石川県金沢市

美しい伝統が息づく金沢で、本物に出合う旅

2021.03.18

加賀百万石の城下町、金沢。格子が連なるあでやかな茶屋街や、今にも武士が現れそうな武家屋敷跡など、あちこちに歴史の美しい面影が残るフォトジェニックな町並みが魅力です。

今回は金沢の伝統に出合い、本物に触れる旅がテーマ。加賀友禅の繊細な手仕事を体験したり、料亭のもてなし文化を体感したり。ゆっくりと流れる時間の中で五感が研ぎ澄まされていく、そんな1泊2日の旅が始まります。

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

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1日目

  13:00 金沢の伝統工芸、加賀友禅の彩色を体験

金沢の町並みによく似合う、自然美を巧みに描いた加賀友禅。「加賀友禅会館」1階展示室にあるSNS映えスポット、加賀友禅ののれん「花鳳凰(はなほうおう)」の前で、事務局長の中川聖士(なかがわせいし)さんにその魅力を聞きました。

「加賀友禅は刺繡や箔をあまり用いず、染めの技法だけで表現します。色に濃淡をつける、ぼかしの技術はそのひとつ。葉が朽ちかけた様子を描く虫喰いも、ありのままの自然に美を見出す加賀友禅独特の技法です」。

館内1階の有料コーナーでは加賀友禅作家の森田耕三(もりたこうぞう)さんが実演しており、その緻密な筆使いを間近で見ることができます。森田さんは、伝統的な加賀友禅の絵柄はもちろんのこと、ギターや北陸新幹線などを絵柄に取り込んだり、斬新な幾何学模様を描くなど、現代に合わせた柄も制作しています。気さくな人柄の森田さん、加賀友禅のことで質問があれば答えてくれますよ。

有料コーナー1階の展示室に並ぶ加賀友禅をじっくり見学。草花など自然の風物をモチーフとした写実的なデザインが加賀友禅の特徴で、みずみずしい自然美を封じ込めた着物はまさに「まとう絵画」。1階奥の特別展示室では、貴重な加賀友禅の着物を展示しています。

さあ、いよいよ手描き体験にチャレンジ。ハンカチに、あらかじめ糊(のり)が置かれた模様に彩色をします。花びらの細かな部分に筆を入れる時は、息をつめて集中。ぼかしや虫喰いの技法にも挑戦します。水洗いして糊を落とし、乾燥させたらでき上がり。

慣れない筆運びもさることながら、ぼかしの加減も難しく、一輪の花を描くだけでいっぱいいっぱい。加賀友禅という手仕事の美しさ、奥深さに、ほんの少し触れられたような気がしました。

地下のショップ(無料コーナー)には手描き加賀友禅のカードケースや長財布など、多彩なアイテムがそろいます。大切な人へのお土産に、自分へのごほうびに。あれこれ目移りする時間も楽しみですよね。小物類はセミオーダーメイドでの注文も受け付けているので、自分だけの加賀友禅を持ってみては。

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施設名

加賀友禅会館

住所

石川県金沢市小将町8-8

電話番号

076-224-5511

営業時間

9:00~17:00

休業日

水曜(祝日の場合は開館)

入館料

大人:310円、小人:210円(体験はハンカチ型染め1,650円、手描き体験2,750円)

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

  15:00 ひがし茶屋街で、格式高いお茶屋を見学

紅殻(べんがら)格子と石畳が続くひがし茶屋街は、金沢観光でははずせないスポット。そもそも茶屋街って、どんなところなのでしょうか。

「商家の旦那衆など、ごく一部の限られた上流階級の人々の遊び場でした」と教えてくれたのは、かつてお茶屋だった建物を一般公開している「志摩」の島謙司さん。ここでいう遊びとは、笛や太鼓、舞などの芸のこと。芸妓にはもちろん、客にも高い教養が求められたそうです。現在も「一見さんお断り」のしきたりのもと、お茶屋文化は脈々と受け継がれています。

「加賀藩が城下に点在していたお茶屋を集め、茶屋街をつくったのが1820(文政3)年。この建物も同じ年に建てられ、国の重要文化財に指定されています」。重要文化財でお茶屋の建物は、全国広しといえど志摩だけなのだとか。

2階が客間となっており、お客が床の間を背にして座ると正面が舞台である控えの間。ここで芸妓さんが舞や三弦などを披露します。艶やかな朱色の壁、ふすまには七宝焼の引手、漆塗りの柱。随所に凝った意匠が施されています。1階には優美な加賀蒔絵の器などの道具類も展示され、洗練された伝統美にあふれていました。

見学の後は別棟の茶室で落ち着いた庭を眺めながら、上生菓子と抹茶を一服。和菓子は金沢の老舗名店のもので、四季を表現した侘び寂びの世界。いつまでも長居したくなるような、静かで美しく、くつろいだ空間でした。

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施設名

国指定重要文化財 志摩

住所

石川県金沢市東山1-13-21

電話番号

076-252-5675

営業時間

9:00~17:00

休業日

無休

入館料

一般:500円、小中学生:300円

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

  17:30 季節を映す加賀料理と、心づくしのおもてなし

夕食は、料亭「金城樓(きんじょうろう)」へ。金城樓は2020年に創業130年を迎えた老舗料亭。北陸で唯一、宿泊部門のミシュラン5つ星を獲得しており、おのずと料理への期待も高まります。

前田対馬守(つしまのかみ)家の屋敷跡である約1000坪の敷地に端正な和風建築がたたずみ、手入れの行き届いた庭園が目を楽しませてくれます。

最高の食材を余すところなく味わえる会席料理は、季節感を大切にした逸品ぞろい。器や盛り付けにも工夫を凝らし、まさに口福眼福のひとときを堪能させてくれます。

金沢は料亭が多いまちですが、そこに共通しているのはおもてなしの心。極上の料理はもちろんのこと、調度品や庭園、床の間の掛け軸にいたるまで細やかに心を配ります。ここ金城樓での1部屋1組のおもてなしは、金沢の料亭文化の真骨頂。四季のうつろいを感じながら、旬の美味を五感で味わうことができます。

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施設名

金城樓

住所

石川県金沢市橋場町2-23

電話番号

076-221-8188

営業時間

11:00~21:00

休業日

無休

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

  20:30 夜はホテルで思い思いの過ごし方を

今宵の宿はスタイリッシュな和モダンホテル「雨庵 金沢(うあん かなざわ)」。街の中心部にありながら、格子をデザインした外観がまるで隠れ家のような趣を醸しています。客室はゆったりとしたツインルームが中心。

1階のラウンジ「ハレの間」は、アート鑑賞や読書など思い思いの時間を過ごすことができる居心地のいい空間です。ドリンクサービスで香ばしい加賀棒茶を楽しんだり、地酒をそろえる日本酒バーで旅の話に花を咲かせたり。ライブラリーには小説やアートブックなど多彩な書籍が並び、徳田秋声や竹久夢二といった金沢ゆかりの作品を読みながら夜更かしするのもよさそうです。23時まで無料の蕎麦サービスがあるので、小腹が空いたらぜひどうぞ。

2日目

  8:30 雨の金沢も素敵。食やアートをのんびり楽しんで

朝食は、のどぐろの焼き物がメインの和食と、能登豚のベーコンやソーセージが付く洋食からお好みで。地元の食材を使った料理で1日をスタートさせましょう。

ホテルオペレーションマネージャーの中岡真季子(なかおかまきこ)さんは、滞在の楽しみについてこう話します。「金沢は、弁当忘れても傘忘れるなといわれるほど雨の多いまちです。せっかくの旅行が雨だとがっかりするかもしれませんが、このまちは雨の風情も魅力のひとつ。お天気が悪くても、館内でのんびりと金沢らしさを楽しんでいただける工夫を凝らしました」。

雨の日は特ににぎわうというラウンジには和紙や書のアートが展示され、陶器やガラスといった工芸作品の展示販売も。さて、宿を発つ前にゆっくりとアート鑑賞を楽しむとしましょうか。

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施設名

雨庵 金沢

住所

石川県金沢市尾山町6-30

電話番号

076-260-0111

営業時間

チェックイン15:00、チェックアウト11:00

休業日

無休

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

  10:30 四季の風情を映す加賀百万石の大名庭園を散策

さて、2日目。金沢に来たなら絶対に外せない「兼六園」にGO!雨庵から歩いて金沢城公園を抜けて15分ほどです。石川県金沢城・兼六園管理事務所所長の藤村秀人(ふじむらひでと)さんに、兼六園の魅力を尋ねると「春の桜、夏の光と深緑のコントラスト、燃えるような秋の紅葉、墨絵のような冬と、いつ訪れても美しい兼六園です。来園者もそれぞれお気に入りの景色、季節を見つけて楽しんでください」。

兼六園は、水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並び日本三名園に数えられています。加賀前田家歴代が約180年の歳月をかけて完成させたという名園です。

桂坂口から入園して真っ直ぐ進むと霞ヶ池があり、その淵に立つのが園内のシンボル的な存在の徽軫灯籠(ことじとうろう)。明治の初めに何らかの理由で片脚が折れたそうで、その左右の脚の長さの違いによって生まれた「破調の美」が見どころとなっています。この灯籠の手前にやわらかな曲線を描く虹橋(別名:琴橋)があり、灯籠の脚が琴の弦をかける琴柱のようであることから、徽軫灯籠の名が付いたそうです。撮影スポットとして園内の人気ナンバーワンです。

徽軫灯籠を右に見て琴橋を渡るとすぐに立派なクロマツ、唐崎松があります。13代前田斉泰がクロマツの種子を取り寄せて育てたもので、樹齢はおよそ200年。凜々しさと堂々とした風格を感じさせます。兼六園の木々は、冬になると雪の重みから枝を守るために縄を張り巡らして雪吊りを施しますが、その作業はこの唐崎松からスタートします。幾何学模様を描くような雪吊り、その姿が水辺に映る姿も美しく、冬景色もおすすめです。

兼六園一の紅葉スポットといえば、山崎山とその周辺です。落葉樹に覆われており、赤、黄、オレンジの燃えるような紅葉で山全体が見事に埋め尽くされます。落ち葉の絨毯を踏みしめながら歩くのも一興。兼六園の紅葉はほかにも徽軫灯籠や瓢池、翠滝などのモミジもみもの。見頃のピークは毎年11月中旬あたりです。

兼六園はシーズンごとにライトアップイベントが開催されているので、闇夜に浮かびあがる幽玄な雰囲気の兼六園も楽しめますよ。

四季ごとに美しい兼六園ですが、モノトーンな冬景色もおすすめ。この雪化粧した写真は、日本最古といわれる噴水です。金沢城に水を引く試作品として藩政末期に造られたそうで、噴き上がる水は、徽軫灯籠が立つ霞ヶ池との高低差を利用した水圧で上がっているものです。高さは約3.5mですが、霞ヶ池の水位によって多少は変わるとのこと。当時の最先端技術を使うなど、優れた知恵が垣間見えるようです。

ほかにも雁行橋や花見橋など見どころがいっぱいで、リピートしたくなる兼六園ですね。

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施設名

兼六園

住所

石川県金沢市兼六町1

電話番号

076-234-3800(石川県金沢城・兼六園管理事務所)

営業時間

7:00~18:00(10月16日~2月末日は8:00~17:00)

休業日

無休

入園料

大人:320円、6~17歳:100円

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

金沢の魅力は「古くて新しい」こと。歴史的な町並みや伝統工芸など、古き良きものを大切に守りながら、新しい感性を上書きして常に進化を続けています。それらに共通しているのは本物であること。金沢のまちにはこうした美意識が行き届いていて、いま新しいものも100年後には伝統になっているという予感がします。

今回ご紹介したスポットは、金沢のほんの一部。どの季節に訪れても、きっと印象的な旅ができるはずです。

地域ナビゲーター

ライター事務所AVANCER

中部支部 ふるさとLOVERSナビゲーター
ライター事務所AVANCER

およそ30年、観光雑誌や観光系Webの企画・取材・執筆・撮影・制作などに関わり、北陸を知り尽くしたライター集団の事務所。取材範囲は北陸のみならず、広範囲。旅好きの集まりなのでプライベートでも全国、海外へ。楽しく取材してその魅力を存分に伝えます。