言わずと知れたグルメスポット「熱海」
熱海市は静岡県の最東部に位置する海と山に囲まれた風光明媚な景勝地です。天然温泉が豊富に湧き出る日本屈指の温泉街で、多くの宿泊施設が点在し、熱海城や起雲閣、美術館など観光施設も充実。熱海駅周辺の商店街は、昔ながらの趣ある飲食店や新しくできたスイーツショップなど個性豊かな店舗が立ち並び、たくさんの人でにぎわいます。
一年を通して温暖な気候のため過ごしやすく、海産物や農産物が豊富でグルメスポットとしても人気。熱海は静岡県のみならず、全国の食通たちを満たすおいしいものがたくさんあるエリアなのです。
ポップな見た目と老舗の上品な味のギャップが魅力
数々のおいしいものがある熱海。その中でも魅力ある地元商品を厳選した「熱海ブランド」に認定されているのが、山田屋水産の「しいたけ坊ちゃん丸」です。新鮮な魚が原料の最高ランクのすり身と刻んだ野菜を練り合わせ、原木しいたけをかぶせて油で揚げた逸品。一口パクっと食べれば、ふわふわのすり身のうま味と甘味、原木しいたけのプルプルとしたジューシーな食感、香ばしさが口いっぱいに広がって、練り製品の概念を覆されること間違いなしです。
山田屋水産の商品は、さまざまな食材とすり身を合わせて作られたものばかり。「しいたけ坊ちゃん丸」は、他の商品に使用していた原木しいたけの大きさと味の良さをもっと活かしたいと考えて作られたのだとか。「しいたけ坊ちゃん丸」の丸っこい形やパッケージに印刷されている素朴なキャラクターは、見ていてほっこりしませんか?これは、手作りの“やさしさ”をイメージしてデザインされたキャラクターなのです。
「しいたけ坊ちゃん丸」は、誕生してから数々の賞を受賞してきた山田屋水産の目玉商品です。熱海ブランド認定「アタミコレクション・エープラス(A-PLUS)」の第1回と第7回に認定。また、農林水産省主催の「フード・アクション・ニッポン アワード2018」の100選にも入選した逸品です。「しいたけ坊ちゃん丸」の知名度は静岡県だけにとどまらず、全国各地から注文がくる熱海を代表する商品のひとつなのです。
最高の素材と丁寧な手仕事で生み出される逸品
すり身の原料になる魚の風味や脂の乗りは、産地はもちろんのこと、季節によっても変動します。山田屋水産では、その時々の最高ランクのすり身だけを仕入れ、全商品に使用しています。
「しいたけ坊ちゃん丸」のベースとなる練りもののタネは、魚のすり身に海老のすり身を加え、刻んだごぼうと長ネギ、人参を練り合わせてつくられます。タネにかぶせるのは、熱海で唯一のしいたけ農家が育てた肉厚の原木しいたけ。ずっしりと重く大きいうえに香り豊かで味が濃く、軸までおいしい極上品です。
「しいたけ坊ちゃん丸」は手間を惜しまずいくつもの工程を経て作られます。まずは、しいたけの下処理から。石突きは、ただ単にチョキンと切り落とすのではなく、本当に硬くて食べられない部分だけに数回ハサミを入れ、丁寧にラウンドカットしていきます。これは、自然らしい見た目を損なわないためと、フードロス削減に取り組んだ結果だとか。見えないところまでこだわる老舗の心遣いに感服です。ぜひ、「しいたけ坊ちゃん丸」を半分に切って、石突きの自然な形を確かめてくださいね。
下処理が終わったしいたけを、昆布だし・しょうゆ・みりん・砂糖でコトコト煮含め、さらにしばらく寝かせることで味を浸透させます。丁寧な工程を踏むからこそ、プルプルの傘からじゅわっとあふれ出す煮汁とともに、軸のおいしさと歯ごたえを感じることができるのです。
成形後いきなり揚げずに蒸し上げ、うま味を閉じ込める
さて、完成までもう一息。すり身の上に下味をつけたしいたけをかぶせ、一つひとつ手作業で成形して蒸し上げます。そのあと油で表面をカラリと揚げれば「しいたけ坊ちゃん丸」のできあがり。
おすすめの食べ方もご紹介しましょう。「しいたけ坊ちゃん丸」は揚げたてを冷蔵でお届けしています。グリルやトースターで少し温めることで、冷えて固まっていた魚のうま味と脂が溶け出し、弾力が緩んでふわふわの食感に。パクっとかじるとしいたけの芳醇な香りとすり身のうま味が口の中全体に広がります。また、お鍋やお吸い物に入れれば、魚の出汁とうま味が溶け出してワンランク上の料亭の味に変身しますよ。
食を通して人の心を動かしたい
山田屋水産は3代続く老舗の蒲鉾工房。前身が鮮魚店だったこともあり、すり身のグレードには特にこだわります。余計なものは入れず、シンプルなおいしさを追及。「特徴がなく埋もれがちな練り物のイメージを変えたい」と考え、味はもちろんのこと、見た目も楽しめることを念頭に取り組んできました。
山田屋水産は女性が多い職場環境のためか、従業員同士の垣根がなく柔軟な発想を大切に意見を出し合っているそう。主婦ならではの「もったいない」という感性を大切にし、地元に埋もれた食材を活かすことや、下処理でのフードロス削減に取り組みます。福島瞳社長は「優しい従業員の方に囲まれてここまでやって来られました。これからも皆で新しいことを学び、時代に合わせて変わりながらも、ゆっくりと、仲良く助け合って続けていきたいです」と語ってくれました。
商品づくりの原点は「人を喜ばせたい」という想い
熱海駅から徒歩5分の咲見町一番街沿いにある直売店には、ひと目見た瞬間にパッと心をつかまれる楽しい商品がずらりと並んでいますよ。山田屋水産の商品づくりの原点は「人を喜ばせたい」という想いから。これからも、食を通して人々の心を動かし続けてくれるでしょう。
中部支部(静岡県熱海市担当) / 山口 敦子(やまぐち あつこ)
静岡県静岡市在住。好きなことは自然散策、間取り図を眺めること。現在は、「いちぼし堂」でリモートワーク(月に数回出社)実践中。子どもの頃夢中になった宝探しのような視点で、取材先の隠れた魅力を発掘して伝えていきます。
海・山・温泉と魅力がぎゅっとコンパクトにそろう熱海。何度訪れても飽き足らないほどの新しい発見が待っていますよ。