森の中の秘密基地!アトリエちいくで生まれる知育玩具
三重県の北西部に位置する伊賀市。街の中心部、上野公園には伊賀上野城や伊賀流忍者博物館、松尾芭蕉の記念館などがあり、県内外の観光客を楽しませてくれます。また、伊賀市は面積の約60%を森林が占めており、緑豊かな環境も特徴のひとつです。
市街地から少し車を走らせれば、豊かな自然に出会える伊賀市から、今回ご紹介するのは、アトリエちいくの「知育玩具」です。アトリエちいくでは「0歳からの木のおもちゃ」をコンセプトに、子どもが安全に楽しめるようにと、手触りと音を大切にした玩具をつくっています。伊賀の山奥にある、隠れ家のような工房に行ってきました!
緑豊かな伊賀市の国道165号を進むと、アトリエちいくの看板がありました。車を停めて、自然の中につくられた階段を上っていくと、まるで秘密基地のような、小さなログハウスを発見。たくさんの木々に囲まれた工房は、入る前からワクワクします。
ドアを開けてみると、中には知育玩具をはじめとした木のおもちゃや雑貨がたくさん並んでいます。奥には作業場があり、知育玩具がつくられている様子を見ることもできます。
子どもの成長をそばで見守りたいとの思いで工芸教室をスタート
今回お話を伺ったのは、アトリエちいくの菊岡哲(さとし)さんです。前職は調理師でしたが、結婚から9年後に退職。ものづくりが好きだったこともあり、独学で木工のものづくりを始めました。
32歳の時には、待望の長男が誕生。「もう一度調理師として働く道もありました。ただ、調理師の勤務時間は、かなり不規則です。子どもの成長は、あっという間。子育ての時間を大切にしたい、成長する姿をそばで見ていたいと、自宅で糸鋸(いとのこ)教室を始めました。背中を押し、今もサポートしてくれる妻に感謝です」と笑顔で語る菊岡さん。
木工を始めた当初は椅子や机をつくっていましたが、口コミで評判を呼び、注文が入るように。また、自宅で開催していた糸鋸教室も人数が増えて手狭になったことから、より身近に木を感じられる場所で工房を開きたいと、2008年、現在の場所に「アトリエちいく」をオープンしました。さらに子育てをする中で「もっと子どもに喜んでもらえるものをつくりたい」という思いが強まっていった菊岡さんは、子ども用のおもちゃをつくるようになります。
菊岡さんは、子どもが遊ぶ姿を想像し、実際に手を動かしておもちゃをつくります。試行錯誤の連続ですが、納得のいくものができて初めて図面に起こし、規格を決めていくのです。考えるよりも先にまずつくるやり方は、ものづくりを始めた頃から今まで変わっていません。
こだわりの手磨き、子どもが喜ぶ「音」への意識
今回の返礼品に使われているのは、全て自然乾燥の木材です。特に冬場に伐採した木は締まりが良く、乾燥後も膨らまないと語る菊岡さん。だからこそ、冬にできるだけ多くの木を仕入れるようにしています。また、木は種類によって音の響きに違いが出るため、音を鳴らして遊ぶおもちゃには、美しい音が鳴る木を選んでいます。
さらにこだわっているのは、最後の仕上げです。指の感触で何度も触り心地を確認しながら、納得がいくまでペーパーで磨き続けます。機械を使わず、手作業でおこなうからこそ、細かな部分まで調整ができるのです。おもちゃのことを説明する菊岡さんの優しい口調からは、本当に木と子どもが好きだということが伝わってきました。
子どもの成長と親の喜ぶ姿がものづくりの喜びに
工房に並ぶアイテムは、基本的に着色していません。そこには菊岡さんの「子どもが自由に色を想像できるように」との思いがありました。
アトリエちいくには県内だけでなく県外からも、多くの子どもたちがやってきます。「子どもはいつも、僕の想像を超える遊び方を思いつきます。子どもが楽しく遊びながら学んでいく。その姿を見て、親御さんが喜んでくださる。その姿を見て、また僕も嬉しく思い、新しいおもちゃをつくろうと思うんです」。
木のおもちゃから三重の森に思いを馳せて
現在、菊岡さんは三重県のみえ森林教育ビジョンの一環として始まった「森のせんせい」に登録。県内の小中学校に出前授業に出向き木工教室や糸鋸教室を開催しています。「木の良さをもっと広めたい、知ってほしいと思うと同時に、自ら手を動かしてつくる楽しみも感じてほしい」と菊岡さんは語ってくれました。
作家さんの想いがたくさん詰まった木のおもちゃ。ぜひ大切なお子さんやお孫さんへのプレゼントに選んでみてください。きっと成長を見守ってくれる素敵な存在になるはずです。