紀州が生んだ知の巨人・南方熊楠ゆかりの酒蔵
徳川御三家の居城のひとつとして築かれた、和歌山市のシンボル・和歌山城。かつて外堀であった市堀川沿いに構えられているのが、株式会社 世界一統です。お酒をたしなむ和歌山県民なら、代表銘柄である「南方」や「世界一統」を知らない人はいないでしょう。
植物学・民俗学に大きな功績を残し「紀州が生んだ知の巨人」として世界的に有名な南方熊楠(みなかた くまぐす)さんの父、南方弥右衛門(やえもん)さんが1884年に創業した老舗の酒蔵です。
多数の栄光に輝く、紀の川の伏流水を用いた名酒
株式会社 世界一統の日本酒は「幅広い食材に対してでしゃばらず、料理をおいしくいただいてもらうための脇役でありたい」との思いのもと、紀の川の伏流水を用いて艶めく淡麗な味に仕上げられています。
南方シリーズの「大吟醸 極撰 南方」が2013年の全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、最近は世界一統シリーズの各種が全国燗酒コンテストで続々と金賞を獲得。山田錦を100%使用した最高峰銘柄「イチ」が全国新酒鑑評会で4年連続となる金賞の受賞を成し遂げるなど、数え切れないほどの栄光に輝いています。
「うまさの先へ」を掲げ、伝統を守り挑戦を続ける
「弊社のスローガンは『うまさの先へ』です。伝統を守りながら挑戦を続けています」と話すのは、卸事業部主任の松村達也(まつむら たつや)さんです。ふるぽの取材をお願いしたところ「自慢の商品は多数ありますが、なかでも今回ご紹介したいのは『和歌のめぐみ プレミアム』です」とおすすめしてくれました。
「和歌のめぐみ プレミアム」は、現在17種類ある日本酒ベースのリキュール・和歌のめぐみシリーズのひとつ。その製造の背景には、どういった伝統と挑戦があるのでしょうか。
日本酒と和歌山の魅力を届ける「和歌のめぐみ」
「生前の南方熊楠が愛したのは、世界遺産に現在登録されている熊野古道をはじめとする、和歌山の雄大な自然でした」と松村さんは会話を切り出しました。
「自然環境に恵まれた和歌山県は、果物王国と呼ばれるほど一年を通じてさまざまな果実が実り、どれも質の良いものばかりです。若者を中心に日本酒離れが進みつつある昨今、老舗の酒蔵が和歌山の果実を用いて日本酒ベースのリキュールをつくることで、もっと多くの方々に日本酒と和歌山の魅力を届けようと、弊社の蔵人たちが一丸となって生み出したのが『和歌のめぐみ』なんです」。
プレミアムを極める、南方家末裔の新たな挑戦
こうして約10年前に製造がはじまった和歌のめぐみシリーズは、年々増していく需要に伴い、そのバリエーションを広げて行きました。そして、南方熊楠の生誕150周年の節目に、創業者の玄孫(やしゃご)であり現蔵元である6代目・南方雅博(まさひろ)さんが“南方家末裔の新たな挑戦”として、純米大吟醸をベースにさらに良質な果実にこだわり抜いた「和歌のめぐみ プレミアム」の開発に至ったといいます。
「和歌のめぐみ プレミアム」の味は全3種類。今回の返礼品ではそのうち、同じ柑橘類でも全く異なる風味の違いに思わず虜になる「蜜柑酒(みかんさけ)」と「柚子酒(ゆずさけ)」の2種類を味わうことができます。
最高級ブランド「田村みかん」と龍神村の柚子を厳選
「6代目が自ら南方熊楠の生前の足跡をたどり、各農園に直接伺って生産者さんにお会いし、これだと思う果実だけを厳選しました」と松村さん。「蜜柑酒」は、有田みかんの最高級ブランド「田村みかん」を含めた有田地方厳選のみかんのうち糖度11.5?13度の素材にこだわり、贅沢にも丸ごと絞っているため、甘みと酸味の絶妙なバランスが堪能できます。また、「柚子酒」は「日本三美人の湯」で有名な龍神村で栽培される柚子を使用。あえて果実や果皮の澱ごと瓶詰めしているため、ふわっと香る柚子本来の華やかな風味を楽しむことができます。
おすすめの飲み方について松村さんは「ストレートやロックが最高においしいですよ。アルコール度数6%と日本酒の半分以下なので、これからお酒をたしなみはじめる方にもおすすめです」と教えてくれました。実際飲まれた方からは、飲みやすい!果実味がすごい!といった声をいただくことが多いそうです。
喜びのある未来に繋がるきっかけを贈りたい
最後に、返礼品を介して世に届けたい想いを尋ねました。「和歌山っていいところ!そのことをお伝えしたいです。僕は大阪から移住したので、海・山・川があり自然の恵みが豊かな和歌山の魅力に触れ、こんなに素晴らしい地域があることをどうして今まで知らなかったんだろうと思い知らされました。130年以上続く酒蔵として、うまさだけにとどまらない、喜びのある未来に繋がるきっかけまでお届けし、地域に恩返しができたら嬉しいです」。そこには、スローガン「うまさの先へ」に通ずる想いが詰まっていました。
世界を統一する酒界の一統たれ
驚いたことに「世界一統」の名付け親は、第8・17代内閣総理大臣であり早稲田大学の創立者でもある大隈重信さんだそうです。同大学出身の2代目・蔵元が、大隈さんに自社の酒を振る舞って酒名の選定をお願いしたところ、その味を大変気に入り、「世界を統一する酒界の一統たれ」との意味を込めて「世界一統」と命名。その後、社名を酒名と同じ「株式会社 世界一統」に変えたといいます。
現在では国内だけでなく世界からも次々と注文が入っている株式会社 世界一統の名酒。世界を統一する酒界の一統の座に磨きをかけるべく、今日もまた伝統を守りつつ飽くなき挑戦が続くことでしょう。
近畿支部(和歌山県和歌山市担当) / 前田 有佳利(まえだ ゆかり)
全国200軒以上のゲストハウスを旅する編集者。WEB「ゲストハウス情報マガジンFootPrints」代表。書籍『ゲストハウスガイド100 -Japan Hostel & Guesthouse Guide-』著者。和歌山市在住。理想の商店街をつくる2日間のマーケットイベント「Arcade」や「和歌山移住計画」のメンバー。
対岸にある日本酒BARでは、世界一統のお酒を味わうことができます。和歌山市にお越しの際はぜひ。