静岡県三島市
新古のコラボで感性を磨く、憧れの由布旅
2022.06.28
大分県の中心に位置する由布(ゆふ)市。豊後富士(ぶんごふじ)と称される由布岳が見下ろすこのエリアには5つの温泉地があり、その一つの由布院温泉は源泉数・湧出量ともに全国2位を誇ります。由布院盆地に広がるのどかな田園風景の中に数々の温泉宿が軒を連ね、また町中にはギャラリーやおみやげ店など好奇心をかきたてるおしゃれスポットが満載。湯の里のおもてなしの心を体感する旅へと出かけましょう。
おすすめモデルコース
1日目
- 14:00 太宰治ゆかりのハイカラなブックカフェ
- 15:30 森の離れを独り占めする極上のひととき
2日目
- 10:30 現代アートと建築をたしなむミュージアムへ
- 12:00 豊後牛をいただく絶品ランチ「由布まぶし」
- 13:30 由布院の風をジャムの瓶に詰め込んで
1日目
14:00 太宰治ゆかりのハイカラなブックカフェ
文豪・太宰治が昭和初期に東京都杉並区荻窪で下宿をしていた「碧雲荘(へきうんそう)」。2005年まで現役でしたが、縁あって由布院へ移築することになり、ブックカフェ「ゆふいん文学の森」へと生まれ変わりました。全国から多くの太宰ファンが訪れています。
1階は碧雲荘の大家の元住居。和洋折衷でモダンな館内の至る場所にある棚からお好みの本を手に取り、好きな席でゆっくりと読書を楽しみましょう。
太宰治は27歳だった1936年に、碧雲荘の8畳の部屋に7カ月ほど暮らしていました。階段の先にはかつての洗面所があり、その隣のお手洗いは作品「富獄百景」に登場しています。お手洗いの小窓から富士山が見えたというエピソードがストーリーに出てきますが、由布院では由布岳が見える角度に建物が設置されているのです。なんとも感慨深く、ファンにはたまらない演出。
奥の和室が太宰治の暮らしていた部屋で、代表作「人間失格」の原型となる「HUMAN LOST」などが執筆されたそう。今でも太宰治がこの部屋で作品を書いているような気配を感じます。
「最近ではリモートワークや受験勉強、さらに文学アニメファンの方が撮影に訪れるなど自由に楽しんでくれています。常連のお客さまはここをあまり教えたくないんだそうです(笑)」と、オーナーの髙山千明希さんが教えてくれました。
どこを切り取っても絵になるブックカフェは、誰かに教えたい、だけど内緒にしておきたいような…。思い思いの過ごし方でノスタルジックな時間を過ごしてみませんか。
施設情報はこちら
施設名
ゆふいん文学の森
住所
大分県由布市湯布院町川北1354-26
電話番号
0977-76-8171
営業時間
10:00~17:00
休業日
不定休(事前に電話確認を)
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
15:30 森の離れを独り占めする極上のひととき
今日の宿は「山荘わらび野」。2016年の熊本地震の影響ですべてを建て替えることになり、2019年にリニューアルしました。約3500坪の広大な敷地に7つの宿泊棟、レストラン棟、レセプション棟が点在。「由布院の自然を纏(まと)う宿」というコンセプトをもとに、森に溶け込んだモダンな客室が印象的です。
客室の大きなソファに腰かけた目線の先には、室内とフラットにつながる庭が眺められます。各部屋には内湯だけでなく、メゾネットスタイリッシュスイートに泊まると2階には露天風呂も。趣の異なる温泉がはしごできる粋な計らいに感激しました。
山荘わらび野の泉質はアルカリ性単純温泉。とろりとした手ざわりが肌を潤してくれます。一帯の森と、由布院のシンボルである由布岳を眺める露天風呂の開放感、たまりません。
夕食は大分県産の食材を取り入れ、和食をベースにした創作料理。A4等級以上の豊後(ぶんご)牛「おおいた和牛」や佐賀関(さがのせき)漁港直送の魚介類、とれたて野菜などがふんだんに盛り込まれています。彩りと盛り付けも美しく、滋味豊かな料理に笑みがこぼれます。
翌朝、チェックアウト前にカフェスペースに立ち寄り、コーヒーを一杯。入れてくれたのは支配人の髙田淳平さんです。「一日の予定を詰め込みすぎずにゆっくりと堪能してもらえたら。お客さまにとってのもう一つの“リビング”のような存在でありたいと思っています」と話してくれました。鳥のさえずりを聞きながら過ごす森の離れでの一泊は、すべてからデトックスされたような、リセットのためのひとときでした。
施設情報はこちら
施設名
山荘わらび野
住所
大分県由布市湯布院町川北952-1
電話番号
0977-85-2100
営業時間
チェックイン15時 チェックアウト12時
休業日
不定休
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
2日目
10:30 現代アートと建築をたしなむミュージアムへ
2日目は、由布院の旅ではずせない由布院盆地のまち歩きへと出かけましょう。
観光客でにぎわう湯の坪街道から一歩入った場所にある「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」は、2017年にオープンした現代美術館。すでに外観から洗練された空気感が漂います。それもそのはず、建築家の隈研吾氏が設計を、グラフィックデザイナーの原研哉氏がロゴデザインを手掛けています。
スタッフの麻生真実さんに隈建築について聞くと「外壁の焼杉は温かみとモダンさを兼ね備え、陰影が生まれ立体感が増す工夫が施されています」とのこと。デザインに加えて由布院という土地になじむ配慮がすみずみまで行き届いているのです。
1階にはカラフルな色合いが特徴的な村上隆氏の作品が6点。今や日本文化の代表でもあるマンガやアニメの流れを汲んだ個性的なデザインは、国籍や世代を超えて見る人を魅了します。
ガラスで区切った隣には、現代美術家の杉本博司氏の「海景」シリーズを展示。見とれて目が離せなくなります。
2階に上がると、由布岳を借景に奈良美智(ならよしとも)氏の彫刻が出迎えてくれました。奈良氏の子どものころの目線で表現した大きな犬の表情と由布岳との記念撮影も忘れずに。
2022年6月には美術館が広くなり、作品も増えてグランドオープン予定。「現在展示しているアーティストの作品を一堂に、しかも長期間見られる美術館は国内でも貴重だと思います。何度でも、いろんな季節にお越しください」と、麻生さん。知れば知るほどに興味が湧くアートと建築の沼にハマってしまいました。
施設情報はこちら
施設名
COMICO ART MUSEUM YUFUIN
住所
大分県由布市湯布院町川上2995-1
電話番号
0977-76-8166
開館時間
9:30~17:30 ※現在自由観覧でのご案内(無料音声ガイドあり)。公式ホームページからオンライン予約(前日まで可能)
休業日
水曜(その他、臨時休館あり)
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
12:00 豊後牛をいただく絶品ランチ「由布まぶし」
芸術鑑賞のあとは、10分ほど歩いたところにある食事処へ。「由布まぶし 心(しん)」は、由布市内の契約農家が作る「ひとめぼれ」を土鍋で炊き上げ、その上に豊後牛・地鶏・鰻をまぶした土鍋ご飯を味わう和食店。今回は「豊後牛まぶし」をチョイスしました。
豊後牛はブロックの状態で塩こしょうを振り、一晩寝かせて、2、3時間かけて炭火で焼きます。さらに一晩寝かせてカット。そうすることで脂とうま味が閉じ込められます。オーナーのこだわりと、修行を積んだ料理人の技により、手間暇を惜しまずつくられています。
注文を受けてから炊き上げた、豊後牛まぶしの登場です!
土鍋のふたを持ち上げた瞬間、香ばしさが立ち上り、湯気の奥にほんのり桜色の豊後牛が花びらのように重なる姿に歓喜の声を上げてしまいました。
一口かきこみ、思わずため息。豊後牛のふちは燻され、中心に向かってやわらかな食感。豊後牛の濃いうま味と、あま味とねばりのあるご飯とのバランスが絶妙なのです。
二杯目はお好みで薬味と漬物を。しいたけや白ねぎなどオール大分県産でつくった自家製辛味噌をお試しあれ。ほどよい辛味とコクが味に深みをもたらします。自家製のゆずごしょうも絶品です!
最後はお茶漬けで。おこげの香ばしさが溶けた出汁とともにさらさらと食べきり、心もお腹もいっぱいに満たされました。
「由布院らしい食事を楽しんでもらいたくて始めたお店なんです。素材と絶妙な火加減、味付けと、すべてが整って由布まぶしの味になります。幸せな気持ちでお帰りいただけたら嬉しいです」と、女将の森政泉さんが見送ってくれました。
施設情報はこちら
施設名
由布まぶし心 金鱗湖本店
住所
大分県由布市湯布院町川上1492-1
電話番号
0977-85-7880(予約可)
営業時間
10:30~18:30(LO17:30)※品切次第終了
休業日
火曜
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
13:30 由布院の風をジャムの瓶に詰め込んで
由布院の旅もそろそろ終わりに近づき、帰り際に湯の坪街道でかわいいお店を発見。
ジャム専門店の「ことことや」は、そのまま食べても十分おいしい旬の素材を厳選し、ひと鍋ずつ丁寧に炊いてつくるのがこだわり。香料や着色料などは一切使わず、果物そのものの自然な味や香り、色合いを生かして仕上げています。
由布院のおみやげとして人気のラインナップは、ゴロゴロとした食感が贅沢なイチゴや、由布市産のブルーベリー、そして地元の柚子を使った、ほろ苦い味わいの柚子マーマレードの3つ。そのほかにも、ブドウやキウイ、かぼちゃ、にんじんなど果物だけでなく野菜のジャムもあり、どれも気になって迷ってしまいます。
和紙をかけ、水引のような赤い紐できゅっと結んだ凛とした姿の美しいこと。ひとてま、ふたてま、丹精込めてできあがったジャムに、素朴な魅力があふれる由布院のまちの雰囲気が重なってみえます。
オーナーの渕野恵太さんにおいしさの秘訣を伺いました。「いいものを作りたい、その一言に尽きます。素材の持ち味、食感、風味、すべてにおいてジャムにするからこそおいしく味わえるものを徹底的に吟味することも大事にしています」と、妥協のないジャムづくりへの熱い心を語ってくれました。
このジャムをおみやげに手渡したいと思い浮かんだ友人の数だけ、たくさん抱えて店をあとにしました。
施設情報はこちら
施設名
ゆふいんジャム工房 ことことや
住所
大分県由布市湯布院町川上3037-6
電話番号
0977-85-2203
営業時間
10:00~18:00
休業日
火曜(繁忙期は無休)
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
秀峰由布岳が見下ろす由布院盆地には、ふるさとの懐かしさを感じる昔ながらの風土の中にも洗練された新しさが融合し、すべてを包み込む由布院の懐の深さを感じたのでした。ほっとする穏やかさと、感性に訴えかける刺激を受け、いろんな気持ちに気付かせてくれる由布院は、心が豊かになれる場所です。
地域ナビゲーター
九州支部 ふるさと大分の魅力案内人
牧 亜希子
大分県大分市出身、在住。大分県各地の魅力をデザインや言葉、写真を介して伝えることを生業に長年携わってきました。プランナー・ライターとして自分がいいなと思った直感を信じて「大分ならでは」「大分だからこそ」を表現し、愛するふるさとを編集し続けていきたいです。