山梨県富士河口湖町
“今”と“昔”が、繋がる「倉敷美観地区」
2020.11.27
この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回登場いただくのは、国産ジーンズ発祥の地・岡山県倉敷に店を構えるデニムスーツの店「inBlue」の小川さんです。
偉人も後世に残したい倉敷美観地区
岡山県の代表的な観光地である倉敷美観地区はJR倉敷駅から徒歩10分。柳の木々の風景と、白壁の蔵やなまこ壁など江戸から明治期にかけて作られた古い情緒あふれる町並みが人気です。江戸時代には「天領」と呼ばれる幕府の直轄地で栄え、明治時代には日本初の私立西洋近代美術館である「大原美術館」の創設者大原一族が、倉敷の町並みを後世に残すことを提唱し、大原家ゆかりの多くの文化施設をつくりました。1979年には国の重要伝統的建造物群保存地区となりました。近年では、レトロでかわいい町屋の雰囲気を生かしたおしゃれなカフェや雑貨屋などが軒を連ねています。
今回推薦してくれた国産ジーンズ発祥の地・倉敷に店を構えるデニムスーツの店「inBlue」の小川さん。「未来に残したい場所といえば、私たちのお店もある倉敷美観地区。特に明るい時間帯がベストです」とご紹介してくれました。
もちろん私も、岡山を案内するなら絶対にここは外しません。江戸から守られ引き継がれてきた古き良き歴史と景観を守りつつ、現代の活気あふれる話題のスポットもある美観地区のまち歩きを楽しみましょう。
いにしえに想いを馳せる「川舟流し」
倉敷美観地区の中心を流れる倉敷川は、かつて物資を積んだ舟が行き交っていました。現在は「川舟流し」として観光客に大変人気です。舟は2艘あり、各定員は6名で午前9時半から午後5時まで30分おきに出発します。船頭さんが長い櫂(かい)を操って、ゆっくりと川面を進みながら丁寧に漕いでいきます。かつてもこんな情景があったのだろうと想いを馳せながら、ゆったり過ごすひととき。舟頭さんが、それぞれのスポットをとてもわかりやすく説明してくれるので、歴史や知識も深まり、古い町並みが残る倉敷美観地区ならではの町巡りが楽しめます。
所要時間は約20分。柳が水面に移る景色や鯉を泳ぐ姿、時々チャポンと聞こえる水音などを感じながら、川下りならではのなんともいえない贅沢な時間が過ごせます。いつも歩いている目線で見るのとは違い、少し離れた場所から眺めると、通りを歩く観光客が町並みに溶け込んでいるよう。古い歴史ある建物と現代の人が交錯する姿を客観的に見ることができ、とても不思議な気持ちになります。
ゆとりある豊かな暮らしを提案する「林源十郎商店」
人気スポットの一つである「林源十郎商店」は、倉敷美観地区内にある旧林薬品を改装し、平成24年3月にリニューアルオープンしました。倉敷美観地区を紹介してくれた小川さんが勤めるデニムスーツの店「inBlue」をはじめ、生活雑器、リビング用品、飲食を扱うセレクトされた8店舗が入居しています。どの店舗も、ゆとりある豊かな暮らしにぴったりな衣食住を提案する、こだわりの強いお店ばかりです。私も忙しい毎日の中でふと生活の中に彩りがほしくなったら、必ず訪れる場所。また屋上展望テラスでは、鶴形山(つるがたやま)から広がる倉敷美観地区を一望できます。特におすすめは、西の空が赤く染まる夕暮れ時の光景。ノスタルジックなまちをより一層ひきたてて懐かしい気持ちにさせてくれます。
約850種類のマスキングーテープをそろえる「如竹堂」
今回は、もう一人倉敷美観地区をこよなく愛する「倉敷観光コンベンションビューロー」の平松さんにおすすめのスポットをお伺いしました。観光客の誘致支援を行う平松さんは、生まれも育ちも倉敷。倉敷のことを話し出すと止まらないぐらい倉敷愛を持たれている方です。
まずご紹介頂いたのは、マスキングテープの専門店「如竹堂(にょちくどう)」。元々は老舗の表具店でしたが、創業1923年の倉敷に本社がある工業用テープの専門メーカーであり、全国的なマスキングテープ人気の火付け役となった「カモ井加工紙」でつくられるブランド「mt」を仕入れるようになりました。
現在「如竹堂」では、約850種類のマスキングテープを取りそろえています。花柄、水玉、ストライプなどさまざまな色柄のものが棚にずらり。平松さんは何十種類もの「mt」をコレクションしているのだとか。多大なmt愛が伺えます。
老舗の造り酒屋「森田酒造」が作るパウンドケーキ
平松さんのおすすめのお土産屋は、明治42年創業で倉敷美観地区内で唯一の造り酒屋「森田酒造」が経営する平翠軒(へいすいけん)。倉敷川沿いのメイン通りから一本北へ外れた昔ながらの静かな住宅街の中にあり、大正時代に建てられた倉庫を改造した味のある建物が特徴です。特に1番のおすすめは「吟醸酒ケーキ」。パウンドケーキにたっぷりと吟醸酒をしみ込ませてある贅沢な大人のケーキで、しっとりと吸い付くような食感が人気です。歴史ある酒蔵で作られた吟醸酒は現代の洋菓子としても引き継がれています。
新旧が入り混じる魅力あふれる「倉敷美観地区」
平翠軒がある「本町通り」は私の最もお気に入りの通りで、静かで落ち着いた時間が流れています。時たま走り抜く人力車を見ると、江戸時時代にタイムスリップしたかのよう。古くは倉敷と隣町の早島を結ぶ街道で、倉敷川沿いより先に町となり、職人たちが軒を連ねる場所でした。現在は、アーティストが町屋を改装したギャラリーなどの新店をオープンさせ、古い景観はそのままで、新しい魅力をどんどん加えています。
新旧が入り混じりながら、“今”と“昔”が、繋がる「倉敷美観地区」は今後もずっと引き継がれていくはずです。
<今回の旅スポット>
くらしき川舟流し
・岡山県倉敷市中央1-4-8
・午前9:30始発〜最終便17:00 ※30分おきに出発
・休業日 3月〜11月/第2 月曜日(祝日除く) 12月〜2月/土・日・祝のみ運航 ※年末年始運休
・086-422-0542(倉敷館観光案内所)
林源十郎商店
・岡山県倉敷市阿知2丁目23-10
・10:00〜18:00 各店舗により異なります
・月曜日定休(祝日の場合は営業。翌日休業)
・電話 各店舗により異なります
inBlue
・岡山県倉敷市阿知2丁目23-10 林源十郎商店内
・10:00〜18:00
・月曜日定休(祝日の場合は営業。翌日休業)
・086-441-5070
如竹堂
・岡山県倉敷市本町14-5
・10:00〜17:30
・定休日なし
・086-422-2666
平翠軒
・岡山県倉敷市本町8−8
・10:00〜18:00(月曜のみ13:00~17:00)
・定休日なし
・086-427-1147
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
地域ナビゲーター
中国支部 フォトグラファー&時々ライター
松本 紀子
岡山県瀬戸内市在住。主にフォトグラファーとして活動していています。岡山県のヒト、モノ、コトの魅力を十分にお伝えできるような写真に気持ちが伝わる文章を添えていきたいです。