酒大国高知県の食卓に欠かせない日本酒
高知は料理と一緒にお酒を楽しむ文化が根強い地域です。「高知=カツオのタタキ」といったイメージが強いですが、そのタタキとの相性が抜群に良いのも日本酒なんですよ。今回ご紹介するのは、高知県内18蔵ある酒蔵の中でも、唯一高知市内に蔵を構える醸造元・酔鯨の「純米吟醸 吟麗&特別純米酒」です。
蔵があるのは太平洋のすぐそばにある高知市長浜
お邪魔したのは、酔鯨酒造株式会社。創業当時からある長浜蔵と2018年に誕生した土佐市甲原にある土佐蔵の2施設があり、長浜蔵では主力商品を、土佐蔵ではハイエンド商品を製造しています。
今回訪れた長浜蔵では、酒造りから出荷を一貫して行っているうえに、直接お酒を購入することができるSUIGEI STOREを併設しています。高知県民にとって見慣れた鯨のマークと積み上げられたコンテナに、もうワクワクが止まりません!取材が終わったら絶対お酒を買って帰ろうと心に決めて、いざ杜氏さんのいる場内へ。
杜氏・藤村さんにお話を伺います
今回工場内を案内してくれたのは、長浜蔵の杜氏を担う藤村大悟さん。元々お酒が大好きだったことと、藤村さんが在籍していた大学の研究室に、当時の酔鯨の製造部長が水の研究で出入りしていて、何度も話をするうちに日本酒造りの世界に魅力を感じるように。「いつか自分で日本酒を造ってみたい」と思うようになり入社を決意。それから15年、今では杜氏として蔵を仕切っているそうです。
特別純米酒、純米吟醸吟麗はそれぞれどんなお酒ですか?
そんな藤村さんに、今回の返礼品についてそれぞれの特徴を伺ってみました。「特別純米酒は、酔鯨酒造の中で出荷量ダントツの主力商品で、日常の食事に合わせて食中酒として楽しんでもらいやすいお酒です」と藤村さん。純米吟醸吟麗はどちらかというと飲食店での取り扱いが多く、ちょっとぜいたくを味わいたい時にオススメとのこと。
実はこちら、最近お米を変えて中身がリニューアルしたそうで、今まで飲んでくれていたお客さんからは、「味が変わったね」と声をかけられることもあるそうです。「米を変えて従来の味に近づけるのではなくて、味が変わったけれどおいしいねと言われる吟麗を目指しています」。ちなみに、お酒の味は麹の造り方や仕込みの温度などの微調整で決まっていくとてもデリケートなもの。飲みやすい食中酒を目指して、料理の邪魔をしないスッキリした味わいを追求しているそうです。
いよいよ、お酒造りの工程をご紹介!
昔は冬場に酒造りをするのが一般的でしたが、今ではその人気から年間の出荷量がどんどん増え、真夏以外はずっと造っているそうです。
まずは精米したお米を洗って仕込みの準備をします。一口に洗うと言っても、一回の仕込みに使う米は1560kgと、ものすごい量。洗ったお米は一度蒸して、そこから米麹、酒母を造り、蒸した米と合わせ、水を入れて仕込んでいきます。米麹も酒母も、元は同じ米。日本酒には本当に米と水しか使われていないんだな~と実感します。ちなみに、仕込みに使う水は高知市中心部を流れる清流・鏡川の源流部・工石山(くいしやま)の湧き水。なんと毎朝2t運んで使っているそうです。「日本酒は米と水だけで仕込みますが、同じ造り方をしても蔵によって味が変わるのが日本酒の面白いところです。その蔵の造り、水の性質、米の品質がマッチしてその蔵の味が決まるんですよ」と教えてもらいました。
出荷されるまでの長い道のり
仕込みが終わってから22~23日の間、タンクの中で発酵させます。蔵に入るとお酒の香りとともに吟醸香独特のフルーツのような香りを感じました。この香りは酵母がきちんと作用しているサインなのです。きちんとお酒を発酵させるためには、温度管理の徹底が大事で、昔は全て人の感覚で行なっていましたが、今はコンピューターで管理し、搾るタイミングなども分析するそうです。
発酵が終わるとお酒を搾って10~15日ほど熟成。その後に濾過機を通して、火入れを行い、約3カ月間タンク熟成をしたものを瓶詰めして、やっと出荷です。発酵や熟成の期間が長いので、ゆっくり造っているように思えますが、この作業を年間でタンク210本分も繰り返すと聞いて気が遠くなりました。改めて、お酒のありがたみがわかりますよね。
最後に大切に作ったお酒の楽しみ方を教えてください!
最後に造り手さんにお酒の楽しみ方を聞きました。「やっぱり料理と一緒に飲むのが一番。この料理はこのお酒に合うという考え方は個人の好みがありますが、そもそも米からできているので、ご飯に合う料理は日本酒にも合います」と藤村さん。基本的に辛口で、飲んだ後にスッとなくなるスッキリ感が特徴の酔鯨の日本酒。料理を邪魔せずに、食べてお酒でクイッと流せるように狙いを定めて造っているそうです。
日本酒文化を世界にも発信していく
現在は国内だけでなく日本酒文化を世界にも発信している酔鯨。伝統の味を守りながらも、今あるものに満足せず、新商品も作っていきたいと今後の展望をお話ししていただきました。「香りは穏やかでキレがあり、しっかりとうま味のある辛口の酒」に照準を合わせ、時には杜氏の熟達の勘で搾りのタイミングを決める時もあると伺いました。
「酒造りは全て一連。各工程をどれだけしっかりと見極められるかで仕上がりが決まります」という藤村さんの言葉に、一献の日本酒に重みとありがたみを感じずにはいられません。今度は杯を交わしながら伺ってみたいものです。
四国支部(高知県高知市担当) / 川崎 萌(かわさき もゆ)
高知県いの町在住。おいしいものを追いかけ、絶景スポットを巡りながら、地元・いの町を中心に高知県の情報発信のお手伝いをしています。専門的なお話や自分の感じたことを、初めて記事に触れる人に分かりやすく伝えることを大切にして取材をしています。
高知市は県内中の「えいもん」(良いもの)が集まる場所。そして、ちょっと足を伸ばせば山も川も海もあり、便利な田舎ライフが満喫できる地域です。