イベントレポート:ローカル
魅力発掘発信プロジェクトの奥州市WS(第1回)
「あなたの感動」で奥州市の魅力を「省略せず」伝える
これまでに東北の3つの自治体で開催され、好評を得てきた『ローカル魅力発掘発信プロジェクト』のワークショップ。4自治体目となる今回は、岩手県奥州市が舞台です。直前に延長が決まった緊急事態宣言の影響で急きょ、一部オンラインでの開催となりましたが、2月7日(日)の1回目のワークショップには、地元の高校生や県外の奥州市出身者を含む26人が参加してくれました。地元に眠る魅力を発掘し、効果的に発信する手法を学んだ1日を振り返ります。
岩手県では初の奥州市、「えさし藤原の郷」だけではない地域の魅力の発掘・発信に挑戦
ワークショップは宮城県気仙沼市に始まり、秋田県の秋田市と大仙市で開かれ、参加者は合わせて128人に上っています。4自治体目の奥州市は、岩手県初の開催地です。
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』のロケ地、「歴史公園えさし藤原の郷」が有名な奥州市ですが、地元の人も気づいていない魅力はまだ他にもたくさんあるはず!そんな思いから、ワークショップを開催するに至りました。
ワークショップは日を分けて2回、開かれます。1回目の今回は、開催直前に延長が決まった緊急事態宣言の影響で急きょ、オンライン開催となりましたが、地元の高校生や県外の奥州市出身者など26人が集まりました。
オンラインでつながった参加者たち
講師を務めたのは、合同会社イーストタイムズ代表の中野宏一さん(36)。中野さんは「高めよう地域の情報発信力!」と題して、地元に眠る魅力を発掘し、効果的に発信する手法について説明を始めました。
魅力を伝えるのは「遠くのプロより、現場の住民」
過去のワークショップでも主題となっている通り、ローカルの魅力はガイドブックやインターネットに載っているものだけではありません。
「あなたの驚き・発見・感動こそがローカルの魅力となる」。中野さんはこのように参加者に伝えた上で、情報発信を取り巻く時代の流れを次のように説明しました。
「事件、事故、政治、経済などのニュースは記者が『伝えなきゃ』と思って発信されます。一方で、SNSは『伝えたい』と思って行われる『私の発信』です。『今日のお昼ご飯は〇〇』などの個人的な発信を除いて、『今日は水沢で開催された〇〇のイベントに参加しました』など、みんなに向けて発信される情報こそが『地域の魅力』です。記者がやっていることとSNSでやっていることが、どんどん近づいてきている。これが世界最先端の出来事です」
その地域に住む「現場の住民」は当たり前の風景だと思っていることでも、地域の外の人から見ると新鮮で面白く感じることが多々あります。それは、どんなに腕の良いプロの記者でもなかなか捉え切れないものです。現在はスマートフォンで誰でも手軽に情報発信ができるので、当たり前の風景を、その人なりに発信することで、ローカルにおける記者の役割を「現場の住民」が担うことができます。
省略せず伝えよう! 「前提となる情報」と「一番好きなポイント」
中野さんが一通り説明した後、参加者は「見出しを取る」課題に挑戦しました。「見出しを取る」とは報道業界における専門用語で、その話題が持っているニュース性を一言で言い表すことです。
それぞれの参加者は「一番好きな奥州市のモノ・人・体験・場所」を挙げ、専用に設けられたfacebookグループ上に、好きな理由を文章にしていきました。
中野さんは、参加者の見出しの中に「奥州」や「水沢」など、その地域を知らない遠くの誰かにも伝わるようにするための「前提となる情報」が含まれているかを確認するとともに、「一番好きなポイント」が省略されていないかを注意深く確認していきました。
例えば、「水沢の不思議な飲み屋街」という見出しに、中野さんは「アーケードの一本裏の道に入っただけで、アニメのような世界に行ける」という表現を加えました。これは参加者が自ら好きな理由として書いていた情報です。それを見出しに加えるだけで伝わり方が大きく変わったことに、指摘された参加者も驚いた様子でした。
課題ではこのほか、「奥州の正法寺。積もった雪の帽子で『ファッション僧(ショー)』」という、講師からの添削なしでお墨付きをもらう見出しも生まれました。
ワークショップ中に添削できなかった参加者の課題のために、終了後に中野さんの追加講義を収録した1時間の動画が参加者向けに公開されました。中野さんの添削した見出しをさらに自分らしい表現にアップデートする参加者もいて、ワークショップ後もfacebookグループ上で交流が続いています。
2回目の最終ワークショップに向けて、いざ、奥州市の魅力発掘へ
今後、参加者はそれぞれ街を歩きながら外の人が知らない魅力を発掘し、3月に市役所の江刺総合支所で開かれる2回目のワークショップで、発掘した魅力をまとめた『魅力発掘発信レポート』を作成し、発表する予定です。
レポートの一部はJTBふるさと納税サイト「ふるぽ」でも掲載予定です。