ずっと飾れる「沖縄」を。felizの三線
照りつける日差しを受けて輝く、色鮮やかなハイビスカス。視界いっぱいに広がる、エメラルドグリーンの海。観光地として高い人気を誇り続ける沖縄には、とっておきの旅の思い出がある人も多いでしょう。
心を惹きつけて離さない「沖縄」を家に飾れるように、沖縄の作家とコラボしたオリジナルの商品を揃えている雑貨屋があります。県内外から愛される「feliz(フェリース)」が届ける三線(さんしん)で、沖縄らしさを自宅に取り入れてみませんか?
観光客も地元の人も訪れるお土産店
沖縄の玄関口・那覇空港から車で北に向かうこと15分。浦添市に入ってすぐの住宅街に、1軒の雑貨屋があります。ここは、沖縄をモチーフにしたさまざまなアイテムを販売している「feliz」です。
お店を運営しているのは、町田和紀(まちだ・かずき)さん、まどかさんご夫婦。もともと雑誌の編集者として県内の作家を担当し、コラボ商品を企画してインターネットで販売する仕事をしていたまどかさんは、「いつか自分でお店をやってみたい」と思うようになりました。そして結婚を機に2010年、夫婦2人でfelizをスタート。オープンから10年以上、今では県外からの観光客だけでなく、沖縄の贈り物を買いに来る地元の人も訪れています。
沖縄で600年以上受け継がれてきた楽器「三線」
そんなfelizの看板商品が、「三線」です。三線はかつて沖縄が琉球王国だった14世紀末から15世紀に、中国から持ち込まれたといわれています。王国時代は宮廷楽器として行事で使用され、その後、庶民にも伝わっていきました。時代を超えて現在も、街を歩いていると風に乗って三線の音が聞こえてきたり、結婚式で新郎新婦の親戚が三線を奏でたりと、沖縄の人々に愛されています。
felizで販売している三線は、三線の師範である三線職人が制作しています。奏者としての経験から、三線に求めるのは美しい音色です。パーツを丁寧に組み立てることで、しっかりした音色を奏でる三線を生み出します。また、蛇皮面を強化するために布の上から本革を張り補強した「強化張り」という造りを採用。人工皮にくらべて音がよく響き、美しく広がる音色が楽しめます。
沖縄の思いを届ける、三線の音色
現在もfelizの隣には職人の工房があり、三線づくりと三線教室を続けています。沖縄生まれ、沖縄育ちの和紀さんは幼い頃から三線が身近にある環境で育ちました。「子どもの頃は正直、三線よりギターのほうがかっこいいのにな、と思っていました。でも、三線がずっと沖縄とともにあり、戦争もアメリカ統治の時代も超えて受け継がれてきた歴史を知ったことと、大人になってから沖縄の良さを実感したことで、今では三線の音色がすごく心地よく感じるようになったんです」。
沖縄らしさを届ける、愛らしい人気商品も
三線以外にも、felizには沖縄の作家が手がけた商品が数多く並んでいます。その筆頭が、felizオリジナルの「おきなわマトリョーシカ」です。作家が一体一体手描きした本体に、沖縄らしさをちりばめた絵柄が描かれています。
おきなわマトリョーシカを考えたきっかけは、沖縄の文化や特色が反映されていて、一生持っていられるお土産をつくりたい、という思いにありました。「県外に引っ越したり、外国人と結婚して海外に移ったりする大切な人への餞別として、買いに来られる地元の方も多いですね。一生飾れる沖縄らしいものをつくれてよかったなと思います」と、まどかさんが教えてくれました。
「沖縄のことをもっと伝えたい」との思いが原動力に
felizのオリジナルグッズの特徴は、沖縄の歴史や文化が反映されている点にあります。じつは和紀さんもまどかさんも、大の歴史好き。例えばこちらの「琉球かふう人形」の王様の冠は、現存している本物の王冠をモチーフにするなど、沖縄の歴史や文化を積極的に学んでグッズに反映させてきました。
その背景には、「『沖縄らしさ』を家に飾ってもらうことで、沖縄についてもっと知ってもらいたい」という思いがあります。まどかさんは、「歴史がすごく好きなのですが、琉球史があまり知られていないことにもどかしさを感じます。だから少しでも沖縄の歴史に興味を持ってもらえたらいいなと思って、受け継がれてきた文脈をグッズに反映できるよう奮闘しているんです」と教えてくれました。
物産展やふるさと納税を通じて、沖縄の良さを発信したい
三線の音色を聞いて育った和紀さんと、沖縄の歴史について学ぶまどかさん。「沖縄のことをもっと伝えたい」という思いで、数年前から三線をはじめとするfelizオリジナルグッズをふるさと納税に出品しています。県外だけでなく、沖縄県内からの購入もあるそうです。
特にコロナ禍で県外から気軽に沖縄に行けなくなった後は、三線の注文が増えているのだとか。「三線を弾いたりマトリョーシカを飾ったりして、おうち時間に沖縄へ思いを向けるきっかけになったら嬉しいです」と、まどかさんは語ります。
沖縄の風を思い起こす、無二の音色
取材を終えようとしたとき、felizの隣から三線を奏でる音が聞こえてきました。この島で600年以上、人々の楽しさにも悲しさにも寄り添ってきた唯一無二の音色は、いつどこで聞いても、沖縄の風を思い出させてくれることでしょう。
沖縄支部(沖縄県浦添市担当) / 菊池 百合子(きくち ゆりこ)
編集者。神奈川県で生まれ育ち、滋賀県長浜市で初めての地方暮らしを経験したのち、沖縄県那覇市に引っ越し。フリーランスとして、インタビュー記事を中心にWebメディアや雑誌で執筆している。関心のあるテーマは「地球での暮らし」と「人生の選択肢」。
琉球王朝の遺跡「浦添ようどれ」に、生き物が暮らす自然の砂浜、こだわりが詰まったお店の数々。浦添市では沖縄の魅力を幅広く味わえます。