世界遺産「日光東照宮」に隣接する、美しい洋館「明治の館」
栃木県日光市は国内のみならず世界にも知られた観光地。中でも、徳川家康公を祀る「日光東照宮」は江戸時代の粋を集めた建造物が立ち並び、日光二荒山神社(にっこうふたらさんじんじゃ)、日光山輪王寺(にっこうさんりんのうじ)とともに「日光の社寺」として世界遺産に登録されています。日本の歴史の奥深さ、文化の素晴らしさを今に伝える日光は、一年を通して多くの人でにぎわっています。
この日光東照宮の敷地に隣接しているのが、「明治の館」です。日光東照宮が醸し出す和の世界とは一変、木々に囲まれ重厚な佇まいを見せる洋館「明治の館」は西洋料理のレストラン。日光東照宮から訪れると、まるで別世界に迷い込んだような不思議な感覚にとらわれます。
返礼品は最高級の素材を使った、明治の館の人気メニュー
明治の館の人気メニューの一つが、返礼品のチーズケーキ「日瑠華(ニルバーナ)」とヨーグルト。「日瑠華」は小麦粉を一切使用せず、デンマーク産の最高級クリームチーズをたっぷりと使用。しっとりとした口当たり、濃厚なチーズのコク、サワークリームとフレッシュレモンの爽やかな酸味が楽しめる逸品です。一方、ヨーグルトは栃木県産の生乳を100%使用。なめらかな口当たりと生乳の風味が味わえます。
さまざまな歴史を刻んだ登録有形文化財「明治の館」
明治の館の前に立ち、最初に目を引くのが見事な石積みです。これは、「乱れ石積み」と呼ばれる精緻な技法で、壁面すべてを日光石で積み上げているそうです。野趣に富んだ外観、華やかな西洋文化を伝える内観…。しばし見とれてしまうほどの美しい佇まいです。
明治の館は、日本で初めて蓄音機・レコードの製造販売を行った日本蓄音機商会の創設者であり、日本における蓄音機の父と呼ばれるF.W.ホーンの別荘として明治時代後期に建てられました。その後、戦時中には外務大臣・重光葵(しげみつまもる)が疎開したのをはじめ、さまざまな人の手を経て昭和52年、当時の面影をそのままに「西洋料理 明治の館」としてオープン。平成18年には、登録有形文化財にもなっている貴重な建造物です。
“日光の顔”として定着したこだわりのチーズケーキ
今でこそ明治の館で人気の日瑠華ですが、誕生したのは今から約40年も前のこと。明治の館より前にオープンした姉妹店、ステーキハウス「みはし」で「名物になるデザートを」と考え出されたのが日瑠華でした。すぐに日瑠華は大好評。口コミで広まると同時に、「テイクアウトしたい」「送ってほしい」といったお客の要望に応えるうちに自然と販路が広がり、土産や贈答品として定着、“日光土産の顔”となりました。
ちなみにニルバーナとは仏教用語で「もっとも優れたもの」を意味し、漢字の「日瑠華」は日光山輪王寺の大僧正が「日に輝く瑠璃の華の如し」との想いを込めて付けたそうです。
製法も素材も当時のまま、変わることのない味わい
現在、日瑠華は明治の館の敷地内にある洋菓子工場で製造されています。温度や湿度などによって分量を加減し、パティシエが丁寧に手作り。デンマーク産の最高級のクリームチーズと卵、砂糖のみを使用し、低温でじっくりと時間をかけて焼き上げるという製法は当時のままです。「作り方も素材も変えていません。一つひとつ手間をかけて作る。それを大切に販売する。それらすべてが今につながっていると思っています」と田中英雄(たなか ひでお)支配人。
これまでにない口当たり、コクと酸味の絶妙なバランス
実際、「日瑠華」がどんなチーズケーキかというと…。まず、驚かされるのは、滑らかな口当たり。「お客様から、レアチーズケーキですか?とよく聞かれます」と田中さんが言う通り、一口食べた瞬間、風味豊かなクリームチーズが溶けていきます。低温でじっくり焼き上げるからこそ、レアケーキのようなしっとりとした食感に仕上がるのだとか。濃厚なクリームチーズ(写真上)と爽やかなサワークリーム、新鮮なレモンの風味が絶妙に口の中で絡み合い、濃厚なのに後味は重くないため、ついつい食べすぎてしまうほど、くせになる味わいです。
ヨーグルトは軽やかで滑らかな口当たりが印象的。ヨーグルト特有の酸味が少なく、生乳の風味をしっかりと感じられるひと品です。ヨーグルトが苦手な人にも好まれる素朴な味わいなので、ジャムを添えたり、フルーツを絡めたりと、さまざまな楽しみ方ができます。
日光という日本の宝に恥じない、本物のおいしさを
明治の館を訪れる人の多くは観光客。明治の館の雰囲気に惹きつけられて日光東照宮帰りに立ち寄る人もいます。「世界遺産のある場所でレストランができることは誇り。だからこそ、私たちには使命があります」と総務課長の八木澤正敬(やぎさわ まさたか)さん。その使命とは「“本物”を提供すること」。
江戸時代の匠が造り上げた日光東照宮を筆頭に、日光にあるのは唯一無二の観光資源。だからこそ、八木澤さんは「日瑠華はもちろん、明治の館の建物、料理、サービスも含め、日光という“日本の宝”に恥じない『本物』をこれからも追求していきたいですね」と言います。日光という場所への愛情と誇りが「日瑠華」の原点。40年、変わることなく守られてきた味は、これからも日光名物として大切に受け継がれていくことでしょう。
とっておきの記憶として刻まれる、格別な時間と味わい
洋館は以前、バラのツタが外壁を覆い、地元の人からは「ローズマンション」と親しまれていたそうです。現在はツタで覆われていた石積みが姿を現し、時間だけが刻むことのできる優美さ、風格で訪れる人を魅了しています。
日光東照宮を訪れたら、ぜひ、“蓄音機の父”が愛した明治の館に立ち寄ってみてください。木々に囲まれた洋館のテラスや庭でいただく日瑠華はきっと格別。その味わいは日光の思い出とともに、とっておきの記憶として刻まれることでしょう。
関東支部(栃木県日光市担当) / 斎藤 里香(さいとうりか)
群馬県桐生市在住。北関東と埼玉を中心に取材・執筆活動をしています。一番、大切にしたいのは、人々の「思い」です。いろいろな「コト」や「モノ」に携わっている人々の“代弁者”として、頑張っている姿、その根底にある思いなどを多くの人たちに伝えることができたら嬉しいです。
日光は時々訪れます。日本の歴史や文化を伝える数々の建造物群と並び、素晴らしいのが自然です。華厳の滝や戦場ヶ原…。日光を訪れたらぜひ、足を伸ばしてください。