京都府京都市『松井本館』

京の味と寛ぎを。部屋食文化にこだわる旅館

2021.09.30

京都府京都市 × 松井本館

日本には旅の目的地になるホテルや、ふるさとに帰ったような気持ちになる旅館があります。この記事では、人々の記憶に残る「とっておきの宿」をふるさとLOVERSナビゲーターが訪問し、その魅力をたっぷりとご紹介します。今回訪れたのは、街中の賑わいのなかで落ち着きをたたえた旅館「松井本館」です。こちらの旅館では朝・夕食ともに宿泊客が客室で食べる「部屋食」で提供しています。

“京都の日常”を垣間見るような、中心地にある旅館

凛とした空気が満ちる社寺や伝統と文化の香りに心躍る京都。観光スポットはまちのいたるところにありますが、なかでも今回紹介する「松井本館」が位置するのは京都市中京区。碁盤の目を思わせる通りに、歴史ある老舗やモダンな店舗が軒を連ねる京都の中心部です。

京の台所・錦市場、新京極や寺町のアーケード街へも徒歩圏内という便利なロケーション。しかし、このエリアの魅力はそれだけでありません。店舗のほか、会社や住居が混在していて、観光都市・京都のなかでも“京都の日常”を感じられると言ってよい場所なんです。街並みを眺めながら、そして気になるお店やスポットがあればふらりと立ち寄って。住人のように京都の空気を楽しんでいると、今回ご紹介する宿「松井本館」に到着です!

古きよきものと現代の美が彩る落ち着きあるロビー

通りに面した門にかかる暖簾をくぐれば、外の喧騒とは一変します。灯籠のあかりが導く趣あるアプロ―チを抜けてロビーへ向かいましょう。待ち受けるのは、京都が大切にしている古き良きものと現代的な美しさが融合した数寄屋風の空間。トップを大理石が彩り、前面には「なぐり」という木工技術が施されたカウンター、壁面をアートのように飾る老舗「川島織物」のテキスタイル、そして和装の女将やスタッフの笑顔の出迎え。到着して1分でとりこになる、これぞ京都のおもてなしです。まずはその雰囲気に浸りながら、お茶とお菓子を味わいましょう。

朝夕食ともに「部屋食」。寛ぎと京の味を一度に堪能

「松井本館」は、創業80年以上を数える旅館。現在の建物は2013年にリニューアルしたものですが、スタッフの言葉遣い、所作など、そのすべてに、創業時から大切にしているきめ細やかなもてなしの心が受け継がれています。そのことは、同館が旅館の寛ぎを存分に感じられる「部屋食」を重視していることにも表れています。

館内の客室は27室。路地を抜けてたどり着く特別室、モダンな和洋室、坪庭付きの和室など、さまざまなスタイルがあり、そのすべてで朝食と夕食は、部屋食で提供されています。部屋食を実施していない旅館も増えつつあるという昨今、この旅館でしか味わえない寛ぎある食事そのものが、貴重な体験です。

朝食は湯豆腐、夕食は懐石のほか、肉や鍋料理をお好みで

旅館での部屋食といえば、懐石料理ですよね。懐石料理は、食べるスピードに合わせて一品一品提供されるため、素材、味、盛り付けといった四季折々の京料理の粋と、じっくり向き合うことができるという意味では、ぜひ体験したい料理です。「松井本館」でも、旬の食材を使った美しい料理を味わうことができます。内容は毎月変わり、先付、八寸、向付……と、運ばれてくる度に、ワクワクするような美食体験です!

しかし迷うのは、京都の食文化を堪能できる肉料理や鍋料理のメニューも用意してくれていること。京都のブランド牛・京都牛のステーキ懐石やすき焼き、白味噌で味わう鍋ものも食べてみたい……! 懐石はちょっとハードルが高いと感じてしまう若い世代にはこちらもオススメ。このバラエティ豊かなラインアップが京の食文化の懐の広さを象徴しているのでしょうね。

そして、朝食は湯豆腐が登場。老舗豆腐店「高雄屋」のくちどけ滑らかな豆腐を、九条葱とおろし生姜、削りかつおを入れたタレでいただきます。だし巻きや「炊いたん」と京都で呼ばれる煮物も、すべてが出汁のきいた京風。目覚めた体に、優しい京の朝ごはんが染み渡ります。

まるで地元の友人のように、コミュニケーションが弾むひととき

客室で食事をする「部屋食」ならではの楽しみが、食事を運んでくれるスタッフとのコミュニケーション。料理に使われている食材には、初めて食べるものもあるかもしれません。そんな時に気兼ねなくその場で質問できるのも、プライベート感ある「部屋食」ならでは。ほかにも後で訪れようと考えている場所へのアクセスや所要時間を教えてもらったり、近くのおすすめスポットを聞いたり。頼れる地元の友人のように、相談してしまいましょう。

「一品一品お出しするので、お客さまと触れ合える時間が多いんです。何かご質問を受けたら、次のお料理までの間に調べて、お知らせすることも。懐石料理だからこそ深まるコミュニケーションがあると思っています」と、若女将の松井もも加さん。地元ならではの情報に旅の充実度がアップすること間違いありません。

また、松井さんによるとプライベートな空間ゆえに気が付けることもあるそう。「お食事の支度をしていると、『おめでとう』と乾杯されるシーンに出あうことがあります。お聞きすると、実は大切な記念日。こうしたお声は、大勢のお客さまがいらっしゃるガヤガヤとしたレストランだと聞き逃してしまうかもしれません。そうした声が耳に届いたら、できる範囲でのおもてなしをさせていただきます」。程よい距離感でコミュニケーションをとってくれる京都らしい気配りです。

それから、自分たちのペースでゆっくりできることを実感できるのが、朝です。目覚めたら、朝食までは自由時間。指定した時間に準備してくれますが、もうちょっとのんびりしたいなというときには、急ぐ必要はありません。「お客さまの中には、お聞きしていた時間になってもお休みになられている方がいらっしゃいます。一言お声をかけてテーブルにお食事を準備しておくと、ご自身のタイミングで起きてこられてお召し上がりになります。自分だけの空間ですから、ゆっくりお過ごしいただけるんです」。レストランで食事の場合は、髪や服装を整えなくてはならず、旅先でもなんだか慌ただしい朝に。「部屋食」なら寝起きの姿のままでもOK。一日のプランを相談しながら、旅の朝を満喫しましょう。

大浴場で旅の疲れを癒してリラックスして部屋食

お風呂も、旅先の宿泊での楽しみのひとつですね。「松井本館」には、壁面にさくらがあしらわれた「華の湯」、坪庭と滝を眺めながら湯につかる「滝の湯」、2つの大浴場があります。宿に到着したら、食事の前に大浴場でゆったりと疲れを癒したい人も、入浴後の食事が「部屋食」なのでご心配なく。「部屋食」は、家族や旅する仲間だけのプライベート空間。メイクなども最小限で、リラックスして食事を楽しめます。
「『食事の時間の会話が楽しかった』といったお声をいただくと、やはり部屋食の良さを感じますね。世界に誇る文化である部屋食をもっと多くの皆さんに体験してもらいたいです」と松井さんは話します。京都の寛ぎをより満喫できる「部屋食」を守り続ける「松井本館」。思い出がより一層色濃く記憶に残る、そんな旅ができそうです!

※2021年現在、新型コロナウイルス感染症予防のため「松井旅館」ではお部屋での接客は最小限に抑え、できる限りお客さまだけでゆったりくつろげるよう配慮されています

施設情報はこちら

施設名
松井本館

住所
京都市中京区柳馬場六角下ル

電話番号
075-221-3535(代表・予約センター共通)



※施設に属する情報に関しましては、予告なく更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

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京都、二条城の近くに事務所を構える「文と編集の杜」。福岡県出身で、高知県、静岡県と全国を点々としてきた瓜生朋美が設立した編集・ライティング事務所です。関西を中心に、歴史、グルメ、インタビューと、幅広く取材・記事執筆を手掛け、地域のさまざまな魅力を発信中。