千葉県北東部に位置し、北は利根川、東と南は太平洋に面した銚子市は、
日本一の水揚げ量を誇る銚子漁港がある「海の町」。
一方、江戸時代創業の老舗が残る「醤油の町」でもあります。
市内を走る銚子電鉄に揺られながら、銚子の名物を楽しむ旅にぶらりと出かけてみました。
千葉県北東部に位置し、北は利根川、東と南は太平洋に面した銚子市は、
日本一の水揚げ量を誇る銚子漁港がある「海の町」。
一方、江戸時代創業の老舗が残る「醤油の町」でもあります。
市内を走る銚子電鉄に揺られながら、銚子の名物を楽しむ旅にぶらりと出かけてみました。
太平洋に面した銚子市は、2012年から7年連続で水揚げ量全国1位を記録している銚子漁港がある日本屈指の漁師町です。そんな市のシンボルといえるのが、関東最東端の岬・犬吠埼の先端にそびえる「犬吠埼灯台」。99段のらせん階段を上った先にある展望スペースからは、地球が丸いと納得させられるほどのダイナミックな大海原が見下ろせます。
灯台へは、銚子市内約6.4kmの区間を運行するローカル線「銚子電鉄」での旅がおすすめです。起点駅の銚子駅から灯台最寄りの犬吠駅までは18分。レトロな車両や駅舎、車窓から見えるのどかな風景に心が癒されます。
〈上〉高さ32mの犬吠埼灯台。「世界灯台100選」にも選ばれている 〈左下〉犬吠埼は山頂や離島を除く日本国内で、最も早く初日の出が見られる場所としても有名 〈右下〉仲ノ町駅にある銚子電鉄の車庫は見学可能(入場券150円必要。検査状況により見学できない場合あり)
犬吠埼灯台を後にして再び「犬吠駅」へ。こちらの駅舎は、実はポルトガルの王宮をイメージして建てられています。犬吠駅に30年勤務する駅員の門崎好恵さんにその理由を尋ねてみると、「犬吠埼はポルトガルにあるユーラシア大陸最西端のロカ岬と友好関係にあるため、それにちなんでポルトガル風の駅舎になったんです」との答え。
ホームの壁に装飾されているのは、銚子の町を表現したペイントアートや、ポルトガルの絵タイル“アズレージョ”。かつては駅舎もアズレージョに覆われていたそうですが、老朽化によるリフォームで、現在の姿になったそうです。「写真を撮るなら、ホームにある駅名の絵タイル前がおすすめ。駅に到着してもすぐに改札を出ないようにね」と門崎さん。
〈上〉犬吠駅前の広場を埋めるタイルもポルトガルのイメージ 〈左下〉ホームの壁のペイントアートは、銚子商業高等学校と沖縄の旅行会社が共同で描いたもの 〈右下〉「私は、犬吠駅のヌシなの」と笑いながらで自己紹介してくれた門崎さん
犬吠駅には、駅舎のほかにも楽しみが多く、電車の待ち時間も苦になりません。イチオシは銚子電鉄名物のぬれ煎餅作り体験です。
2006年、銚子電鉄は資金不足により廃線の危機にありましたが、副業として製造・販売していた、このぬれ煎餅が爆発的に売れたことで、その危機を脱しました。できたては、パリッとフニャッが同時に味わえる不思議な食感。多彩な銚子みやげが並ぶ売店には、濃い口味、うす口味、甘口味などのぬれ煎餅が並び、試食も可能です。
また、たい焼きも見逃せません。銚子電鉄の観音駅で約40年にわたって愛されてきた店が、2017年にこの地に移転。表面はカリッと、中はモチッとした生地が特徴で、あんことクリームの2種類を味わえます。
エンタメ感いっぱいの駅に名残は尽きませんが、そろそろ乗車の時間です。
〈上〉コンロの上で煎餅を焼く。焦げ目がつき始めたら手際よく何度もひっくり返す。2枚で100円 〈左下〉おみやげ用のぬれ煎餅は、5枚入りで400円。クラフトビールの銚子エールは1本500円 〈右下〉たい焼きは1個100円。地元の人は10個、20個と買っていきます
犬吠駅から銚子行きに乗って7駅目、仲ノ町駅を下車して次に向かったのは、正保2年(1645)創業の「ヤマサ醤油」の工場です。銚子市にはヤマサとヒゲタの2大醤油メーカーがあり、醤油生産量全国1位を誇る千葉県のなかでも屈指の生産地として知られています。
ヤマサの工場見学は、醤油の作り方やヤマサ醤油の歴史をまとめた20分ほどの映画鑑賞からスタート。その後、ガイドさんの案内で工場内へ。大豆と小麦を貯蔵する巨大なサイロ、麹を作る麹室、もろみの入ったタンクが並ぶ仕込蔵を見て回ります。丁寧な解説に、思わず「へえ~、ほ~」を連発。見終わるころには、醤油が特別な存在になっていました。
〈上〉東京ドーム4個分の広さがあるヤマサ醤油工場。醤油醸造の環境が変わると味も変わってしまうため、すべての醤油はここで作られている 〈左下〉1本に300t近くの大豆を貯蔵するサイロ。3~4日で1本分の大豆を使用するそう 〈右下〉もろみの入ったタンク。1つのタンクから1リットルのペットボトルで約2万本分の醤油ができる
見学の最後に訪れたのは、展示コーナーや飲食コーナー、売店などが集まった2016 年オープンの「しょうゆ味わい体験館」。飲食コーナーで食べておきたいのが、しょうゆソフトクリームです。醤油を知り尽くしたプロが試作を繰り返して作ったというソフトクリームは、キャラメルを思わせる独特の味と香りで大人気。
売店では、ヤマサの各種商品をはじめ、醤油を使ったスイーツなどを販売しています。旨み成分が通常の醤油の1.5倍以上という特別な醤油「ソヤノワール」は、ここでしか買えない限定品。お店の人によると、ステーキや炒めものにさっとかけて加熱するのがよいとのこと。どんな味わいなのか、ワクワクしながら醤油工場を後にしました。
「銚子電鉄に乗ったら車窓から見える銚子の景色を楽しんでください。冬から春にかけては、一面のキャベツ畑。それが夏にはヒマワリ畑に変わって、とてもきれいですよ」と犬吠駅の門崎さんが教えてくれました。犬吠埼で見た絶景、自分で焼いたぬれ煎餅の味、醤油工場の香り、ゴットンゴットンと走る電車の音。五感で感じた銚子の旅は、いつまでも忘れられない思い出になりました。
(2018年7月)
〈上〉しょうゆ味わい体験館では、醤油作りが手作業だったころの道具を展示 〈左下〉しょうゆソフトクリームは200円 〈右下〉売店で購入できるヤマサ醤油の商品の一部。新商品の「絹しょうゆ」は、まろやかな味わいで、マグロの漬けに使うのがおすすめ
銚子電鉄沿線の住宅地にあるハーブガーデン「ポケット」は、約5500㎡の敷地に、ハーブを中心にさまざまな植物が植えられたガーデン、ドッグラン、ツリーハウス、カフェテラス、レストランなどが揃った複合施設。花摘みや入浴剤作りなどの体験教室も行っています。爽やかな植物の香りに包まれて、ひと休みするにはぴったりのスポットです。
2017年に完成したツリーハウスは30分500円で1組6名まで利用可能
犬吠埼灯台(いぬぼうさきとうだい)
【電】0479-25-8239【住】千葉県銚子市犬吠埼9576【交】銚子電鉄犬吠駅から徒歩10分【料】入場200円【時】8時30分~16時【休】無休(荒天の場合休館あり)【P】なし
銚子電鉄(ちょうしでんてつ)
【電】0479-22-0316【住】千葉県銚子市新生町2-297(本社)【交】銚子駅まではJR東京駅から特急しおさい号銚子行きで約1時間50分、終点下車【料】運賃180円~(往復割引乗車券は600円、1日乗車券は700円)【時】銚子駅6時27分発~20時51分発(1時間に1~2本運行)【休】無休【P】犬吠駅(15台)、外川駅(5台)のみ駐車場あり
犬吠駅(いぬぼうえき)
【電】0479-25-1106【住】千葉県銚子市犬吠駅9595-1【交】銚子駅から銚子電鉄で18分【時】売店は9時10分~17時、ぬれ煎餅手焼き体験は10~16時【休】なし【P】15台
ヤマサ醤油 工場見学センター(やまさしょうゆ こうじょうけんがくせんたー)
【電】0479-22-9809【住】千葉県銚子市北小川町2570【交】JR銚子駅から徒歩7分。または銚子電鉄仲ノ町駅から徒歩3分【料】見学無料【時】工場見学は9~11時、13~15時(インターネットまたは電話で要予約)。予約不要のしょうゆ味わい体験館は9~16時【休】年末年始(要問合せ)【P】35台
~海のそばのハーブ園~ハーブガーデン「ポケット」(~うみのそばのはーぶえん~はーぶがーでん「ぽけっと」)
【電】0479-25-3000【住】千葉県銚子市笠上町7005【交】銚子電鉄笠上黒生駅から徒歩10分【料】無料【時】9~18時(冬期は~17時)【休】木曜(祝日の場合は営業)【P】30台