ジギングロッド「LOGICAL」はここで作られている!
高知市長浜工業団地に社屋を構える「ディーパース・ファクトリー」。たくさんの工場が並ぶ団地の中で一際スタイリッシュなこの建物の中で作られているのは、「メタルジグ」といわれる擬似餌とそれを使った釣り、「ジギング」用の釣りざおです。高知県といえば、「桂浜」「カツオ」「太平洋」と連想されるほど海が身近にある場所。中でも、世界ジオパークにも認定されている室戸市の室戸岬、だるま夕日で有名な土佐清水市の足摺岬は、黒潮海流の恵みを受け、カンパチ、ブリ、マダイ、キンメダイなど高級魚が豊富に集まる海域です。
今回紹介するのは、大物狙いの釣りにオススメの釣竿!ご自身も釣りが好きという課長の西岡 新(にしおか あらた)さんにお話を伺ってきました。
魚を持ち上げるためではなくメタルジグを動かすための釣りざお
ディーパース・ファクトリーでは、「DEEP LINER(ディープライナー)」というブランドを主力に釣具を展開しています。取材したのは、その中でもジグをナチュラルにコントロールすることを目的に開発した「LOGICAL」シリーズ。釣り未経験者の私では、一般的な釣りざおと何が違うのか、正直見ただけではわかりませんでしたが、お話を聞いていくとそもそも釣りざおの使い方に対する考え方が全く違うものでした。
一般的な釣りざおのイメージは、かかった魚と格闘しながら釣り上げられるだけのパワーのあるものが良いという発想になりがちですよね。でもLOGICALは、ナチュラルなジグの動きを魚にしっかり見せて食わせることを第一に考えて作られたものとのこと。「竿の反発力を活かしていかに自然な動きが出せるかが大事なんです」と西岡さん。また、実際にLOGICALを使って釣りをする場合、海上から100~150m、時には300mも深いところへジグを落とします。真っ暗な海の中、ジグに魚が触ったかどうかは手元の感触のみが頼り。その感触を糸を通じてさおがきちんと伝えられるよう、海からの情報を得るための道具として、釣りざおを設計しているんだそうです。
魚を掛けるまでの「感度」を重視
海からの情報とひとくちにいわれても、いまいち想像ができませんが、波の揺れではなく、魚がジグを触った時に「コツン」という感触や「ガサガサ」という感じが伝わってくるんだそうです。
100m以上も先にあるジグからそんな繊細な感覚が伝わってくるの?と不思議に思いましたが、「釣りざおを動かす中で、魚がジグを追いかけながら近くを通るとそこに水流が発生するので、感触として急にフワッと軽く感じる瞬間がある。そういった深海の情報をいかに細かく感じ取ることができるのかが大事なんです。最終目的は魚を釣ることですが、そのための一つの要素として、いかに海底からの情報を伝えるか、いかにナチュラルにジグを動かすことができるか、それが重要なんです」と話してくれました。
釣り好きが高じて遊漁船業、そして釣具メーカーへ
同社社長の東村真義(ひがしむらまさよし)さんは、元々会社員でした。自身の楽しみのひとつとして釣りをしていましたが、いつしか釣りに関わる仕事をしたいと思うようになり、2001年に遊漁船を開業。東村さんの故郷・室戸を拠点に、「お客さんに魚をたくさん釣らせてくれる船長」として、クチコミでその評判が広がっていきました。
そんな社長に転機が訪れたのは開業4年目の2005年、関西を中心に活動しているプロアングラー・佐藤統洋(さとうのりひろ)さんとの出会いでした。
「スローピッチジャーク」と出会い、釣具の開発がスタート
このプロアングラー・佐藤さん、「スローピッチジャーク」というリールの操作とロッドの反発力を活かしてジグを動かし、魚に食わせる技法や、道具に対する考え方を編み出した知る人ぞ知るすごい方。遊漁船を経営しながら、お客さんにもっと簡単に楽に釣らせてあげたいと思っていた東村社長は、佐藤さんの説く「スローピッチジャーク」の考え方に感銘を受けました。これをもっとみんなに知ってもらいたいと考えましたが、問題が浮上。高知の海は太平洋側で黒潮に近いこともあり、豊富な魚種に恵まれている代わりに、海流の変化が激しく、従来の製品は高知の海域では使い物にならなかったのです。
このことがきっかけとなり、ジグの開発に着手。その後、たくさんのジグを世の中に出してゆく中で、「これらのジグをもっとうまく操れる道具がほしい」と、さらに釣りざおの開発をスタートさせました。こうして出来上がったのが、現在のジギングロッドです。
徹底した品質管理のもと全てを工場内で手作り
実際に釣具を作っているところを案内してもらえるということで、最初に見学したのはジグの塗装作業。30gのものから、大きいものになると1500gのものまで、幅広いサイズ展開をしていて、どれもカラフル!定番サイズといわれる600gのメタルジグを持たせてもらいましたが、ずっしりと重く、これを水中で操るということは、確かにさおも特別なものでないといけないんだろうと改めて感じました。
こちらは塗装後、乾燥のためにたくさん吊り下げられている製品。なんだかかわいいですよね。
緊張感のある、釣りざおの製造作業室
続いて案内していただいたのが、お待ちかねの釣りざおの製造作業室。ここでは、スタッフさんが糸を巻き付ける作業の真っ最中。釣りざおに使う薬品などは、湿度や温度で乾く時間にも変化が出てくるので細かな管理が要求されるそうです。また、できるだけナチュラルにジグをコントロールするために、綿密な設計のもと制作しています。スタッフの皆さんも釣りをするそうで、作業に集中しながらも、「自分たちが作った釣具でたくさんの釣り人たちが笑顔になってくれることが一番の喜びです」と教えてくれました。
クチコミで広がるディープライナーユーザー
製造作業室を出ると、そこには出荷待ちの商品がズラリ。現在は、高知だけに留まらず全国の釣具店と直接取引をしていますが、やはり影響が大きいのがクチコミ。東村さんが遊漁船業の拠点にしている室戸は、釣りをする人の中では全国的に有名な釣り場で、いつか行ってみたいと憧れる人もいるほど。そんな釣り人の聖地で「この人が船を出せばたくさん釣れる」と有名だったのが東村さん。その船長が開発した商品ともなれば、欲しいと思うのは歴然ですよね。
今回紹介したLOGICALは、長さ違いで3パターンを発表していて、1パターンにつき竿の反発力を変えて適合ジグの違う各11モデルを展開しています。一度使ったら大体3~5本くらいを購入する人がほとんどで、同パターンの全モデルを集める強者もいるんだとか。
高知の海から釣りの楽しさを世界に広げていく企業へ
「一口に釣りといってもいろんな釣りがあって、気軽に地元で釣ったり、浜や堤防で釣ったりするのも『釣り』です。でも、高知って船に乗って10分も走れば、すぐに深い海域にたどり着ける魅力的な場所。飛行機に積み込むには大掛かりな釣り道具でも、車に載せて本州からだって来ることができます。仲間と相乗りし、そのまま海に行けば10分後にはもう釣りがスタートできる環境なんです。ただ、船を出すということはそれなりに準備や費用もかかってくるので、やっぱり大物を狙いたくなりますよね。釣りの楽しさを知ってほしい、どうせなら大物を狙ったりたくさん釣ったりしてもらいたい。だったら釣れる道具があればいい。そんな気持ちが詰まった商品なんです」と西岡さん。東村社長をはじめ、ディーパース・ファクトリーの皆さんの想いはその一点にあるんだなと改めて思いました。
「今の釣りざおに満足していない」「名前は聞いたことあったけれどまだ持っていない」。そんな釣り人の皆さんにぜひ手に取ってもらいたい逸品です。できれば、この釣りざおとともに東村社長の遊漁船に乗り込んでみてくださいね!