世界に名を馳せる木工のまち・北海道旭川市
北海道のほぼ中央に位置する旭川市は、古くから木工の精神と技術が受け継がれているまち。その歴史は明治時代から現在にかけて約120年ほど続き、「旭川家具」ブランドとして世界にその名をとどろかせています。
また、1990年から開催されている「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)」を通して、産地全体で知見を広げ技術を高める機会も設けられ、家具産業において国内・海外からも注目を集めています。
上質な家具で、和やかなひとときを
「長く使える暮らしの道具を産地旭川より世界に発信する」。そんな志とともに旭川市で上質な家具を生み出し続けるカンディハウスから、国内外で注目を集める人気シリーズ「TEN(テン)」の「ソリッドテーブル」をお届けします。
素材そのものの色味が生かされた深みのあるウォルナットのテーブルは、目をひく軽やかで上品なデザインと、職人の確かな技と眼により仕上げられた製品。大切な家族と過ごす毎日のひとときをより一層和やかにするテーブルの魅力を探るべく、デザイン企画本部の尾田さん、本社営業部の柏木さんにお話を聞きました。
旭川家具をリードする「カンディハウス」
木工のまち旭川市では、大小合わせて100以上のメーカーが日々切磋琢磨しながらものづくりに励んでいます。なかでも、1968年に創業されたカンディハウス(旧:インテリアセンター)は地域をリードする企業の一つ。海外研修で知見や技術を培った創業者を中心として製作した「1人掛けのイージーチェア」を皮切りに、現在に至るまで常に時代を先取りした新しい暮らし方の道具を提案してきました。
大雪山系のもつ豊かな森林資源を背景に木工産業が発展したこのまちで、「木の一本一本を無駄にせず生かしきる」「長く使える暮らしの道具をつくる」ことにこだわりをもち、早くから海外マーケットにも進出。国内外のデザイナーとの製品開発を行うなど、常に新たなデザインを追い求め、奮闘しています。
カンディハウスの特長の一つは、コンピュータ制御で複雑な形状を削り出すことのできる先進機械などを用いた加工技術。これにより、速く正確で安定した加工が可能となっています。加工時間の短縮により生まれた時間は、品質を左右する仕上げへ。どんなに加工技術の機械化が進んでも、仕上げ工程で必要なのは人間の手と、眼の力。機械と匠の技の融合により、日々上質な家具が生み出され続けているのです。
「軽やかさ」を追求したTENダイニング
そんなカンディハウスの主力製品の一つである「TEN(テン)」は、国内外問わず人気を集めているシリーズ。デザインする上で重要視されているのは、製品の「軽やかさ」。ドイツ出身のデザイナー、ミヒャエル・シュナイダー氏が「天空」をデザインモチーフとし、その軽快さを名前や形などで表現しています。
包容力ある「シャープ&ソフト」なテーブル
「TEN ダイニング ソリッドテーブル」の魅力は、なんといっても「シャープ&ソフト」の理想的なバランスを追求したデザイン。天板の側面を内側に向かって削り込むことで傾斜をつけ、脚もできるだけ量感が出ないよう細く見える形状にするなど、軽快さを実現するための工夫が凝らされています。それでいて、どこか優しい雰囲気を感じられる丸みと、日本人にはなじみ深いやぐら型であることも特徴の一つ。脚は同シリーズ椅子の後脚の角度と等しくなるよう設計されており、組み合わせに最適なのはもちろん、他の椅子ともバランスよく合わせられる包容力を兼ね備えたテーブルです。
上質な空間を生み出す、「ウォルナット」
テーブルの素材には、世界三大銘木と呼び声の高いウォルナット(くるみ科の木)を使用。素材がもつ上品で繊細な木目と深みのある色合いが、空間に重厚感を与えてくれます。また、天板は無垢材ならではの木目の奥行きが感じられるのも魅力。色の濃淡が出やすいウォルナット材の特徴と、個性ある節や木目が相まって、豊かな表情をもつ製品に仕上がっています。
「お部屋をシックに見せたい方、落ち着いたトーンの空間にしたいという方がよく選んでくださいます」と、柏木さん。素材の色を生かしたウレタン塗装が施されており、水汚れなどがすぐに拭き取れるのも嬉しいポイントです。
製品の出来を左右する「継ぎ」と「仕上げ」
テーブルを製作する上で特に重要なのは、木材を継ぎ合わせる技術。天板には、専門の職人が厳選した8から10枚の板をランダムにつなぎ合わせたものが採用されています。個性的な木目の材を組み合わせるには、培った技術とセンス・目利きが必須。特に無垢材は1本1本が全く異なります。それぞれのパーツに木目の流れ方や節の細かい癖があり、全体を見た際に偏りが出ないよう選定することが求められます。完成後の材料の動き方(※湿度等の影響で、木目の横方向に伸縮する特性)を読み、バランスよく継ぎ合わせることで、繊細で上品な製品が実現できているのです。
製品の出来栄えを左右する大事な技術の一つは、手仕事による「仕上げ」工程。機械で加工した形状をくずさない様仕上げることが肝要となるこの工程では、自然素材がもつばらつきが完成時の手触りに現れないよう、均一にする技が問われます。「製品の正確な形が出せるように」と節や材料の動きを予測ししっかりと素材と向き合い、やすりの当て方や時間に変化をつける工夫と心がけから、職人としての誇りを感じずにはいられませんでした。
「自然と調和したものづくり」への挑戦
「当社では、この先も長く「くらし」の提案を続けていくために、創業50周年を迎えた頃より企業方針などの再構築に取り組んできました」と語ってくれたのは尾田さん。2021年5月にはロゴマークを北海道産広葉樹の「ミズナラ」をイメージしたものへ刷新し、「端材まで使いきる」「北海道産材の使用率を高める」などの取り組みも着々と進んでいます。
限りある木材を原料とした家具メーカーとして「自然と調和したものづくり」を実現すべく、これまで以上にカンディハウスの新たな挑戦は続いていくのでしょう。製品にかける想いや、これから先への意気込みが深く感じられる学びに富んだお話の数々でした。
北海道支部(北海道旭川市担当) / 高橋 栞(たかはし しおり)
北海道旭川市在住。ごはんと自然をこよなく愛し、「自分で自分を満たす」をテーマに心地よいと思える暮らし方や生き方を模索&実践中。ライティングで大切にしていることは、「正直さと率直さを失わず、読み手に伝わるように事業者さまの魅力を表現すること」です。
自然と都市機能が共存する旭川市は、大雪の山々から流れる水で育つお米や野菜、この土地ならではの農業やものづくりが根付くまち。寒暖差激しい環境下で過ごす日々のなかに、絶景がたくさんあります。