイト1,050円)、電源と固定テーブル付きでゆったりサイズのオートキャンプサイト(1サイト2,630円)、キッチンやユニットバスも備えたバンガロー(4〜8人用サイズがあり、料金は8,800〜17,300円)など、キャンパーのレベルに応じて楽しめる設備が整っています。料金はびっくりするほどお手頃!設備説明は公式サイトに分かりやすくまとまっており、ネットで予約ができる手軽さも人気の理由です。
アウトドアとおしゃべりが大好きな管理人
今回、くにの松原の魅力を語ってくれたのは、キャンプ場の管理人・堀之内裕行(ほりのうち ひろゆき)さん。茶目っけとユーモアたっぷりでキャンパーたちを楽しませることが得意な堀之内さんは、旅行添乗員やダイビングインストラクターの資格も持つアウトドアの達人です。鹿児島市出身で大崎町にIターンして20年になるのだとか。
勉強一色の環境から離れようと高校の山岳部に入ったことがきっかけで、アウトドアにハマった堀之内さん。鹿児島市内のアウトドアショップで12年働き、自分のペースでのんびり働こうと独立。2002年に大崎町からくにの松原キャンプ場の指定管理を受けて移住してきました。くにの松原をはじめ大崎町の自然の豊かさに触れ、「この自然の素晴らしさに地元の人にこそ気づいてほしいと思いました。特に子どもたちは自分の暮らす土地に誇りを持ってのびのび過ごせば、きっと将来戻ってきたくなるでしょう。くにの松原キャンプ場を拠点に、大崎にそんな流れを作りたいと思っています」と話します。
ここでしかできない楽しみ方を
「ここでしかできない自然の楽しみ方をしてほしい」と堀之内さん。くにの松原はウミガメの産卵や渡り鳥コアジサシの繁殖が行われる場所であり、生物にとって貴重な環境です。2月から5月の連休前までは、松林にしか生息しない「マツゼミ」の声を楽しめるそう。潮騒の聴こえるキャンプ場は珍しいとのことで、耳でも自然を味わいたいですね。
また、キャンプと言えば夏のイメージですが、「実は冬に焚き火を楽しむのが一番です」と堀之内さん。「松の香りに包まれて炎のゆらぎを眺め、パチパチという音に耳を傾けてみてください。とてもリラックスできますよ。太平洋の水平線から登る日の出や、地元の安くて美味しい食材を使ったキャンプ飯もおすすめです」
目、耳、舌…。全身で自然を感じられそうです。
自然の中で育まれるたくましさ
くにの松原キャンプ場の20年間を見守ってきた堀之内さんいわく、この場所が大きく変化したのは平成28(2016)年。福岡県から大分、宮崎、鹿児島県を結ぶ高速道路(東九州自動車道)が開通したことにより、北部九州からも訪れる人が増えたといいます。
「多くの人に大崎の自然を楽しんでいただけるのはうれしいですね。くにの松原キャンプ場では、“一人で生きていくたくましさを持った人”を育てたいと思っています」と堀之内さん。「“一人で”というのは、人を喜ばせたり仲間を集めたりすることも含みます。普段と違う環境で仲間と過ごす経験を積んだ人を、大崎から世に出していきたいです」と話してくれました。
紹介者の窪田さんも、くにの松原の自然に感銘を受けた一人。「初めて立ち寄った時、松林が続く景観に感動しました。車で通り過ぎてしまいがちですが、リラックスできる穴場スポットなのでぜひ立ち寄って歩いてみてください」とすすめてくれました。
潮風に打たれても倒れず暮らしや農業を守ってくれるクロマツのように、くにの松原で自然と触れ合った人々も、たくましく、自然を守る心を育んでいくのかもしれません。
施設情報はこちら
施設名
くにの松原キャンプ場
住所
鹿児島県曽於郡大崎町益丸226-1
電話番号
099-476-3611(電話によるお問い合わせは午前10時から午後5時まで)
営業時間
チェックインは午後3時から。チェックアウトは翌日午前10時まで。
デイキャンプは午前10時から午後3時まで。
休業日
無休
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
地域ナビゲーター
九州支部 地域ナビゲーター
門間 ゆきの
愛知県名古屋市出身。旅やフィールドワークが好きで記者を志し、「山・海・離島・火山・宇宙・歴史・文化…ネタに尽きなくて面白そう!」と2017年、鹿児島の南日本新聞社に入社しました。昭和の街並みや人情漂う鹿児島市名山町が好きで、地元の小学生たちと「名山新聞」を発行しています。2021年4月からフリーライターに。「地域と人と営み」を伝える取材を続けたいです。趣味はツルムラサキ科の「おかわかめ」の研究です!