山梨県富士河口湖町
瀬戸内海と日本海の魚がクロスオーバーする「下関の豊かな海」
2020.11.22
この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回登場いただくのは、山口県下関市の「下関ふく連盟」に加入し、ふぐの加工販売を行う「吉田水産」代表の吉田福太郎さんです。
吉田さんが「100年先に残したいもの」とは?
流通の拠点として栄えてきた山口県下関市。その名産といえば「ふぐ」ですよね。豊かな海に囲まれている下関市は、ふぐ、ウニ、クジラ、アンコウ、イカなどの海産物に恵まれ、中でもふぐフグの摂取量は日本一!下関市では、幸福にあやかってふぐフグのことを「ふく」と呼ぶことも有名です。
そんな下関には世界一のふぐ専門の卸売市場「南風泊市場(はえどまりしじょう)」があり、「下関ふく連盟」に加入する業者等がふぐの加工販売を行っています。その老舗業者の一つである「吉田水産」代表の吉田福太郎さんより、「100年先に残したいもの」を伺ったところ、「おいしいふくを育む、豊かな海」が挙がりました。
今回は、そんな「ふくと海の関係」を、すこし別の視点から探究していきたいと思います。
本州の最西端の地「山口県下関市」
山口県下関市は、本州の最西端にある町。人口は約25万人ほどで、山口県内では「第1の都市」としても有名です。
九州と下関の間にあるのが「関門海峡」。日本国内の海峡の中では広いものではなく、もっとも狭い場所は約650m程。しかし船の交通量は非常に多く、1日に大小約600隻もの船が行き交う交通の要衝です。
また、古くから多くの歴史を有する町とも知られ「源平壇ノ浦の合戦」や、宮本武蔵と佐々木小次郎の舞台になった「巌流島」の決闘も、この関門海峡が舞台でした。
そんな下関市で私たちが伺ったのは、世界一のふぐ展示種類数を誇る水族館「海響館」でした。
おいしいフクを育む豊かな海
2001年(平成13年)に開館した海響館は、下関に位置する水族館として関門海峡と瀬戸内海、日本海をテーマにした水槽や名産であるフグが数多く展示されるなど、地域の特色を活かした展示もあり、山口県内でも有名な観光スポットです。
「たくさんの生き物を展示し、見て学ぶことができる水族館だからこそ伝えられることがあると思うんです。」そう語ってくれたのは、現在海響館で働く柿野敦志(かきの あつし)さん。大学を卒業後に多種多様な魚、豊かな海を感じることができる「海響館」に就職し、8年間勤務しています。
水族館というと「魚を食べる」というイメージではなく、「きれい」や「かわいい」、「かっこいい」などの視点で楽しむ方が多いのですが、「水族館は水中の世界を覗ける素敵な場所です。普段私たちが食べている馴染みある魚たちが水の中を泳ぐ姿を見て、その動きやスピード、生態などを知ってもらいながら、海の豊かさや魚を食べるありがたみなども感じてもらえればと思います。」
瀬戸内海と日本海に挟まれているからこその魅力
「海響館」は目の前にある関門海峡の景色を活かし、関門海峡、瀬戸内海、日本海をテーマにした水槽では、それらの海にすむ魚たちを展示しています。関門海峡水槽は、マダイやマアジ、スズキ、クエ、ヒラメなど、瀬戸内海水槽ではマイワシとカタクチイワシの群れ、日本海水槽ではブリやカンパチ、イシダイの他、ウミガメなどが見られます。
多種多様な魚を見ながら、下関の豊かな海を感じることができるでしょう。
たくさんのフグに出会える「海響館」
フグの名産地 下関にある水族館として、「海響館」はフグの仲間の展示が一つの特色となっており、何とその展示種類数は世界一を誇ります。それだけのフグの数ですから「フグの水族館」「フグの観光施設の一つ」としても有名です。
一言に「フグ」といっても全てが毒を持っていたり、膨らむということはなく、その仲間にはトラフグやマフグ、ハリセンボン、ハコフグなどのほか、カワハギやマンボウなども含まれます。また、海だけではなく川などの淡水にすむフグの仲間もいます。
たくさんいるフグを前に、柿野さんは「フグを食すということで言えば、フグと下関の関係は取扱量だけでなく、フグの扱いの上手さもある」と語ります。仲買人の目利きの技術や、フグの処理・加工技術の高さがふぐ食文化を支えているのだそうです。
柿野さんを始め、「海響館」のスタッフの方々はフグの勉強も怠ることがなく「下関ふく連盟」の研究会にも積極的に参加したり、休日には地域の漁師さんたちの漁に参加させてもらっているというお話を聞いた時は、魚への愛を感じることができました。
そして、海響館ではフグの仲間の他にもたくさんの生き物が展示されており、「クラゲ」もその一つ。クラゲはとても人気があるようで、水槽前では多くの方が足を止めていました。
「普段海で上から見ることができるクラゲですが、水族館ではじっくりと横から見ることでまた違った姿を見学できる」と解説してくれました。
海響館は、国内最大級のペンギン展示施設「ペンギン村」も有名です。現在5種類約140羽のペンギンが展示されているそうですが、中でも印象に残ったのが「フンボルトペンギン」です。屋外の温帯ゾーンにいるペンギンで、訪れた時は繁殖期ということもあり、土の上や岩山にある巣穴にペアで入っている姿や2羽で鳴き交わしている姿を見ることができました。
野生の生息地の再現にこだわったエリアなので、ペンギンたちの本来持つ行動や修正を見ることができるのも魅力です。ふれあい広場では、1日2回フンボルトペンギンの給餌解説も実施。室内のペンギン展示では、ペンギンの集団遊泳「ペンギン大編隊」という海響館オリジナルイベントも実施されているのでお見逃しなく!
各季節ごとに色々な魚を楽しむことができる
「海響館」ではシーズンに合わせた生き物も展示されているので、何度足を運んでも違った魅力を感じることができます。取材に伺ったのは晩秋。柿野さんのお話では、今の時期から見てほしいのは円柱水槽にいる「アオリイカ」なんだとか。10月下旬に日本海側で行われている漁に同行し、採集してきたものが展示されています。イカの多くは寿命が1年で限られた時期のみの展示となるのですが、海響館では季節に応じて違った種類のイカを見ることができるそうです。
水族館は水の環境下にすむ生き物を間近で感じ、癒され楽しみながら学ぶことができる施設です。様々な特色を活かし、他にはない魅力が詰まった「海響館」。是非、いろいろな季節に訪れ、違った感動を味わってみてはいかがでしょうか。
「ふくが育つということは、海がとってもきれいで、環境が良いということ。このきれいな環境の海を100年先にも残したい」と語る吉田水産の吉田さん。深く関わり合うふくと海の豊かな関係を、これからもみんなで守っていきたいですね。
地域ナビゲーター
中国支部 ふるさとLOVERSナビゲーター
JOIN083(ジョイン・ゼロハチサン)
本州最西端のスタートアップ拠点・情報発信基地「JOIN083」のメンバーです。地域の魅力と課題を常に発見し、それらを世界に発信し続けるグローカルパーソンです。「地域のために 地域を越えて」を合言葉に、地域と世界の懸け橋となるよう、下関を拠点に日夜活動しています。これからも、「地方推し」は変わりませんよ!