静岡県三島市
絶景と口福に出会う、海のまち下関の旅
2021.03.05
山口県下関市は、本州の最西端に位置するまち。響灘(ひびきなだ)と周防灘(すおうなだ)、関門海峡という、それぞれ表情が違う海が3方を囲んでいて、折々に歴史や文化が生まれ、豊かな魅力を育んでいます。訪ねてみると、世界一の取り扱い量を誇るフグ、コバルトブルーの絶景など、海の恵みには人やまちが積み重ねた心惹かれるストーリーがありました。下関では欠かせない魅力濃度の高いスポットを中心に、きっとまた訪ねたくなる、海と過ごす1泊2日の旅をご案内します。
おすすめモデルコース
1日目
- 15:30 143mの高さから、海峡ビューにこんにちは
- 17:00 ふく料理公許第一号店で、本物の味と時間を
- 20:30 ここでしか見られない絶景を求めて海岸のホテルへ
2日目
- 9:00 刻々と移り変わる青の世界に延びる角島大橋
- 11:00 下関の海に潜った気分でのぞく美しき海中世界
- 14:00 唐戸市場でツウなお土産ザクザク発見!
1日目
15:30 143mの高さから、海峡ビューにこんにちは
下関市のランドマークとしてそびえる、全長153m の海峡ゆめタワー。海を中心に歴史を紡いできた下関のまちが一望できます。まちの営みやパワーを感じたくて、まずは30階展望室を目指しました。
シースルーエレベーターに乗って、まちを見下ろしながらグングン上昇。
143mの最上階に到着すると、壮大なパノラマが待っていました。球状の展望室では、360度をぐるり楽しめます。さまざまな船が行き交う関門海峡はもちろん、線路が伸びる繁華街、貨物が積み下ろしされる港など、各方面が下関らしくて絶景の宝庫。言葉を発するよりも、シャッターを切る回数の方が多くなってしまいそう。
28階は「恋人の聖地」として、ハートが彩る人気のデートスポット。縁結び神社やラブロック、縁結び絵馬などがあり、ご縁や絆を深める大切な場所になりそうです。
こんな2人掛けのソファもあるので、ゆっくりした時間も過ごせます。
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施設名
海峡ゆめタワー
住所
山口県下関市豊前田町3-3-1
電話番号
083-231-5877
営業時間
9:30〜21:30(入館は閉館の30分前まで)
休業日
無休(1月第4土曜は休館)
料金
大人600円、小・中学生300円
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
17:00 ふく料理公許第一号店で、本物の味と時間を
下関でフグ文化が発展するゆえんとなった老舗が、歴史にも名を残す割烹旅館「春帆楼」。関門海峡を望むこの場所で明治14年ごろに創業し、明治20年、当時の初代内閣総理大臣であった伊藤博文にフグの刺身を供して以来、「ふく料理公許第一号店」として味や技術を高め続けています。実は伊藤公が明治21年に禁を解くまで、豊臣秀吉が発令した「フグ禁食令」が続いていました。当時の女将は海が時化(シケ)て魚がない中、お手打ち覚悟でフグ刺を提供したところ、あまりのうまさに伊藤博文はフグを食べてヨシ!としたそうです。
教えてくださったのは、支配人の橋本 恒(ひさし)さん。30年以上の勤務を経て、改めて感じる春帆楼の魅力を尋ねると「やはり、歴史ですね。公許第一号店として本物をご提供すること。そして、日清講和会議の舞台として語り継がれること。どちらの重みも大事に受け止め、つないでいきたいと思います」と、伊藤公が命名・揮毫(きごう)した店名の前で話してくれました。
ちなみに、フグのことを下関では、福を呼ぶ魚として「ふく」と呼びます。口福は幸福へつながる、そんなエピソードにも感じますね。
ふくコースは2万4200円〜(税・サービス料込)。まずは、美しい錦皿が透き通って見える芸術的なフグ刺しを目で愉しみ、特製のポン酢と安岡ネギと呼ばれる細い地ネギと一緒にうま味を噛み締めます。ちりも唐揚げも、フグの王様・トラフグのみを使用。そして宿泊室として調えられた客室を、お料理をいただく個室として利用できる贅沢な時間も、春帆楼ならではといえるでしょう。
海峡を行き交う船や、対岸・門司港のライトアップ、夏には花火大会も眺められるそうです。
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施設名
春帆楼本店
住所
山口県下関市阿弥陀寺町4-2
電話番号
083-223-7181
営業時間
11:00〜14:00(来館は〜13:00)、17:00〜22:00(来館は〜19:00) ※要予約。受付は3日前まで
休業日
無休(ただし、要予約)
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
20:30 ここでしか見られない絶景を求めて海岸のホテルへ
贅沢にフグを味わった後は、どうしても見たい絶景を求めて1時間強のシーサイドドライブ。国道191号線を北上して、角島(つのしま)大橋のたもと、全室オーシャンビューのホテル西長門リゾートへチェックイン。対岸の角島に揺らめくほのかな灯りや、押し寄せる波の音、夜空の星といった自然と一体化しながら、温泉でゆったり癒やされます。朝日を楽しむため、1日目は早めの就寝がおすすめです。
2日目
絶景温泉で爽快な目覚め!海のパワーを吸収しよう
シンプルに海を楽しむことを考えられた露天風呂は、朝日と澄んだ空気がよく似合います。写真は「あまがせの湯(朝はこちらが女性風呂)」。
スキッと爽快に目覚めたら、海を眺めながら和定食を。人数によって、空間を保てるようレストランか広間でいただけます。地元産アジの開きを自分で焼いて食べる趣向が好評で、地元のお米を炊いたご飯とよく合い、朝から食が進みます。
食後は、約5万坪という広さのお庭散策が絶対的におすすめ。特に、角島大橋やコバルトブルーの海に接するビーチはホテルの敷地内にあり、プライベート感覚で過ごすことができます。なんとこのビーチ、響灘と日本海が出会う海士ヶ瀬(あまがせ)ならではの珍しい「潮目(しおめ)」が目の前で生まれ、季節や風の強弱によって海に生物がいるように見えたり、穏やかに受け入れあっていたりと神秘的な光景が広がることも。テラスやラウンジでは、地元専門店のジェラートやドリンクも味わえます。滞在するからこその貴重な一瞬を、どうぞお見逃しなく!
ビーチを散策しながら、総支配人の庄司隆治さんが「この砂は、貝殻が波で削れてできているんですよ」と教えてくれました。よ〜く見ると、波打ち際と陸側では砂つぶの大きさが違います。この日は海士ヶ瀬に吹く風が強い力を発揮し、ビーチに波形の造形を残していて、これもクールで印象的でした。
スタッフの皆さんは日々変わる海や角島の表情に通じているので、情報が本当に豊富です。頼れる楽しみ方コンシェルジュとして、ぜひ尋ねてみてくださいね。
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施設名
ホテル西長門リゾート
住所
山口県下関市豊北町神田2045
電話番号
083-786-2111
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
9:00 刻々と移り変わる青の世界に延びる角島大橋
海と空がどこまでも平行に続く、圧巻の海士ヶ瀬。その上を全長1780mの角島大橋が架かり、楽園へでもいざなうように、颯爽と雄姿を見せています。訪れている時間のうち、コバルトブルーの海の色は深い藍色となったり、日光をキラキラ反射したり、刻一刻と表情を変えていきます。さまざまなランキングで上位となるこの絶景、やはり「出会えて良かった」とつぶやいてしまいます。
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施設名
角島大橋
住所
山口県下関市豊北町神田〜角島
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
11:00 下関の海に潜った気分でのぞく美しき海中世界
2021年で開館から20年を迎えた海響館は、関門海峡潮流水槽やトラフグ、マンボウなど世界一の種類数を誇るフグの仲間の展示など、下関ならではの展示が見どころの水族館です。世界一の展示種類数を誇るフグは、ここならでは。お顔を見てみるとなんだか可愛くて、これまで気付かなかった魅力を知ることができます。
またイルカとアシカの共演ショーやスナメリが作るバブルリングをパフォーマンスとして公開するなど、特色豊かで工夫を凝らした展示やイベントも充実。館内には、世界に数体しか現存していないシロナガスクジラの全身骨格の標本の展示もあります。
国内最大級のペンギン展示施設「ペンギン村」も人気のエリア。現在5種類約140羽のペンギンが展示され、ペンギンの集団遊泳「ペンギン大編隊」などでイキイキと泳ぎ回る姿が楽しめます。
ランチスポットとしてぜひ訪れてほしいのは、1階にある「イルカの見えるレストラン」。なんと、イルカが過ごす水槽を眺めながら食事やカフェが楽しめます。ゆったり泳いだり、遊んだりしている姿を見ていると、イルカと一緒に海中で遊んでいる気分に。時には、席まで寄ってきてくれるサプライズも!?
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施設名
市立しものせき水族館 海響館
住所
山口県下関市あるかぽーと6-1
電話番号
083-228-1100
営業時間
9:30〜17:30(最終入館〜17:00)
休業日
無休
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
14:00 唐戸市場でツウなお土産ザクザク発見!
海響館のイルカに名残惜しくもバイバイしたら、数分の場所にある唐戸市場へ急ぎます。
早朝から営業するここは、プロも御用達の市場。フグやクジラ、ウニなど下関を代表する海の幸を扱う鮮魚店から、野菜やかまぼこなどの市民も通う小売店、漁師のお母さんたちがその日揚がった魚を直売するコーナーなど、活気があって「関門の台所」といわんばかりの盛況ぶり。金・土・日曜と祝日は「活きいき馬関街」も開催され、握り寿司や海鮮丼、フグ汁などを威勢良く販売する屋台が登場します。テイクアウトできる持ち運びスタイルなので、気になったら即買いです。
おっと、のんびりしているヒマはありません! 市場の営業は15時まで。おいしいものはたくさんあるので、市場内をお土産ハントに繰り出します。
まずは、なんといってもフグ! 大正13年創業の「ふく問屋 海(かい)」は、専門店ならではの本格派です。毒のある部分を取り除いた「みがき」と呼ばれるまる1尾のトラフグや、白子、皮などがすぐ買える状態なんて、すごい…。もちろん刺身もその場で購入できますが、ここは奮発して、とらふくお刺身・みがきセット9000円をここから発送してもらうことに決定。値段は送料込みなので、良心的でお手ごろです。
お次は、かまぼこ。山口県は、弾力とは違う歯ごたえが楽しめる焼き抜き蒲鉾で知られています。新鮮な魚が多く集まる下関も名産地の一つ。昭和13年創業の「市村蒲鉾」は、ちくわの「白波」が看板商品。肉厚で魚の風味が感じられ、生のまま刺身で食べるのがおすすめだそう。ほかにも、フグが入った「ふく蒲だんご」や「ふくの鉄板焼蒲」、2021年に発売したばかりの明太子が入った「めんたろうCHIKUWA」など、オリジナリティあふれる練り製品が勢ぞろい。製造直売店ならではのラインナップで、見て話すのも楽しみのひとつです。
店の人と話をしながら購入する対面販売は、本当に楽しいものです。昭和15年創業の海産物専門問屋「林商店」では、「辛子明太子といえば博多が有名ですが、実は下関が発祥なんですよ」という話を聞いてビックリ。この歴史と、もともと北海道の海産物を扱う専門店として良質のスケソウダラの卵が手に入ることから、40年前から自社で明太子の製造を開始。今では不動の一番人気商品として君臨し、リピーターも多いそう。卵のサラサラ感とプチプチ感が別格で、塩梅もやわらかく絶妙です。
ほかにも、プロだからこそ知る最もおいしい6〜8月の紅鮭や、とろける食感とうま味がたまらないカレイの大吟醸漬けなど、試食の度にノックアウトの連続でした。
最後は、クジラの専門店「藤野商店」へ。
下関グルメでフグと並んで欠かせないのがクジラ。商業捕鯨が再開し、食文化として受け継がれています。店頭に並ぶ部位ごとの種類は圧巻で迷ってしまうため、どれをどのように食べれば良いのか教えていただきました。「クジラを味わうなら、まずこの4つ。皮、お刺身(赤身)、ベーコン、さえずり(舌)」。どれも火を通して料理に使えますが、まずは刺身で味わってみるのが良いそうです。真空パックなので買いやすく、ここでしか買えないものばかりで、最後まで目移りしっぱなしでした。
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施設名
唐戸市場
住所
山口県下関市唐戸町5-50
電話番号
083-231-0001(唐戸市場業者連合協同組合)
営業時間
5:00〜15:00(月〜土曜)、8:00〜15:00(日曜・祝日) ※店舗により異なる
休業日
不定水曜 ※その他、臨時休業等あり
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
絶景と本物の味をゆっくり味わいたいと思っていたら、いずれも素敵すぎて、興奮の連続だった下関旅。下関の海は数々の名物を生んできたけれど、素材の上質さに甘んじず、もっと魅力的になるよう歴史を重ねてきたからだろうと思います。時に刺激的で、海のパワーが元気をくれる、何度も訪れたくなるまちです。
地域ナビゲーター
中国支部 ふるさとLOVERSナビゲーター
河津 梨香
山口県萩市在住。広島で15年ほど編集やもの書きをし、地域おこし協力隊として山口県に帰ってきました。生活の中にある本質的なものに魅了され、その地域ならではの魅力や人々が紡いできたものを受け継ぎ、実践したいと思っています。萩のそんな部分に光を当てるリトルプレス『つぎはぎ』を、仲間3人と作っています。