愛知県名古屋市『THE TOWER HOTEL NAGOYA』
倉敷の町屋の旅館で癒やしのひとときを
2021.05.06
岡山県倉敷市 × 料理旅館 鶴形
日本には旅の目的地になるホテルや、ふるさとに帰ったような気持ちになる旅館があります。この記事では、人々の記憶に残る「とっておきの宿」をふるさとLOVERSナビゲーターが訪問し、その魅力をたっぷりとご紹介します。今回訪れたのは、江戸時代の趣きある雰囲気の中で、名物・鯛茶漬けをはじめとしたこだわりの食事が楽しめる岡山県倉敷市の「料理旅館 鶴形」です。
風情漂う街並みが並ぶ「倉敷美観地区」。一歩足を踏み入れれば、白壁の蔵屋敷や川沿いの柳など別空間が広がり、多くの観光客を魅了しています。その中でも今回ご紹介するのは、江戸中期末に建てられた築280年の商家の建物を利用して営まれている約50年続く「料理旅館 鶴形」歴史ある建物と、料理にこだわる宿です。早速、支配人の村上裕人(むらかみひろと)さんと料理長の甲谷省治(かんがいしょうじ)さんにお話をお伺いしました。
ロビーに入ると隅々まで清掃が行き届いた気持ちの良い空間が広がっています。「凛とした旅館を目指しています」と村上支配人が言うように、ピカピカの床をみているとピンと背筋が伸びるような気持ちになります。
暖かい木の温もりが近代の建物とは違って日本人の心をくすぶるのでしょうか。とても落ち着いた気持ちにさせてくれます。大きな窓ガラスの向こうに見える手入れの行き届いた中庭の景色はとても風流。倉敷で一番古い、樹齢400年の雄大な松の木が根を下ろし圧巻です。
2階の宴会場には黒松でできた立派な梁があり何とも奥ゆかしい。村上水軍(17〜18世紀頃、瀬戸内海で活動した水軍)の船大工がこの建物を作ったとされ、天井を見ると、船の底の部分のような形で、とても珍しいつくりになっています。長い年月を経て歴史を積み重ねてきた建物の趣きに、一瞬時が止まったような気持ちになります。
鶴形名物「鯛茶漬け」から岡山県産黒毛和牛の絶品料理をご紹介
鶴形の名物と言えば「鯛茶漬け」。この料理なしでは「旅館鶴形」は語れません。多い時では1カ月に1000食以上注文されることもあるのだとか。品のいい器の中には、醤油ベースのゴマダレに漬けられた厚みのある鯛の刺身がたっぷり入っています。鯛は火を通すとうま味が逃げてしまうのですが、刺身なら上から温かいお茶を注いでもうま味が器の中に残るので、そのままの味が楽しめます。また弾力があるので火を通した鯛と比べると食感がしっかりしています。ゴマの香ばしさとの相性も絶妙!
半分食べたところで、緑茶をお椀の8分目ぐらいまで注ぎ、10秒ふたをして蒸らします。だし汁ではなく、お茶をいれることで鯛のだしとゴマダレが合わさってコクのあるあっさりとしたお茶漬けに仕上がりました。
火の通った鯛はさらに甘味が増し、柔らかい口あたりに。これは、あっという間に食べられます。同じ料理で2通りの楽しみ方がありとても贅沢な1品。大人気なのも納得です。
次にこだわりの料理は、10年前から提供している肉料理です。時代の流れとともに人々のニーズに合わせて昔ながらの会席料理にこだわることをやめ、肉料理の提供を始めました。
特に、岡山県井原市美星町の岡山県産黒毛和牛を使用した、「岡山県産黒毛和牛肉すき焼き又はしゃぶしゃぶ会席」が人気。サシ(赤身の間にある脂肪)が入りすぎない肉を使用することで、脂っこくなく、お肉らしい味を長く楽しむことができます。
こちらも同じく、美星町の黒毛和牛を使った「岡山県産黒毛和牛 朴葉味噌焼き会席」。ステーキのように厚みのある肉に朴葉(ほおば)をのせ、お味噌とキノコとともに焼き上げていただきます。朴葉の香りがたち、こちらも人気の会席です。どのコースも、この道40年の甲谷料理長が培った技を惜しみなく注いだ料理を味わうことができます。
「こだわりをなるべくもたないようにすることがこだわりです。柔軟に対応できるよう、頑固にならずに、いろいろなお客さまに喜んでもらいたいです」と甲谷料理長。「絶対こうでなければならないという押し付けはしません。例えば、天ぷらに、塩でも、だしでも、ソースでもなんでもかけていいですよ」と笑って話します。その臨機応変な対応は、村上支配人も驚くほど。料理長の柔軟さは食材選びにも現れています。「岡山県産のものでは、冬の牛窓の白菜、瀬戸内海のメバル、アコウ、タコなどを使用しますが、特に地産地消にこだわらず、その季節にある最高の食材を見つけて最高のものを出します。例えば春は岡山の鰆を使いますが、秋になると淡路島や五島列島のサワラがおいしいです」
時代を超えて人々を癒やす和室
食事のあとは、お部屋でゆったりとくつろぎましょう。写真は、東と南側にある縁側から中庭が見渡せる19畳の和室「阿知」。古来より日本で愛されてきた和室は木の温もりと畳は心をほっと和ませてくれます。桃をあしらった釘隠しが施されている柱ななどゆっくりと時を刻み、時代を超えて人々を癒やします。
幅広い世代のニーズに対応する旅館づくり
「近年では、ターゲット層が広がりつつあり、幅広い年代のお客さまにきていただいています。今は、試行錯誤しながらもお客さまのニーズの多様化とともに、鶴形も変えていきたいと思っています。若いお客さまには、昔ながらの古い建物の中で、落ち着いてゆっくりと時間をかけながら食事をするということを体感してもらいたいです」と村上支配人は話します。
280年の歴史ある建物が積み重ねてきた歴史を感じさせる旅館で、その時一番の季節の素材を使った料理が楽しめる「割烹旅館 鶴形」。風情ある空間で江戸時代の人々の暮らしに思いを馳せつつ、ゆったりとした時間に身をゆだねてみませか?そこで味わう料理が身も心も満足させてくれるに違いありません。
施設情報はこちら
施設名
料理旅館 鶴形
住所
倉敷市中央1丁目3番15号
電話番号
086-424-1635
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
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中国支部 フォトグラファー&時々ライター
松本 紀子
岡山県瀬戸内市在住。主にフォトグラファーとして活動していています。岡山県のヒト、モノ、コトの魅力を十分にお伝えできるような写真に気持ちが伝わる文章を添えていきたいです。