太平洋と伊勢湾に面し、漁業が盛んな鳥羽市は、現役の海女が日本一多い町です。
なかでも相差(おうさつ)町には、約120人の海女さんが暮らしているのだそう。
伝統の海女文化にふれるべく、海女ゆかりのパワースポットや、
現役の海女さんがアワビや伊勢エビを振る舞ってくれる海女小屋を巡りました。
太平洋と伊勢湾に面し、漁業が盛んな鳥羽市は、現役の海女が日本一多い町です。なかでも相差(おうさつ)町には、約120人の海女さんが暮らしているのだそう。伝統の海女文化にふれるべく、海女ゆかりのパワースポットや、現役の海女さんがアワビや伊勢エビを振る舞ってくれる海女小屋を巡りました。
最初に訪ねたのは、相差の氏神様で海女の守り神でもある「神明神社」。その参道にある小さな社には、海神を父にもつ女神・玉依姫之命が祀られており「石神さん」の愛称で親しまれています。石神さんは昔から「女性の願いを一つ叶えてくれる」といわれ、地元の海女さんから厚く信仰されているのはもちろん、今では全国から女性が訪れる人気のパワースポットなのだとか。
私もぜひ試してみたいと思い、まずは神明神社の本殿にお参り。そして参道に戻ってから石神さんの社の前に置かれた祈願用紙に願いごとを書きます。「一つだけ」と言われるとなかなか難しいものですが、熟考して書き上げた祈願用紙を手に鈴を鳴らして願い箱に入れて二礼・二拍手・一礼、心を込めて祈願しました。
帰りがけには、神明神社の近くにある「相差海女文化資料館」へ。こちらには海女さんが漁で使う道具などが展示されており、海女漁の歴史を学ぶことができました。
〈上〉石神さんで祈願したあとは、海女さんの魔除け「ドーマン・セーマン」を描いたお守りなどもチェックしよう 〈左下〉神明神社の本殿には、天照大御神をはじめ26柱の神々が祀られる 〈右下〉相差海女文化資料館には、海女漁の様子を再現したジオラマも展示
神明神社から車で約5分。続いて向かったのは、相差のあさり浜という海岸沿いにある「海女小屋 はちまんかまど」です。海女小屋というのは元々、海女さんたちが海に潜って冷えた体を囲炉裏で温めて休憩するために、漁場となる海辺に設けた小屋のこと。こちらではなんと、囲炉裏端で本物の海女さんとおしゃべりしながら、獲れたて&焼きたての魚介を味わう海女小屋体験をすることができます。
「海女小屋へようこそ!」と、ほがらかな笑顔で迎えてくれたのは、相差の海を知り尽くした海女さんたち。なかでも最年長となる87歳の野村禮子さんは、10代のころから80歳まで現役を続けていたという大ベテラン。「私は小さいときから海が好きで、夏になれば友達といっしょに毎日海に潜ってました。小学生になったら自分でとった海藻を海産物問屋に持って行って、そのおこづかいで飴ちゃんを買ったりね(笑)」。そんな話を茶目っ気たっぷりに教えてくれました。
〈上〉右端に座る禮子さん以外は皆、現役の海女さんとして活躍している 〈左下〉鳥羽駅から専用の「海女バス」で送迎も可能(要予約) 〈右下〉禮子さんの赤い前掛けには、自分で手縫いしたという海女さんの人形が。なんともキュート!
そうこうしているうちに、伊勢志摩の海で獲れた魚介が運ばれてきました。メインとなる貝類は、磯の香りを楽しめる活サザエ、プリっとした身を噛みしめると口の中に甘みが広がるヒオウギ貝など、どれも新鮮そのもの。醤油などの味付けは一切しないそうですが、海水でほどよく塩気が加わり、貝本来の味わいが焼きたて熱々の状態で楽しめます。また、海女さん自身が囲炉裏で貝を焼きながら、漁の様子や海女の暮らしぶりについて語ってくださるお話も魅力的です。なかでも印象的だったのは、海女さん独特の呼吸法として知られる「磯笛」について。潜水後に海面で息を吐き出すことから鳴るそうで「ヒュー、ヒュッ」と実演いただいた際には、小屋中が拍手に包まれました。
食事プランには焼き貝のほか、アジの干物や伊勢エビ汁、ひじきの煮物やご飯も付いて大満足。プランによっては、プリプリの伊勢エビや、濃厚な肝と合わせて箸が止まらなくなるアワビも登場し、御食国・伊勢志摩の美味を余すことなく堪能できます。
〈上〉活サザエ・大アサリ・ヒオウギ貝に、伊勢エビ1匹とアワビ1個も付く「海女小屋体験 まるでセレブコース」は1名8000円~(要予約) 〈左下〉炭火の入った囲炉裏で、海女さんが絶妙の焼き加減に仕上げてくれる 〈右下〉食事プランに付く伊勢エビの味噌汁なども格別の味わい(料理の内容は一部変更の場合あり)
海女さんたちと囲炉裏を囲んで、おいしい魚介と楽しいお喋りを満喫。お腹も心もすっかり満たされた食後には、海女さんたちが勢揃いで相差音頭を披露してくれました。ときにはお客さんも一緒になって踊るそうで、まるで自分も海女さんの一員になったよう。
最後に相差特産の海藻類をおみやげに買って外に出ると、禮子さんが優しい眼差しで海を眺めながら、こう教えてくれました。「海女を長いことやっとったらね、命綱が海藻にからまって海面まであとちょっとやのに出られんとか、そういう怖いこともありました。でも深いところまで潜って大きいアワビを見つけたときなんか、その喜びはもう海女ならではやと思います。私なんか87歳になった今でもやっぱり、また潜りたいなぁと思いますね」。
子どものころからおばあちゃんになるまで生涯、伊勢志摩の美しい海を愛し、海とともに生きる海女さんたち。その素敵な笑顔に会いに、鳥羽市へ出かけてみませんか。
(2019年8月)
〈上〉鳥羽で生まれ育ち、海女として長年活躍してきた野村禮子さん 〈左下〉地元のお祭りでも踊られる相差音頭を披露 〈右下〉あおさ・めかぶ・ひじきなど、おみやげにぴったりの海藻類を1袋500円で販売
“つがい鮑”とは、オスの黒アワビと、メスの白アワビ(赤アワビ)のこと。伊勢志摩では昔から「子どもを宿した女性がつがいのアワビを食べると、目のきれいな子が生まれる」という伝承が残っており、縁起のいい食べ物とされています。相差をはじめ伊勢志摩で、海鮮市場や食事処を営む、松村水産の“つがい鮑”をぜひ味わってみてください。
※掲載の「お礼の品」は品切れや季節の都合で受付を終了・中止していることがあります。
ふっくらと肉厚のアワビを2個セットでお届け
石神さん(神明神社)(いしがみさん(しんめいじんじゃ))
【電】0599-33-7453(相差海女文化資料館)【住】三重県鳥羽市相差町1385【交】JR・近鉄鳥羽駅から車で25分【料】【時】境内自由(授与所は8時30分~16時30分)【休】授与所は不定休【P】相差海女文化資料館利用15台
相差海女文化資料館(おうさつあまぶんかしりょうかん)
【電】0599-33-7453【住】三重県鳥羽市相差町1238【交】JR・近鉄鳥羽駅から車で25分【料】入館無料【時】9~17時【休】無休【P】15台
海女小屋はちまんかまど(あまごやはちまんかまど)
【電】0599-33-1023【住】三重県鳥羽市相差町819【交】JR・近鉄鳥羽駅から車で25分【時】10~17時【休】木曜【P】10台