「こもれび栽培」と「雪蔵」でアスパラのおいしさを引き出す
北海道美唄市(びばい)市は、札幌と旭川の間、空知(そらち)地方の中央部に位置する街です。かつては豊富な石炭を産出する道内有数の採炭地でしたが、現在の基幹産業は農業が中心で、さまざまな農作物が栽培されています。中でもアスパラガスの収穫量は北海道内でも上位。今回ご紹介する返礼品「グリーンアスパラガス雪蔵美人」は、「こもれび栽培」と呼ばれる栽培方法と、天然雪による雪蔵によっておいしさが引き出されているブランドアスパラです。JAびばいの岡広祥(おか ひろあき)さんに話を伺いました。
起死回生の切り札。立茎栽培にたどり着く
「アスパラには、新陳代謝を促し、疲労回復やスタミナ増強に効果があるアミノ酸の一種『アスパラギン酸』が含まれており、利尿作用によって腎臓や肝臓の機能回復にも効果があると言われています。また、穂先部分にはフラボノイド色素の一種『ルチン』が含まれており、血管を丈夫にし、高血圧や動脈硬化の予防に効果があります。とても健康にいい野菜なんですよ」と岡さん。
そんな栄養たっぷりのアスパラガス(以下:アスパラ)は、イギリスを含むヨーロッパの原産といわれています(※諸説あります)。北海道では大正11年に、農学博士・下田喜久三(きくぞう)氏が栽培に成功。町内に直営農場やアスパラガスの缶詰工場を設立し、その後、北海道各地で栽培されるようになりました。
美唄市では昭和48年からアスパラの生産を開始。生産組合も立ち上がり、昭和55年から昭和60年にかけて収穫量日本一を達成しました。しかしその後、作物の病気や天候不順などにより、アスパラの収量が減少します。「何か打開策はないか」と、当時の担当者が佐賀県で見つけたのが、立茎(りっけい)栽培でした。
北海道ではハウス栽培が一般的なアスパラ。通常は発芽地温25?30℃、生育適温15?20℃なので3月?4月頃に種まきして苗を作り、2年目に植え付け、3年目の春から収穫を開始します。これが「春が旬」と言われる所以です。しかし、立茎栽培は、春だけでなく引き続き夏から秋にかけても収穫が可能。長い期間その味を楽しむことができる画期的な栽培方法なのです。
春アスパラ収穫後、Lサイズ?Mサイズ相当の若茎を1株あたり5本前後を収穫せずに茎を立たせたままにします。そのまま放置し続けると延々と伸長するため、作業しやすいようにおよそ1.6m程度で頭部(生長点)をカットします。アスパラは生長点を切断すると背丈を伸ばそうとするのではなく脇から新芽を出します。この脇から出た新芽を収穫するのが立茎栽培、つまり美唄で言う「こもれび栽培」なのです。
※「こもれび栽培」はハウス・露地ともに共通の栽培方法です
美唄市は平成6年に北海道で初めて立茎栽培の試験栽培を行い、翌年から立茎栽培による夏アスパラの栽培を始めました。生い茂ったアスパラに日差しが注ぐ姿が森をイメージさせるため、美唄では立茎栽培のことを「こもれび栽培」と呼んでいます。美唄市グリーンアスパラ生産組合がマニュアルを制作し、定期的に講習会を開催するなど、品質が担保されており、美唄市グリーンアスパラ生産組合に加盟している市内の37の生産者が、組合の栽培マニュアルに則って栽培し、利雪型予冷庫で鮮度保持の為に予冷を行ったのちに共同選果し、出荷規格に則したものが「雪蔵美人」となります。
天然雪を利用した雪蔵で鮮度を保ち、新鮮な状態をお届け
美唄の夏アスパラが「グリーンアスパラガス雪蔵美人」と呼ばれる理由がこの後の工程にあります。農家から収穫されたアスパラは市内の選果場に集約され、なんと天然雪を利用した倉庫で保管されます。敷地内に積もった約100トンもの雪が重機で集められ、72個のコンテナに収められています。
「刈り取られたアスパラは時間とともに水分を失っていきます。以前は冷蔵庫を使用していましたが、専門家の意見により天然雪の方が乾燥が防げることが分かり、平成20年から雪蔵を使用しています。湿度90%・温度2℃の雪蔵で冷やすことでアスパラが芯まで冷え、鮮度が保たれた状態でお届けすることができます」と岡さんは言います。
雪蔵から運び出されたアスパラは、選果レーンに並べられます。品質の確認や大きさの選別などはすべて手作業。それが終わると機械で一定の大きさに切りそろえられ、各地への発送も選果場で行われます。新鮮なアスパラを届けるために、たくさんの人たちが関わっていることが伝わりました。
美唄でおいしい夏アスパラが栽培されていることを全国に伝えたい
全国的に「春が旬」と思われているアスパラ。岡さんは「夏アスパラのおいしさを知ってほしい」という想いから、美唄市のふるさと納税の返礼品として「グリーンアスパラガス雪蔵美人」を選びました。春アスパラよりも柔らかく、甘くて瑞々しい「グリーンアスパラガス雪蔵美人」は、すっきりした味わいが特徴です。茹でる、焼くのはもちろん、薄くスライスして生でサラダにするのもおすすめです。
最後に岡さんに、美唄市の返礼品をご検討のみなさんへのメッセージを伺いました。
「"美唄市といえば夏アスパラ"のイメージが広がると嬉しいですね。グリーンアスパラガス雪蔵美人はお届けされた日が旬なので、お好みの調理法で新鮮なうちに味わってください」
北海道支部(北海道美唄市担当) / 吉田 匡和(よしだ まさかず)
札幌市出身、在住。社会福祉士の資格と経験を持つ異色の「おでかけ系ライター」。2016年にフリーライターに転向し、2017年に個人事業所「ブーレオルカ」を設立しました。「楽しさが伝わる」、「すべての人に有益である」、「記憶に残る」の3つを信条に執筆しています。
美唄市は焼き鳥の香りが似合う街。炭坑労働者で賑わった面影は少なくなりましたが、焼き鳥の香りは、今も変わらず街に漂っています。明かりがともるお店に後ろ髪を引かれながら、美唄を後にしました。