愛知県名古屋市『THE TOWER HOTEL NAGOYA』
川と緑の豊かな自然に調和した心潤う温泉宿
2021.11.05
山口県 × 大谷山荘
日本には旅の目的地になるホテルや、ふるさとに帰ったような気持ちになる旅館があります。この記事では、人々の記憶に残る「とっておきの宿」をふるさとLOVERSナビゲーターが訪問し、その魅力をたっぷりとご紹介します。 今回訪れたのは、3年におよぶ再生プロジェクトを経て生まれ変わった注目の温泉地、山口県長門市に宿を構える老舗旅館「大谷山荘」です。
新たな魅力が吹き込まれた長門湯本温泉街
山口県最古の湯として約600年の歴史を持つ温泉が、山陰の長門市にあります。北浦と呼ばれる、この一帯を代表する湯本(ゆもと)温泉。2020年春、3年間におよぶ再生プロジェクトを経て、新たな温泉街として生まれ変わりました。
自然に溶け込む湯本らしい心地良さは受け継がれ、まちを彩る店や人が新しい流れを作り、「そぞろ歩き」というアクティブな経験が加わったのです。地元を愛する人たちの本気の取り組みが評価され、2020年度には「グッドデザイン賞」や「ふるさと名品オブザイヤー」の地方創生賞を受賞。今、注目を浴びています。
音信川の流れと緑に寄り添う落ち着きある品格
温泉街のシンボルである音信川(おとずれがわ)に沿って山手へ進むと、鮮やかな緑に包まれた品格ある宿が現れました。山口県民からも憧れの声が上がる特別な旅館です。過去には皇室の方々をお迎えし、2016年には日露首脳会談の場にもなりました。2020年には、温泉街のリニューアルと機を同じくして設立60周年を迎えた、「大谷山荘(おおたにさんそう)」です。
人気を誇る大きな魅力は、自然の息吹を感じてゆったり過ごせる上質空間と、ステイを豊かに満たしてくれるおもてなし。まずは、お部屋を紹介します。
源泉掛け流しの露天風呂付きプライベート空間
大谷山荘ならではの心の贅沢を楽しむなら、露天風呂付きのお部屋がおすすめです。2018年にリニューアルを開始し、2020年に完成した全8タイプの18室。風が通り抜けるテラスが、全部屋に設けられています。桜、新緑、紅葉、雪景色と四季折々の表情が眺められ、部屋にいながら自然に抱かれる心地です。
うれしいのは、プライベートな露天風呂が備わっていること。葉音や川のせせらぎを耳にしながら浸かる癒やしは、「自然浴」と表現しても過言ではないほどです。pH9.67の柔らかなアルカリ性単純温泉を源泉掛け流しで楽しむひとときは、なんとも贅沢。別荘感覚でリピートする人が多いという話に納得でした。
専用クラブラウンジで特製のわらびもちを
露天風呂付き客室の宿泊者は、専用のクラブラウンジ「長門」を利用することができます。
落ち着いた空間はチェックイン後や食事前のブレイクタイムにぴったりで、ワインやビール、ソフトドリンクが楽しめます。が、ここでおすすめしたいのは、知る人ぞ知る「わらびもち」。
料理長こだわりのレシピで、毎朝わらび粉を練って仕上げるわらびもちは、もともとロビーラウンジで10年以上愛されてきた逸品です。ぷるっ、とろっとした滑らかな口当たりに、心がゆるやかにほぐれます。
旬を「喰いきる」和食や焼鳥会席など食通も唸る選択肢
うれしい驚きが続きました。夕食は、長門の豊かな山海の幸を前提に、露天風呂付き客室宿泊者専用の和食会席と鉄板焼き、そして焼鳥会席の3コースから選ぶことができるのです。この場合の和食は、総料理長自らがその土地で採れたものを、その土地の料理法で、その土地で食すという「三土(さんど)料理」の哲学でふるまう特別会席。素材の風味がみなぎる旬に徹底した「喰いきり」のスタイルで、滋味を存分に堪能できます。
さらに注目したいのは、長門のソウルフードといわれるまちの味覚を、洗練された技と感覚で昇華した焼鳥会席。長門は、人口1万人あたりの焼鳥店舗数が全国でトップを争うまち。地鶏産地としても名を馳せます。
そんな地元の食文化を楽しんでもらおうと、炭火で焼く様子が目の前で繰り広げられ、食においても地域性を満喫できます。斬新なこの夕食は、「お客さま自身に旅のプラン作りを楽しんでいただきたい」という思いから生まれたもの。「古き良き文化を残しつつ、新しい旅館文化を創造するのが大谷山荘のスタイルです」と、対応してくれた和田祐介(わだ ゆうすけ)さんが話してくれました。なるほど、これも、おもてなしの一つなんですね。
思いに寄り添う、おもてなし
大谷山荘のおもてなしは、「山草花(さんそうか)」と例えられています。「野に咲く一輪の花のように、人をなごやかに。 出すぎず、さりとてなおざりにせず、相手の心に添うように」という信条です。
宿を予約する際、多くの人は電話ではなくインターネットを介して行うと思います。大谷山荘ではその後、お礼メールを返信するだけでなく、必ずスタッフから電話をかけているそうです。「ご挨拶をするとともに、メールでは見えないお客様のご要望をうかがうことができます。より安心してご来館いただきたいと考えています」と和田さん。また、山口県を代表する宿でありながら玄関は大きく構えておらず、とても小体なことに驚きます。しかし一歩踏み入れれば、悠々とした上質空間に心和みます。この在り方に、おもてなしの深さを感じずにいられませんでした。
くつろぎと贅沢感を高める、おすすめの滞在プラン
これだけ多くの魅力を持つ大谷山荘。おすすめの過ごし方を、和田さんに尋ねてみました。「チェックインは14時30分からなので、10時30分にチェックアウトすれば20時間滞在が楽しめます。露天風呂付きのお部屋や天体ドームなど、ゆっくりとおくつろぎください。また、よりプライベート感を満喫するなら、隣接する「別邸 音信」でのステイがおすすめです。広い館内に露天風呂付きの部屋が18室のみで、裸足でお過ごしいただけます」。
2020年には、川沿いや山を望むロケーションを生かしたカフェプランがスタート。「春から秋の風が心地良い時期に、川床やテラスで自家製パンセットもしくはクラブハウスサンドをご提供しています。事前予約制で1日1組限定なので安心してお過ごしいただけますよ」。
川床は、音信川が流れる湯本温泉ならではの楽しみ方。地域性や自然を生かしながら、さりげなく心地良いおもてなしで迎えてくれる大谷山荘は、旅の楽しみ方を提案してくれるコンシェルジュのようにも感じました。湯本温泉を満喫するなら、まずはここから。大事な人にこそ、そう伝えたい宿でした。
施設情報はこちら
施設名
大谷山荘
住所
山口県長門市深川湯本2208
電話番号
0837-25-3300
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
地域ナビゲーター
中国支部 ふるさとLOVERSナビゲーター
河津 梨香
山口県萩市在住。広島で15年ほど編集やもの書きをし、地域おこし協力隊として山口県に帰ってきました。生活の中にある本質的なものに魅了され、その地域ならではの魅力や人々が紡いできたものを受け継ぎ、実践したいと思っています。萩のそんな部分に光を当てるリトルプレス『つぎはぎ』を、仲間3人と作っています。