讃岐うどんの聖地、香川県坂出市
讃岐塩田での塩づくりや、小麦の生産がさかんだった香川県坂出市。上質な塩と小麦が採れることはうどんづくりに好都合でした。次第にうどんづくりをはじめる人が増えていき、讃岐うどんの文化が醸成されていくことに。今でも香川県内に4社ある製粉会社のうち3社が坂出市に残っているほどです。
讃岐うどんが盛り上がるきっかけのひとつとなったのは、岡山県倉敷市と四国の香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋が開通したこと。県外からたくさんの観光客を招き、讃岐うどんのさらなるブームを呼び起こしました。
香川の人気製麺所のうどんがセットに
そんな讃岐うどんの聖地、坂出市の人気店「がもううどん」と「日の出製麺所」のうどんを自宅で楽しめるセットが今回の返礼品です。香川の名店の食べ比べがご自宅で楽しめます。家族や友人と麺のゆで加減やトッピングのアレンジを試せば、きっと盛り上がることまちがいなし。
田んぼや民家に囲まれながら食べるうどんは「ほっとする」味
JR予讃(よさん)線の鴨川駅から歩くこと15分ほど。田んぼや民家に囲まれた場所にたたずむのは「がもううどん」。取材時は平日の午前10時から店の外まで列ができ、ひっきりなしにお客さんが訪れることに驚きました。がもううどんは午前8時30分から営業しており、朝ごはん代わりにうどんを食べに来る地元のお客さんも多いのだとか。店内は12席だけですが、店先の駐車場に椅子が並べられ、外で食べることもできます。眺める景色は民家や田んぼ。絶景というわけではないけれど、坂出の日常に潜り込んだようで、そこがかえって観光客を和ませているように思えます。
かけうどんを注文して、一口すすってみると、まず、やわらかさがありながらほどよいコシを麺に感じました。その後にやさしい味わいのだしが染み入り、なんだかほっとする味。シンプルだけれど奥行きのあるおいしさが「また食べたい」とファンを呼んでいるのかもしれません。
店が落ち着くタイミングを待って、がもううどんの蒲生諭志(がもうさとし)さんにお話を伺いました。がもううどんの創業は1959(昭和34)年。諭志さんと、諭志さんの父(2代目)、兄(3代目)の3世帯で営んでいます。がもううどんの1日のはじまりは深夜0時30分頃から。諭志さんの父と諭志さんが麺を作り、兄がだしと天ぷらを担当します。最初に諭志さんの父が練り機を回し、1時頃から諭志さんが加わり、製麺を始めます。それと同時に諭志さんの兄が天ぷらやあげを作っていくのです。
麺づくりを続ける中で、どんなこだわりがあるかと諭志さんに尋ねたところ、「特になし!」と即答。しかし、少し経って「『変わらない麺づくり』が難しいんですよ」とつぶやきました。うどんの材料となる中力粉にはその都度いろんな品種が混合され、作るたびに加水など加減を変える必要があるのです。麺づくりには職人の見えない工夫や努力が詰まっていることを知りました。
小麦粉の産地や品種ごとに麺を作る、製麺所ならではのこだわり
日の出製麺所はJR予讃(よさん)線の坂出駅から歩くこと10分ほどの大通り沿いにあります。開店前にも関わらず店の前で開店を待ち、少しずつできていく人の列。開店前だった取材中にも、地元の常連客が麺を買いにのれんをくぐる姿を見かけました。
日の出製麺所が創業したのは1930(昭和5)年。製麺業が本業のため、朝2時から始まる麺製造と卸配送を終えた、11時半から12時半までの1時間のみ飲食店営業をしています。1998(平成10)年頃まではうどんの卸売りや店頭での玉売り(調理済みのうどん玉)、生うどんの手土産や贈答品の販売だけを行っていましたが、その頃から「店でうどんを食べたい」という声がありました。当時はずっと断っていたものの、ある日どうしても断れず、店でうどんを出したことが今のような営業形態のはじまりでした。
日の出製麺所では、製麺所ならではのこだわりで、小麦粉の産地ごとの麺を味わえるのが特徴です。開店すると、順番に地粉の「さぬきの夢」、オーストラリア産の「ASW」など粉ごとに作った麺が客に出されていきます。事前に選べるのは、「あつい」「ぬるい」「ひや」「釜玉」。私は三代目店主の三好修(みよしおさむ)さんが好きなゆで方だという「ぬるい」を頼んでみました。ネギをトッピングし、だし醤油をまわしかけ、いざ食べてみると、表面はやわらかく中はもっちりとした食感。トッピングはシンプルにしましたが、小麦の豊かな風味を味わうことを楽しめました。
「ぬるい」麺とは麺をゆがいてから、人肌温度の水ですばやく冷やした状態のうどんのこと。簡単に冷水を手に入れることができなかった昔の夏場の出来立てのうどんです。「今でもぬるいうどんを食べると、出来たてやなと感じるんです」。昔から通う常連客の中には今でも決まってぬるいうどんを頼む人もいるのだとか。
香川県民のソウルフードをご自宅で味わって
最後に返礼品への思いを三好さんに尋ねると「香川にしか店舗を構えておりませんので、香川でしか食べられない味をご自宅で楽しんでいただけたらと思います。香川出身の人には地元のうどんを食べて故郷を懐かしんでほしいですね」と話してくれました。
黄金色に光る小麦畑や、青々とした田園が広がる美しい風景を思い浮かべながらうどんをすすると、香川の「ほっとする味」をより豊かに味わえるかもしれません。取材を進めるなかで、がもううどんの蒲生さんや、日の出製麺所の三好さんの正直さや、あたたかい人柄に触れ、「また食べたくなる」「また店に行きたくなる」秘密はその人柄から醸されているように感じました。
四国支部(香川県坂出市担当) / 坊野 美絵(ぼうの みえ)
大阪生まれ。旅で訪れたことをきっかけに、2013年に香川県小豆島に移住。現在は文と写真で魅力を伝えることを大切にライターとして活動しています。香川県を中心に観光・医療・事業承継・農業などテーマはさまざまにインタビュー記事を執筆。私生活では暮らしに根ざした手仕事を、少しずつ実践していくことを楽しんでいます。
今でも小麦畑が残りのどかな風景が広がる坂出市。そこで暮らす人たちの素朴な人柄に触れるうちに、まちごと好きになってきました。