自然素材であり、塗装材料としても優れている漆。漆器は手入れをして長く使えることも利点です。「昔は家庭の食卓で普通に使われていて、塗り替えては、代々大切に使い続けていたんです。使うことでなじんだり、ツヤが変化したり。それも漆の魅力です」。
日本産の漆の使用が増えてきたとはいえ、生産地が少なくなり、危機感を感じている森住さんたちは「まずは漆の存在を知ってもらうことが課題」と言います。そこで堤淺吉漆店では「うるしのいっぽ」という漆普及活動をはじめ、近年「BEYOND TRADITION」というプロジェクトも始動。サーフボードやBMX(バイシクルモトクロス)に漆を塗るという取り組みで、漆の新たな可能性や価値観を発信。また、京都市右京区の京北町で、漆の木を植えて、森づくりから始まる循環型のモノづくりの拠点「工藝の森」も展開しています。縄文時代から使われていたとされる漆。循環型社会が言われる今こそ、大切に受け継いでいきたい文化です。