ゴルフ場が13カ所!「ゴルフの町みずなみ」
岐阜県南東部、東濃地方に位置する瑞浪市。同じ東濃地方の土岐市や多治見市とともに、日本有数の陶磁器の産地として知られています。瑞浪市は「焼きものの町」としてだけでなく、「ゴルフの町」としても知られているのをご存知でしょうか? 実は、瑞浪市には雄大な自然を活かした13ものゴルフ場が点在しており、週末ともなれば岐阜県内や名古屋方面からたくさんのゴルファーが集まります。
また、年に一度、「ゴルフの町みずなみオープンゴルフ大会」を開催するなど、ゴルフを通した地域振興にも積極的に取り組んでいます。そんなゴルフの町で、金属加工の専門技術を活かしたゴルフパターが生まれました。
金属加工のプロによる、1/100mm単位のものづくり
「日本ジオニック株式会社」は航空部品や医療機器など、精密機械の部品を中心とした金属加工を手がける町工場。あらゆる機械部品の「試作」を専門としている点が特徴です。金属加工の工場の中でも試作を専門しているところは、国内でたった1、2割程度。大変珍しい分野だそうです。
試作専門の工場だからこそ、同じ部品を大量生産するのではなく、お客さまからの要望に合わせて究極の一点ものを作り上げることができます。そのため、工場内はライン化することはできず、日々新しい図面と向き合いながら、精密部品を生み出しています。
100分の1mm単位で設計された部品を製造するのには機械の力だけではなく、職人の知識とノウハウも必要。高い技術力で東海圏の地場産業を支える、縁の下の力持ちのような工場です。
専門技術を活かした、オリジナルのゴルフパター
機械部品の製造業は社会情勢によって受注量の波が激しい分野。受け身の仕事だけではなく、お客さまに頼らなくても生産ができる自社ブランドの製品を生み出す必要があるのではないだろうか…。その想いで、3年ほど前から取り組み始めたのがゴルフパターの開発と製造です。
社長の鶴の一声で始まったというゴルフパターの開発。さまざまな金属製品がある中でゴルフパターに目をつけたのは、「ゴルフの町みずなみ」だからこそのアイデアでした。
部品の試作品の製造で培ったわずかな狂いも許さない技術力は、ゴルフパターの製造にも存分に活かされ、ゴルファー一人一人の身体特性に合わせたフィッティングを可能にしたパターブランド「ZENITH PUTTER(ゼニスパター)」が誕生したのです。
パターもフィッティングする時代に
日本ジオニックの工場にはゴルフスタジオを併設しており、実際にパターの使い心地を試しながら、身体特性に合わせてフィッティングしてもらうことができます。ゴルフ未経験の私もパターを構えただけで、もともと持っている身体の癖がフォームに表れることを実感しました。
パターはネックとヘッドの角度が1度違えば打感が変わってくるため、繊細な調整が必要な世界。ゴルフ好きでも、どんなパターが自分自身に適切であるのかを理解している人は多くはないといいます。フィッティングサービスを受けたお客さまからは「ここまで細やかに調整してもらえるんだ!」と感動の声も。
完成までは40日。自分だけの一本を待つ楽しみ
開発から製造まで自社で一貫して行なっていても、パターの受注から完成までは1カ月以上の時間を要します。お客さま一人一人に合わせた図面を描き、大きな鉄の塊から、ヘッドとネック部分をマシニングセンターという精密機械を使って削り出し、最後はパター職人の手によって、グリップの取り付けやネーム部分の色付けをしていきます。
時間がかかるからこそ、手元に届いたときの喜びは大きいはず。自分だけの一本だと思うと、愛着も湧き、永く愛用していけそうですね。
本気のものづくりで、ゴルフの新しい文化を瑞浪から
ZENITH PUTTER担当の榎木勇二(えのきゆうじ)さん(左)と早川徹(はやかわとおる)さんは次のように話します。
榎木さん「正直、当初は開発がうまくいくかどうか想像がつきませんでした。初めて試作品をゴルフ場に持って行った時には、やめたほうがいいと言われたほどです。でも、社長はいつもものづくりに対して本気なんですよね」
早川さん「ゴルファーの間では、クラブを自分に合わせてフィッティングすることはあっても、パターのフィッティングはまだ浸透していないのが現状です。“パターをフィッティングする”というゴルフ界における新しい文化を瑞浪から広げていきたいんです」
ゴルフパターについて話すお二人からは、わくわくしながらものづくりに取り組み、ゴルフを愛するお客さまに喜んでもらいたいという想いが伝わってきました。ZENITH PUTTERを通して「パターのフィッティング」という革新的な文化が瑞浪から全国に広がっていくのがとても楽しみです。
ものづくりのその先までも考える
実は私は、今回取材させていただくまでゴルフパターには触れたことさえありませんでしたが、お話を伺い一本のゴルフパターに込められた想いの深さを知り、一気に引き込まれました。高い技術力を活かして製品を作るだけではなく、それをどうお客さまに届けるのかまでを全身全霊で取り組んでいる社員のみなさんの姿は、ゴルフファン以外にも響くものがあります。ぜひ自分自身にぴったりのパターを持って、岐阜の豊かな自然の中でゴルフを楽しんでいただければ嬉しいです。