ワークショップ参加者レポート

まるで英国のパブ! 丹波篠山で常時6種類のクラフトビールを楽しめる醸造所併設のビアパブ

丹波篠山には英国スタイルのクラフトビールを楽しめる醸造所併設のパブがある。その名も「丹波路ブルワリー テラノ・サウス」。

醸造所で造られた出来立てのクラフトビールを常時6種類、さらにビールに合うお食事も提供している。店主である私は、ビール造りをイギリスで学び、その時に現地で飲んだ英国スタイルの味わい深いビールの味に感動して、自分でもそんなビールが造りたいと決意した。

そこからこの地、丹波篠山でビアパブを開業し、今では丹波栗やゴボウなど地元の食材を副原料に用いた丹波篠山でしか造れないひと味変わったビールも醸造している。今回はそんな丹波路ブルワリー テラノ・サウスについて、ご紹介していこう。

丹波路ブルワリー テラノ・サウスは丹波篠山にある小さなブリューパブである。ブリューパブとはクラフトビールの醸造所に併設されたビアパブのことで、そこで造られた出来立てのビールを新鮮な状態で味わうことができる。

常時6種類のビールを提供しており、オーソドックスな味わいの「丹波路ピルスナー」、店主が英国で学んだ「イングリッシュペールエール」、丹波篠山で収穫された丹波栗を副原料に使用した「丹波チェストナットエール」など、季節に応じて様々な味わいのクラフトビールを提供している。

ビールに合わせる食事には、ソーセージや唐揚げと言った定番のおつまみを始め、イギリス人から教わった本格レシピで作る「フィッシュアンドチップス」など、メニューは豊富だ。お店はカウンター10席と2人掛けのテーブルが3つあり、天気の良い日にはテラス席でビールを飲むこともできる。

「ビール好きが高じて、自分でもビールを作ってみたくなった」。店主が客に尋ねられてよく答える言葉である。

そう、私は元々根っからのビール好きである。社会人として働きだした20代前半の頃にビールの美味しさを覚え、各地のビールイベントで地ビールに出会い、ビアバーで飲む海外のビールに惚れ込んだりして、様々なビールを飲んできた。そのうちに、好きなビールを自分で造ってみようと思うようになり、ビール造りについて独学で勉強し始めた。

東京に「ビールの造り方」を教えてくれる会合があると知り、参加してみると同じくビール造りに興味のある人が数多くいて、さらに楽しくなり、どんどんビール造りにのめり込んでいった。そんな時、知り合いのイギリス人から「英国でビール修行をしてこい!」と勧められて、今まで勤めていた仕事を辞め、単身英国へ渡り3ヶ所の醸造所でトレーニングを重ねた。

トレーニングは夕方の17時には終わるので、その後はほぼ毎日英国のパブでビールを飲んだ。その時に伝統的な英国スタイルの「ペールエール」というビールに出会い、派手さはないが穏やかで飲みやすく、味わい深いビールの味に感動して、このビールを日本でも造りたいと思うようになった。

日本に帰国後、ちょうど田舎暮らしがしたいと考えていた両親と共に西宮市より丹波篠山市へ移住し、2017年6月に丹波路ブルワリー テラノ・サウスをオープンした。

オープン当初は正直、自分のビールの味に納得がいっていなかった。英国で教わった通りに造るだけでは、現地で飲んだあのビールと同じ味わいにはならなかった。「教科書通りではうまくいかない、現場での調整が必要だ」まさにこれを思った。

ビール造りの行程には様々なポイントがあるが、その一つ一つを仕込みの度に少しずつ変えて行き、トライアンドエラーを繰り返していくことで自分の納得の行く味に近づけていった。オープンして6年目になり、だいぶ理想の味に近づいたとは言え、その試行錯誤はこれからもずっと続いていくと思っている。

私はなんでも自分でやりたくなってしまう癖があるようで、ビールを飲むのが好きだから、自分でビールを造ってみたくなった。そしてビールが造れるようになると、今度はビールの原材料を造ってみたくなるのである。お店の向かいの畑を借りて、ビールの原材料である二条大麦の栽培を始めた。

麦は育てやすい植物で初年度からたくさん収穫できたので、さっそくビールを造りたいところではあるが、ビールの原材料として使うには大麦を「麦芽」にしないといけない。麦芽とは大麦を発芽させ、酵素を活性化させたうえで乾燥させたもののことである。この「酵素が活性化」していることが重要で、これがないと大麦のでんぷんを糖に変えることができず、アルコールが発生しないため、ビールの原材料として使うことはできない。この大麦を麦芽にする行程を「モルティング」と呼ぶが、これが一筋縄ではいかない。

もちろん手作業でできなくはないが、大量のビールを造るためには膨大な作業量となってしまい、ある程度の自動化が必要になってくる。今後はその設備の開発にも携わりモルティングを推し進めて、「丹波篠山で採れた大麦から造るビール」を丹波路ブルワリーの定番にすることを目標にしていきたいと考えている。

<情報>
丹波路ブルワリー テラノ・サウス
住所:丹波篠山市北155-3
電話:tel:0795065119
営業時間:火~土 17:30-22:00(土曜日のみ15:00open)

伝統的でモダン。唯一無二の「しのぎ」の器を作る丹波焼の窯元[雅峰窯]

約850年の歴史を持つ陶器として、日本遺産にも登録された日本六古窯(ろっこよう)のひとつ「丹波(たんば)焼」。その産地が兵庫県丹波篠山(たんばささやま)市にある。
丹波篠山市の立杭(たちくい)地区では50軒以上の窯元が建ち並び、それぞれの窯元がギャラリーや工房を持つ。
立杭地区で1890年から続く窯元「雅峰(がほう)窯」では、伝統技法「しのぎ」を使った器が作られている。
「しのぎ」とは、土を削る専用のカンナで焼成前の器を削り、削った後の溝を模様に見せる技法である。削り方によって、ストライプ柄や、花のような形に見せることができる。
「雅峰窯」では「しのぎ」の特徴は残しつつ、ポップなカラーを取り入れたり、使う人のことを考え独創的な器を生み出したり、ストイックに新しいものに挑戦している。
伝統を守りながらも現代にもマッチした器を作り続ける窯元「雅峰窯」。唯一無二の魅力を持つ「雅峰窯」の器は、どのように作られているのだろうか。

「雅峰窯」の4代目・市野秀之(いちの・ひでゆき)さんは、弟子入りした窯元の影響を受け、独立当時から「しのぎ」の器を作ってきた。
今でこそさまざまな場所で見かける「しのぎ」の器だが、デザインには流行がある。売れないときもあったが、色を変え、形を変え、試行錯誤しながら「しのぎ」の器を作り続けてきたという。
市野さんは早くに父である先代を亡くし、また、独立してすぐ家庭を持ったため、生き残るために、家族のために、日々挑戦しながら器を作ってきた。
印象的なブルーの器も、独立したばかりの時に作ったというので驚きだ。「当時は丹波焼やないって言われたけど、丹波焼やないって言われるような作品を作れたのがうれしかった」と市野さんは話す。

「雅峰窯」にとっての「しのぎ」とはなんだろうか。
「雅峰窯」では「しのぎ」を「手で土をしのぐ(削る)こと」と定義しているという。
型を使って「しのぎ」の器を作る作り手も多いなか、一つひとつ丁寧に手作業で仕上げることにこだわる。筆者は、実際に「しのぎ」の器を作るところを見学させてもらった。難しいとされる真っ直ぐのしのぎは市野さんの奥さんが担当している。お二人は市野さん独立当時の22歳で結婚したので作陶歴はほぼ一緒。「しのぐのは僕よりうまい」と市野さんは話す。
奥さんは印をつけずに迷い無く器をしのいで(削って)いき、一糸の乱れもないほどの見事な「しのぎ」を見せてくれた。
また、「雅峰窯のしのぎは究極に繊細なしのぎ」を目指しているという。土を削ったときに、カンナの通り道の両端にできる線(丘)を「稜線(りょうせん)」と表すが、その稜線をいかに際立たせるかということにこだわって作るのだそうだ。
それを追い求めるために、土のブレンドや、「しのぎ」に合う器の形状など、全てを自分で決める。「そこが陶芸の面白いところ」と市野さんは語る。

市野さんの長男と次男も一緒に「雅峰窯」を営む。いろいろな挑戦をされているのは、後継者である息子さんたちのことを考えてのことでもある。
ポップな色合いの器が多い「雅峰窯」であるが、いまは「渋い」器に挑戦している。ポップな色の器はカフェで使われることが多く、渋さや深みがある器だと料亭などでも使いやすいそう。
「雅峰窯」を訪れると自由に器を見ることのできるギャラリーがある。
手にとって、作り手と話して、「雅峰窯」の器の魅力を感じてほしい。
また、「丹波焼」とひとくくりにいっても窯元ごとに作る器はさまざま。約50軒ある窯元が、50通りの器を作っているのが「丹波焼」の魅力である。
それぞれの窯元へ足を運び、自分に合う器をぜひ見つけて欲しい。

<情報>
雅峰窯
〒 669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭355
TEL:0795-97-2107
FAX:0795-97-3407

迫力満点!ジャンル世代を超えた丹波篠山の奏で人達集合
One up Musiclub

兵庫県・丹波篠山(たんばささやま)市には、音楽好きな人や演奏者がいる。春と秋、丹波篠山市の各地では様々な音楽イベントが毎週のように開催されており、2023年3月11日、筆者は「第28回・One up Musiclub(ワンナップミュージックラブ)」に参加した!

音楽好きが集まりジャンルや世代をこえた演奏者たちが各自のお気に入りの楽器を奏でた「One up Musiclub」。
「プロの豪華な伴奏と一緒に奏でたい!歌いたい!」そんな夢を実現でき、プロのピアノ、ギター、ベース、ドラム奏者のサポートを受けて、参加者たちは思い思いに演奏・熱唱をすることができる。

会場は丹波篠山市のお蕎麦屋さん、夛左ヱ門 (たざえもん)。
JAZZの生演奏を楽しみながら石臼挽き手打ち十割蕎麦がいただける素敵なお店である。
お蕎麦とJAZZを愛したオーナーが蕎麦打ち職人の恰好で音楽を楽しむ姿が見えた。

丹波篠山には音楽演奏会イベントはたくさんあるが、そんな中でも筆者は「One up Musiclub」が特別あついと感じている!
サックス、フルート、篠笛、ギター、ベース、歌。
で、多種多様な楽器を持った演奏者が次々に集まり、夕焼け空の田園風景の街に音が響いた。
出演者は15組・約50名。世代は30歳代〜80歳代という幅広さで、「元高校の校長してました。今はドラムに目覚め、楽しんでます」とイキイキとドラムを打つ男性。「目指すは篠山の主演女優賞!」とセリフ付きの歌を熱唱する80歳の女性などが音楽を楽しんでいた。

世代もジャンルも、お仕事もさまざまだけれど「音楽を楽しむ!」ことでつながった丹波篠山の奏で人達。
丹波篠山市は、「One up Musiclub」をはじめとしたイベントを通して人がつながることで、今後ますます音楽あふれる場所になっていくだろう。

<情報>
OneUpミュージックラブ
3ヶ月に1回開催
完全予約制
会場:夛左ヱ門 (たざえもん)

人とのつながりを感じる 丹波篠山築城400年祭〔お城ドーナツ〕

慶長14(1609)年の築城から400年あまり、兵庫県丹波篠山(たんばささやま)市のシンボルとして名のある篠山城。
今から14年前の平成21(2009)年に築城400年を迎えた時の記念事業として開催されたイベントが、この記事の筆者である私の心に残っている。その名も「お城ドーナツ」。約2000人の参加者がお城のまわりのお堀を手をつないで囲み、人とのつながりを感じられる素敵な経験をした。

丹波篠山市を語る上で欠かせない篠山城は、丹波篠山市の中心部に位置し、慶長14(1609)年に徳川家康の命により、豊臣家ゆかりの大名たちを抑えることを目的に築城された。

それから年月が経ち、築城から400年の節目を迎えた平成21(2009)年に、市内でさまざまなイベントが開催された。その中のひとつ「しあわせの日市民プロジェクト」が実行委員会をつとめた「お城ドーナツ」は、お城のまわりのお堀を約2000人の参加者みんなで手をつなぎ囲むというものだった。

当時中学1年生だった私は、小学生くらいの知らない女の子と隣同士になり手をつなぎ、終了後に「ありがとう!」と、感謝の言葉をもらった。これが14年経った今でも心に残っている。しかし名前も聞けなかったので、いつかその子と再会できたらいいなと思うも、叶わぬ夢である。もしこの魅力発掘発信レポートを読んで思い出してくれたら、こんなに嬉しいことはない。そういう思いも込めてこれを書いている。

「しあわせの日市民プロジェクト」の主旨書によると、「お城を支える400年の歴史をもつ石垣は、どれをとっても同じ形の石はありません。これと同じように私たち人間も、年齢や性別、障がい、国籍などの違いに関わりなく地域社会の一員として暮らし、一人ひとりが持てる力を発揮して元気に活動できる社会の実現と存続を願いたい」という思いから、このイベントを企画されたとのこと。

このイベントは、「お堀のまわり(四辺)をみんなで手をつなぎ、『四辺を合わせる』=『しあわせ』と感じられる温かなまちづくりを推進できると信じています」という思いを込め「しあわせの日」という名がついた。

また同日に記念植樹が行われ、丹波篠山の素晴らしい自然を、これからも100年先の子供たちにも残してあげたいという祈りも込められた。私はこのお城ドーナツに参加したことが、人とのつながりを大切にしたり、丹波篠山市の100年後の未来を考えるきっかけになった。そんな思いから、現在は丹波篠山市役所で行政の仕事についている。市民と直接関わり、未来を見据えたまちづくりに携わっていきたい。

<情報 ※当時の様子>
丹波篠山築城400年祭オープニング記念式典
https://videotube.sasayama.jp/dtl.php?VID=233
「しあわせの日」お城ドーナツ
https://videotube.sasayama.jp/dtl.php?VID=235&SIZE=S
「しあわせの日」記念植樹
https://videotube.sasayama.jp/dtl.php?VID=234&SIZE=S


篠山城跡 入口(2023.3.23撮影)

「しあわせの日」記念CD

ページ先頭へ戻る