北海道の南西部に位置する登別市は、開湯150年以上の歴史を誇る道内屈指の温泉地です。
温泉地区では白煙噴き出す「地獄谷」が有名ですが、実は複数の遊歩道が整備されており、
神秘的な沼や森に抱かれた天然足湯への散策を気軽に楽しむこともできます。
近年ではユニークなご当地グルメも生まれたと聞き、足を運んでみました。
北海道の南西部に位置する登別市は、開湯150年以上の歴史を誇る道内屈指の温泉地です。温泉地区では白煙噴き出す「地獄谷」が有名ですが、実は複数の遊歩道が整備されており、神秘的な沼や森に抱かれた天然足湯への散策を気軽に楽しむこともできます。近年ではユニークなご当地グルメも生まれたと聞き、足を運んでみました。
約8000年前に、日和山の噴火活動で生まれた約11haに及ぶ爆裂火口跡の「地獄谷」は、登別温泉最大の源泉です。その山肌に白煙が立ち上り、多くの湧出口が泡を立てて煮えたぎる風景から「鬼の棲む地獄」とよばれてきました。硫黄の匂いが立ちこめる中、遊歩道を歩いていると、なるほど異世界を歩いているかのような気がしてきます。
そんな地獄谷にほど近い温泉街のメインストリート、極楽通りの中にある「閻魔堂」には閻魔様が鎮座しています。なかでも1日に6度ある「地獄の審判」は必見。おどろおどろしい音楽が流れると、閻魔様の顔がみるみる怒気あふれる表情に。「悪いことをしていると地獄に落ちるぞ」という力強いお言葉をいただきました。
〈上〉1日1万トンの湯量を誇る登別温泉最大の源泉「地獄谷」 〈左下・右下〉普段は冷静な顔の閻魔様が「地獄の審判」の時間(10・13・15・17・20・21時)には恐ろしい顔に
地獄谷から原生林が密生する山道を歩くこと約20分、噴煙上がる日和山と「大湯沼」が見えてきました。大湯沼はクッタラ火山の爆裂火口跡にできたひょうたん型の沼で、周囲約1km、世界的にも珍しい大規模な湯の沼です。表面温度は40~50度、沼底では硫黄泉が激しく噴出しているため、沼の側に立っていると硫黄の匂いを纏った暖かい風が肌で感じられます。
付近には、もう一つ湯の沼が見られます。奥の湯とよばれる、こちらも大湯沼同様クッタラ火山の爆裂火口跡にできたものです。表面温度は大湯沼よりも高く、約75〜85度、登別温泉街のホテルへ給湯されています。
〈上〉山頂の噴煙で天候を占ったことから名付けられたという日和山と、その袂にある大湯沼 〈左下〉かつて大湯沼では沼の底に堆積する硫黄の採掘が行われていた 〈右下〉手前と中央付近の噴出が激しく、煮えたぎる湯釜のような奥の湯
大湯沼から5分ほど歩いたところに「大湯沼川探勝歩道」と書かれた看板を見つけました。こちらは、大湯沼から湧き出す湯が流れる大湯沼川のほとりを整備した遊歩道。道中には木製のベンチが設置されており足湯が楽しめます。
足湯の温度は夏場で約38〜42℃、散策途中の疲れを癒すにはうってつけ。ベンチに腰掛けながら周囲を見回してみると、木々の緑が美しく、時を忘れるほどくつろぐことができました。温泉が流れる川で森林浴も楽しめる足湯は、湯之国 登別ならではの贅沢な穴場スポットです。
〈上〉足湯のベンチは水しぶきで濡れていることもあるので敷物持参がおすすめ 〈左下〉木の板が敷かれ、歩きやすいよう整備されている 〈右下〉大湯沼から大湯沼川探勝歩道までは歩いて約5分。この看板を目印に歩こう
大湯沼川の散策を楽しんだ後は、登別漁港で水揚げされた新鮮な魚介類や登別の特産グルメが食べられる「温泉市場」を訪れました。登別の前浜は日本海側より水温が低く、潮の流れも速いという好漁場。それに加えて、日本一の水質を誇るクッタラ湖の湧水が前浜に注ぐという好条件が揃い、質の高い海の幸が多く揚がるといいます。この日の店内にも、カキ、ホッキ貝、ツブ貝、ホタテや毛ガニなどの生簀が所狭しと並んでいるのが見られました。
温泉市場では、そんな新鮮魚介を贅沢に使った、登別ならではのご当地グルメが味わえるとのこと。早速、同店の石井樹さんに作っていただきました。
〈上〉国内外問わず、多くの観光客で賑わう店内 〈左下〉カレイの王様「マツカワ」は、店内で活〆にして提供。その新鮮さ、美味しさに感動 〈右下〉夏の毛ガニ漁は登別近郊のみが解禁区。身が締まった甘みの強い毛ガニを楽しめる
2015年に誕生したご当地グルメ「登別閻魔やきそば」は、北海道産小麦の平麺を使うこと、閻魔大王指定の秘密のタレを使うこと、登別産または登別近郊の食材を使うこと、という「閻魔大王からの3つの掟」をもとに、店独自のアレンジが加えられて、市内各所で提供されています。
「温泉市場では、季節によって異なる新鮮な魚介類をたっぷり使っています」と石井さん。さっそく賞味すると、魚介の旨味、ゴマの風味が効いたピリ辛のタレ、そしてモチモチの平麺の相性が抜群で、箸がどんどん進みます。閻魔様もこんな美味しい焼きそばを食べたら審判が甘くなるかも?そんなことを考えながら、あっという間に完食しました。
「鬼の棲む地獄」とよばれる地獄谷から巡った登別市の旅。身も心も癒される大自然の足湯や、絶品グルメを味わえる食事処など、同市の極楽のような魅力にふれることができました。
(2019年7月)
〈左上〉取材時の食材はエビ、ホタテ、イカがふんだんに使用されていた 〈左下〉温泉街のメインストリート、極楽通り沿いにある店舗 〈右〉店先の鉄板で手早く炒めて提供
「登別まちづくり株式会社」と地元の和菓子店「銘菓本舗かめや」が共同で作り上げたカステラ。地域限定牛乳「のぼりべつ牛乳」と地元の養鶏場の卵、北海道産小麦「きたほなみ」、北海道産の砂糖を使用するなど、地元の素材にこだわって作られています。しっとりとした少し重めの食感と、どこか懐かしい味わいはクセになること間違いなし。販売が開始された2016年度には、登別市で製造されている加工食品のうち特に優れた商品の印である「登別ブランド推奨品」に認定された、自慢の一品です。
※掲載の「お礼の品」は品切れや季節の都合で受付を終了・中止していることがあります。
〈左〉かわいらしい牛のパッケージ。鬼のイチオシというステッカーは「登別ブランド」の証 〈右〉登別市内では銘菓本舗かめやアーニス店で購入できる
地獄谷(じごくだに)
【電】0143-84-3311(登別国際観光コンベンション協会)【住】北海道登別市登別温泉町【交】JR登別駅から車で約15分【料】【時】【休】見学自由【P】有料150台(1回500円、夏期のみ大湯沼駐車場も1回利用可)
閻魔堂(えんまどう)
【電】0143-84-3311(登別国際観光コンベンション協会)【住】北海道登別市登別温泉町【交】JR登別駅から車で約15分【料】【時】【休】見学自由【P】周辺利用
大湯沼(おおゆぬま)
【電】0143-84-3311(登別国際観光コンベンション協会)【住】北海道登別市登別温泉町【交】JR登別駅から車で約20分【料】【時】【休】見学自由(11月下旬~4月下旬は車両通行止め、遊歩道は通行可)【P】有料43台(1回500円、冬期利用不可、地獄谷駐車場も1回利用可)
大湯沼川探勝歩道・天然足湯(おおゆぬまがわたんしょうほどう・てんねんあしゆ)
【電】0143-84-3311(登別国際観光コンベンション協会)【住】北海道登別市登別温泉町【交】JR登別駅から車で約20分【料】【時】【休】見学自由【P】大湯沼駐車場利用
温泉市場(おんせんいちば)
【電】0143-84-2560【住】北海道登別市登別温泉町50【交】JR登別駅から車で約15分【時】11時30分〜21時LO【休】なし【P】周辺利用