神奈川県鎌倉市

鎌倉の街で愛される気持ちのいい個人店

2020.12.03

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回登場いただくのは、神奈川県鎌倉市で26年にわたりお店を続け、また住まい続けている「café vivement dimanche(カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ)」の店主・堀内さんです。

100年先の鎌倉に残したい、「気持ちのいい個人店」

青い風が海と空に抜けていく、清々しい鎌倉の日曜日。悠久の時間が流れるこの街の穏やかな空気に導かれて、週末には観光客が全国から集まってきます。

そんなたくさんの人たちが行き交う小町通りの脇道にあるのが、緑色の看板が目印の「café vivement dimanche(カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ)」。フランスの映画監督 フランソワ・トリュフォーの作品より、“日曜日が待ち遠しい”という意味を持つこの名店は、1994年から現在まで鎌倉の街で愛され続けています。26年にわたり鎌倉の街でお店を続け、また住まい続けている堀内さんの「100年先の鎌倉に残したいもの」は「気持ちのいい個人店」。

「鎌倉には、店主の趣向や顔が見える個性的なお店が多いです。ここにしかないお店めぐりをするのも楽しいですし、自分自身も休みの日に地元である鎌倉のお店でひと息ついていることも多いです。100年先の鎌倉も、こういった気持ちのいい個人店が多くある街であってほしいですね」。そんな個性的で素敵なお店のひとつが、今回ご紹介する「DAILY by LONG TRACK FOODS(デイリー・バイ・ロング・トラック・フーズ)」です。

市場の一角に佇む、こだわりの詰まったデリカテッセン

鎌倉駅から若宮大路を海に向かって歩くと見えてくるのが、古い市場・鎌倉市農協連即売所、通称レンバイ。昭和の香りが残る場内に、旬の鎌倉野菜が並ぶ眺めには、いつもワクワクさせられます。地元のシェフなど飲食店のプロに御用達の一方で、観光客をはじめとする一般客も気軽に立ち寄り買い物を楽しむことができます。そんな楽しいレンバイの一角にあるのが、鎌倉在住の馬詰佳香さんが、友人の岡尾美代子さんとともに主宰する「DAILY by LONG TRACK FOODS」。小さなデリカテッセンのお店です。

店頭に並ぶのは、丁寧に手作りされたデリとアメリカンスタイルのベイクスイーツ、セレクトされたおいしいカフェオレベースやドレッシング、イギリスのメーカー「YARMO(ヤーモ)」別注のエプロンやオリジナルのトートバッグなど、おいしくてかわいくて佇まいの良い、素敵なアイテムたち。所狭しと並ぶ様子は、さながらどこか外国にいる気分にさせてくれます。もともとは、2009年に1号店である「LONG TRACK FOODS(ロング・トラック・フーズ)」を、由比ガ浜海岸に近い若宮大路沿いに開いたのが始まり。その後、現在のレンバイ内の物件と出合い、2015年のオープンをきっかけに、店舗は「DAILY by LONG TRACK FOODS」のみになりました。

10時のオープンと同時に、地元の常連さんや観光客であふれます。17時までの営業ですが、夕方にはほとんど商品が無くなってしまうのだとか。今回は、まだオープン前の早い時間にお訪ねし、馬詰さんにお話を伺いました。

作り手の顔が見える、ホームメイドにこだわった商品たち

鎌倉散策ついでにぜひ立ち寄っていただきたい「DAILY by LONG TRACK FOODS」のこだわりの商品たちを、一部ご紹介したいと思います。まずは、看板メニューのピクルス(税別600円)。キュウリや人参、パプリカをベースに季節の鎌倉野菜が加えられ、見た目もカラフルでお土産にもぴったり。ピクルス特有のすっぱさはなくあっさりとしており、サラダ感覚でパクパク食べられます。ピクルスのほかにも、自家製にこだわったデリがたくさん。ガラスケースにずらりと商品が並ぶ、午前中の訪問がおすすめです。

お次は、アメリカンテイストなお菓子たち。手を広げたぐらいもあるクッキー(税別300円)やチーズケーキ(税別450円)、パウンドケーキやスコーンなど、どれもおいしそうで目移りしてしまいます。定番のほかに季節の果物を使った限定商品が並ぶのも、何度でも訪れたくなる理由のひとつです。

特に私たちが大好きなのが、アイスクリームサンドイッチ(税別380円)。鎌倉散策のおともに、バターたっぷりの自家製サブレに分厚く挟まれた濃厚なバニラアイスがたまりません。「もともとサブレはうちの商品で。これにアイス挟んだら絶対おいしいよね!なんて会話から、商品になりました」と教えてくれた馬詰さん。そんな、自分たちが好き!おいしい!と心から思える商品だけを作って並べているのも、にじみ出る魅力のひとつなのかもしれません。

食品だけでなく、キッチン雑貨やオリジナル雑貨もたくさん。馬詰さん、岡尾さんが目利きした、シンプルかつ上質な、ずっと使い続けたいアイテムたちが並びます。「私たち、好きなものや好きなテイストが似ているんです。お店に並ぶのは、ベーシックで、時代や流行に左右されないアイテムが多いと思います」。

そのほかにも、自家製のジャムやパンケーキミックス、オリジナル珈琲豆まで、所狭しと商品がずらり。こちらに置かれているカフェオレベースは、紹介者の堀内さんが営まれる珈琲店「café vivement dimanche」のもの。珈琲豆も、堀内さんにオリジナルで焙煎、ブレンドしてもらっているそうです。

商品ひとつひとつに、大切な人たちとのストーリーが宿っています。好きなものや人が繋がりあって、応援しあって、活かしあっている、「気持ちのいい個人店」が多い鎌倉だからこそのコミュニティを感じました。

無理なく、楽しく、長く続くお店とともに

レンバイの場内にはいくつか小さな個人店が並んでいますが、出店の条件には、“市場の人と仲良くできる人”という項目があったそうです。「なんだか鎌倉っぽいですよね。そんなところも気に入って」。お話を伺っている間にも、農家の方や他の店舗の方、近所のお客さんなど、行き交うさまざまな人と挨拶をかわされていた馬詰さん。そんな様子からも、「顔の見える関係性」を大切にされている様子が伝わってきます。「レンバイがある限りは、私たちもお店を続けたいと思っています」。「LONG TRACK FOODS」という名前には、食とともに長い行路をゆるやかに走り続けられるように、という願いを込めているそう。「もしかしたら10年後には、梅干しとか佃煮とかを置いているかもしれません」と笑って話される馬詰さん。自分たちが欲しいものや食べたいもの、好きなものをお店に並べて、友人たちと無理せず楽しみながら長く活動を続けていきたい、という思いをお話しくださいました。

「DAILY by LONG TRACK FOODS」は、自然体で、店主とお店とが一緒に時を重ねている、そんな「気持ちのいい個人店」代表のようなお店でした。海や山といった自然や寺院、史跡だけじゃない新たな鎌倉の魅力に、またひとつ気付けた取材となりました。鎌倉を楽しむひとつのキーワードに、ぜひ「気持ちのいい個人店」を加えてみてはいかがでしょうか。

<今回の旅スポット>

店名 DAILY by LONG TRACK FOODS
住所 神奈川県鎌倉市小町1-13-10 鎌倉市農協連即売所内
営業時間 10:00~17:00
定休日 月曜定休(祝日の場合は営業)
電話番号 0467-24-7020(LONG TRACK FOODS工房)

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

庄司賢吾・真帆

関東支部 地域を届ける編集カンパニー
庄司賢吾・真帆

夫婦で土曜日だけの珈琲店「アンドサタデー」を営む傍ら、逗子・葉山を拠点に編集社としてライティングや撮影、企画などの活動をしています。記事を通して、事業者さんの人柄や温かみをお伝えしていきたいと思っています。