豊穣の海に面し、漁業がさかんな能登町
日本海に三方をぐるりと囲まれた石川県は、海の幸の宝庫。能登半島の周辺では南からの対馬海流と北からのリマン海流が交わり、また海底地形が大陸棚から深海まで変化に富んでいるため、さまざまな種類の魚介がすんでいます。
今回訪ねたのは能登半島の先端、富山湾に面する能登町小木地区。古くから「天然の良港」として栄えてきた港町です。小木港の沖合は水深が急に深くなっており、港を出てまもなく水深1000mに到達。ここが、ご紹介する返礼品「紅ズワイガニ」のすみかとなっています。
深海にすむ紅ズワイガニのおいしさとは
こちらが小木産の紅ズワイガニ。紅色の体と長い脚が特徴です。一見すると、ズワイガニとよく似ていますよね。
分かりやすい違いは体の色。生きたズワイガニが茶色であるのに対し、紅ズワイガニは鮮やかな赤色をしています。すんでいる場所も異なり、ズワイガニは水深200~500m、紅ズワイガニはさらに深い500~2000mに生息しています。漁期はズワイガニより長く、小木港では毎年9月から6月まで。カニは冬のイメージがありますが、小木産の紅ズワイガニは長い期間楽しめるのも魅力です。
紅ズワイガニの魅力は、なんといってもみずみずしさ。深海の水圧から身を守るため体に水分を多く含み、身はとても柔らかくジューシーです。上品な甘みも紅ズワイガニならでは。丸ごと1パイお届けするこちらの返礼品では、みずみずしい身も濃厚な味噌も余すところなく存分に堪能できます。
カニ好きを魅了する、小木産の紅ズワイガニ
今回の返礼品を届ける「まると魚類」は小木地区でイカ釣りと紅ズワイガニ漁を営む水産会社。紅ズワイガニは漁獲から加工まで自社で一貫生産しています。
「紅ズワイガニ漁を始めたのは30年ほど前なんですが、当初は地元の方向けの商売だったんです」と話してくれたのはスタッフの宮崎千穂さん。新鮮な魚介を食べ慣れた地元の人に、ごまかしは絶対に通用しません。「出発点は“いいものを安くお届けする”というスタンスで、それは今でも変わらないんですよ」。
品質の良さとおいしさが口コミで広がり、ふるさと納税の返礼品としても人気を集めるようになった現在はリピーターが続出。他県のカニ産地に住む人が「いいカニを送ってくれるから」と再度注文してくれたこともあるそうです。カニを食べ慣れた人をも魅了する小木産の紅ズワイガニ。どのように皆さんのもとに届くのか、これからお伝えしましょう!
陸揚げしたら即、海洋深層水で釜ゆで
午後3時半。早朝に出漁した船が港に戻ってきました。ゆっくりと岸壁に横づけするやいなや、陸揚げが始まります。甲板に積まれた箱の中には氷詰めの紅ズワイガニがぎっしり。鮮やかな赤色の体が輝いています。
船から軽トラックの荷台へと移されたカニは、港のすぐそばにある加工場へとあっという間に運ばれていきました。加工場ではすでに大きな釜に湯がたぎり、もうもうと湯気を上げています。ここへ獲れたてのカニを投入。陸揚げから釜ゆでまでのスピードの速さに、立ち会った私も後をついていくのがやっとです。
ゆで時間は約30分。ここでようやく、釜ゆで担当の方に話を聞くことができました。「ミネラル豊富な海洋深層水を使ってゆでています。そのまま使うと塩分濃度が高いから、カニのうまみを引き出す濃度に調整するんですよ。ゆですぎると味噌が溶け出してうまみが逃げていくから、上げるタイミングも大事やね」。
熟練の技でゆで上げたカニは至福の味わい
さあ、カニがゆで上がりましたよ!すぐに選別作業に入ります。サイズごとに分け、脚が外れたものや味噌が溶け出したものは、ここではじかれます。素人目には何の問題もなく見えるカニですが、理由を尋ねると「これは重さが足りんわ」「殻が柔らかい」と妥協は一切ありません。
こちらが厳しい選別に合格した紅ズワイガニ。身がしっかり入って、サイズも重さも十分。獲れたてのうまみを閉じ込めたカニたちはこの後、熱を冷まし、皆さんのもとへと出発します。
「ゆでたてのカニ、食べてみて!」との言葉にひと口ほおばると…この上ない美味!肉厚の身はプリッとして柔らかく、みずみずしさが口いっぱいに広がります。ほどよい塩加減の中に際立つ甘みが格別。「ほら、こうやって関節の上で折って引っ張るとスルスルッと身がとれるよ」。紅ズワイガニは水分が多いため身離れが良いことも特徴です。
手でパキッと折ってもいいですし、こうして脚の関節の上下をハサミで切っても、きれいに身が取り出せますよ。
本当にいいものを届けるために譲れないこと
まると魚類のモットーは「いいものだけを届ける」こと。宮崎さんはこう話します。「船上でまず選別して、ゆでてから選別して、そして箱詰め前にも選別をします。手間はかかりますけど、やっぱりおいしいカニを届けたいですから」。
こだわりは選別だけではありません。お届けはすべて冷蔵便です。「紅ズワイガニは水分が多いということもあって、冷凍したら解凍時にうまみが逃げてしまうんです。獲れたて、ゆでたてを冷蔵便でお送りするので、届いたらすぐに召し上がっていただくのが一番美味しいと思いますよ!」。
能登の海から鮮度にこだわり直送
鮮度が命の紅ズワイガニ。水揚げからゆで終えるまでのスピードには、本当に圧倒されました。漁の方法は、餌を付けたカゴを海底に沈めて漁獲するカニかご漁。カニを傷つけることなく水揚げできます。しかし天候に大きく左右されるうえ、水深1000メートルを超える深海から100個以上のカゴを引き上げるわけですから、その苦労は計り知れません。
海がしけると漁はできませんから、お届けまで時間がかかることもあります。それでも獲れたての味わいをそのまま楽しんでもらいたいという思いは譲らないのが、まると魚類。皆さんも、この紅ズワイガニを味わった時、きっと彼らの思いに納得するはずです。漁獲ができ次第、順にお届けしますので首を長~くしてお待ちください!
中部支部(石川県能登町担当) / 森井 真規子(もりい まきこ)
石川県小松市在住のライター。航空自衛隊、海外生活を経て故郷にUターン。金沢のライター事務所で修業を積み、2005年からフリーランスで活動しています。出会う人やモノ、コトのストーリーを丁寧にすくいあげ、分かりやすい言葉で伝えることを心がけています。
能登町は変化に富んだ海岸線が続く風光明媚なまち。全国有数のイカ水揚量を誇るイカのまちとしても知られます。