かおり風景100選に選ばれた桃の名産地
岡山県倉敷市にある玉島八島(旧富田村)は桃の産地として知られ、環境省の「かおり風景100選(豊かなかおりとその源となる自然や文化・生活を将来に残し、伝えていく風景)」にも選ばれています。晴れた日は高台から瀬戸内海を望むことができる見晴らしいのいい自然豊かな地域。春には一面桃の花が咲き乱れる風光明媚な景色と共に、やわらかな花の甘い香りが広がります。
全国トップクラスの生産量を誇る岡山県の白桃。種類はなんと20種類以上あり6月下旬から8月下旬まで各地で順に栽培されています。日照量が少なく台風被害も少ない岡山の温暖な気候は桃づくりに適しています。
中でも「清水白桃(しみずはくとう)」や「白鵬(はくほう)」などの品種が知られており、上品な白さときめ細やかさは多くの人を魅了しています。こだわりの一つは、白桃のゆえんでもある「白さ」。一つひとつ手作業で実を袋がけするなど、手間暇をかけた栽培方法にあります。また、直射日光を当てないため実が柔らかく、とろけるような甘さが特徴です。
リレー栽培で出荷される旬の桃
今回のお礼の品は、倉敷市内の井頭栄果園(いがしらえいかえん)が、化学農薬を極力を使わず有機肥料で育てた白桃です。注文したタイミングで7月上旬から8月下旬までに順次収穫されている「加納岩(かのういわ)白桃」(7月上旬〜7月下旬)「白鳳(はくほう)」(7月中旬〜7月下旬)「清水白桃(しみずはくとう)」(7月下旬〜8月上旬)「白麗(はくれい)」(8月中旬〜8月下旬)のいずれかが届きます。どの桃が届くのか時期によって変わるので一夏に何種類か試してみたくなります。
「加納岩白桃」は多汁で酸味が少なく上品な香りが特徴。「白鳳」は気候に比較的左右されず、毎年安定した味で果肉が繊密で甘みが強く酸味が少なくジューシーです。「清水白桃」は岡山の白桃の中で最も有名で「白桃の女王」と呼ばれる人気の品種。「白麗」は比較的硬い果肉で渋みがなく上品な甘さとしっかりした果肉の食感。果肉は繊密で柔らかく、上品な甘さの果汁はしたたるほど多汁でとてもジューシーです。どの品種も試してみたいと思うものばかり。
また、2022年以降ははさらにお盆以降に収穫できる2品種を増やす予定になっています。
桃の名産地で120年余り続く井頭栄果園
白桃は桃の中でも特に弱く、とてもデリケートで、雨量が増えると収穫量にも影響が出る栽培が難しい品種です。近年、全国的に桃農家は減少傾向にありますが、「玉島地区」は組合などの手厚いサポートを受けられることができるなどの理由で、若い新規就農者が増加している活気あふれる地域です。
井頭栄果園は、玉島地区でも老舗の桃農家のひとつ。創業は120年余りで、現在は5代目の井頭俊彦さんに引き継がれ、約3ヘクタールの桃園を奥さんと切り盛りしています。取材の日はまさに桃のシーズンのはじまりの時期。古い付き合いの近所の方など約10名のお手伝いのスタッフが収穫と出荷準備のための作業をしていました。
桃づくりのこだわり
井頭栄果園のこだわりの一つは有機肥料を使っていること。岡山県井原市にある渡辺牧場の有機肥料を使用しています。「それによって味が濃くなり桃も日持ちします。」と井頭さん。倉敷市のエコファーム認定(「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づき、堆肥の適正量を守り、化学肥料・農薬の使用量の低減など環境に配慮した農業計画を都道府県知事に提出し認定を受けること)をとっているので農薬も極力使っていません。
園に茂る雑草は手で刈り取り、それも腐葉土として利用しています。また、浅植えによって木が活性化されしっかりとした根が張り、主さらに枝の剪定を工夫することで、水分や栄養成分のバランスの良い桃が育つのだそうです。
正確な大型糖度センサーを導入
井頭栄果園では岡山県でも珍しい大型糖度センサーを導入し、糖度の低い桃が入ることのないよう全て検査しています。そうすることで、「甘さ」にこだわった井頭白桃ブランドを生み出しています。つまり、ハズレはないということ!その年の気候によっては糖度が低いものができることがありますが、その場合はジュースやジャムなどの加工品になります。
伝統を守り続ける5代目俊彦さん
5代目の俊彦さんは学校を卒業した後、岡山市内の問屋に勤めていましたが、子供の頃から俊彦さんの祖父にあたる3代目に「頼むぞ」と言われたことが頭の片隅にずっと残っていたそう。「長く引き継がれたものを自分の代で終わらせたくない」と30歳になったときに桃園を継ぐことを決意します。
俊彦さんが桃に携わるようになって今年で21年目になります。最初の5年ぐらいはわからないことが多く苦労したことも。袋がけなど年配のお手伝いの方が簡単にやっていることができず悔しい思いもしましたが、経験を重ねて克服してきました。「ここ5年ぐらいは本当に桃づくりが楽しいです。苗木を植えて桃になるには、4〜5年かかりそこから15年ぐらい育てます。合計20年のサイクルが必要になるのですが、今ちょうど一通りのことを経験したということですね」
桃は自身の子どもです
「お客様においしかったよ、来年も頼むよと言ってもらえるのが一番の励みになります。待っていてくれている人がいると思うと頑張れますね。桃の旬は1ヶ月半ぐらいととても短いので、その時期にぜひ食べて欲しいです」。桃は自身の子どもと一緒だと愛おしそうに話す俊彦さん。日々愛情をかけて真摯に桃づくりと向き合っているからこそ、とろけるように甘くておいしい桃になるのだなと感じました。