美唄から全国へ、福よしのおいしさを届ける
北海道美唄(びばい)市は、札幌と旭川の間、空知(そらち)地方の中央部に位置する街です。現在の基幹産業は農業が中心ですが、かつては石狩炭田の一部で豊富な石炭を産出する道内有数の採炭地でした。日本のエネルギーを支えてくれた炭鉱マンたちに愛されたのが「美唄焼き鳥」です。今でも市内には焼き鳥屋が軒を連ね、香ばしい香りを漂わせています。
今回、返礼品として紹介する「もつそば」は、老舗焼き鳥店「美唄焼き鳥 福よし(以下、福よし)」の看板メニュー。炭火で丁寧に焼き上げたもつ串と、オリジナルの鶏だしそばの組み合わせは、他では味わえない逸品です。もつそば誕生には、美唄らしい遊び心が込められています。「福よし」の村上亮太店長に話を伺いました。
美唄焼き鳥は、昭和30年代に市内で飲食店「三船」を開業していた、三船福太郎氏によって提供されたのが始まりと言われています。開拓の時代、国から支給されたつがいの鶏を各家庭が大切に育て、特別な日にその1羽を余すところなく頂く食文化がありました。食べやすいように肉や内臓が一本の串に刺されたモツ串が、いつしか「美唄焼き鳥」と呼ばれるようになったと伝えられています。
レバーや砂肝、キンカンと呼ばれる卵巣などの内臓と肉、そしてタマネギをひとつの串に刺し、塩・コショウで焼き上げてるのが、美唄焼き鳥。串元には皮を使い、鶏のうま味を一番感じるモモ肉を最後に刺します。
一般的な焼き鳥は柔らかい若鳥を使うのに対し、鶏の有効活用を目的に生まれた美唄焼き鳥は、親鳥を使用。歯ごたえがあり、噛みしめるほど旨味が広がります。
「串一本に鶏一羽」がうたい文句の「福よし」
「福よし」は、約80年前に美唄市内に開店しました。「串一本に鶏一羽」のうたい文句で地域に愛されている老舗です。美唄では年末年始やお盆に家族そろって美唄焼き鳥を食べる食文化があり、持ち帰りの注文が殺到するそうです。その一方で、諸事情によって帰郷できない人たちもいます。「美唄を離れてしまった方々にも福よしの味をお届けしたい」、「なつかしい味で美唄で暮らしていたころを思い出してほしい」という気持ちから返礼品に選ばれました。
お客さんが考案しメニューになった「もつそば」
この福よしで、お客さんのアイデアから誕生したのが「もつそば」です。昭和30年代、美唄は炭鉱で賑わっていました。毎日の作業は重労働で大量に汗をかくため、炭鉱マンたちは甘くて濃い味を好んだそうです。こうした理由から美唄の焼き鳥屋では、鶏ガラで出汁を取った濃厚な甘めのつゆのそばが提供されていました。お酒を飲んだ後の〆の一杯としても最適だったようです。
あるとき、お客さんが焼き鳥をそばに入れて食べたところ、炭の香りや鶏の香りがつゆに溶け出して、大変美味しくなることが分かりました。その後もまねをする人が続出。いつしかお店のメニューに加えられるようになったそうです。「今となっては、いつからメニューに加えられたのか分かりません」と、村上店長は言います。福よしの歴史を感じさせてくれるエピソードです。
ふるさとの味を真空パックで全国へ
返礼品の焼き鳥は、1本ずつ炭火で焼き上げられ、すぐに工場で真空パックされています。風味はお店で食べる焼き鳥そのもの。香ばしさがたまりません。そのほか、北海道産のそば粉を使用した麺と、鶏ガラでダシを取った濃厚な味のそばつゆがセットになっています。電子レンジやコンロで簡単に調理できますが、ひと手間かけると、さらにおいしくなりますよ。
水分が飛ばないよう、強火で焼いてうま味を閉じ込めている焼き鳥は、ご家庭で召し上がる際、フライパンに調理酒を入れて、軽く蒸し焼きにするとおいしくなります。焼き鳥とつゆは同時に調理して温度のバランスをとってくださいね。麺は、茹ですぎないように注意してください。最後にどんぶりに焼き鳥を入れると出来上がり。炭や鶏のうま味が溶け込み、お店のおいしさが味わえます。
返礼品には、福よしのスタッフTシャツが付いてくるユニークな仕掛けも。お客さんからの要望が多く、商品化されました。これを着て調理すれば、おいしい一杯が完成しそう。普段使いにしても話題を呼びそうですね。
美唄とみんなを結ぶ懸け橋になりたい
最後に村上店長に、福よしの返礼品をご検討のみなさんへのメッセージを伺いました。
「美唄には、日本一長い直線道路、廃校になった旧栄小学校を活用した彫刻美術館、青の洞窟温泉、約7万羽ものマガンが飛来する宮島沼(ラムサール条約登録湿地)など、様々な魅力にあふれています。焼き鳥やもつそばを通じて、美唄に関心を持ってくれたら嬉しいです」
北海道支部(北海道美唄市担当) / 吉田 匡和(よしだ まさかず)
札幌市出身、在住。社会福祉士の資格と経験を持つ異色の「おでかけ系ライター」。2016年にフリーライターに転向し、2017年に個人事業所「ブーレオルカ」を設立しました。「楽しさが伝わる」、「すべての人に有益である」、「記憶に残る」の3つを信条に執筆しています。
美唄市は焼き鳥の香りが似合う街。炭坑労働者で賑わった面影は少なくなりましたが焼き鳥の香りは、今も変わらず街に漂っています。明かりがともるお店に後ろ髪を引かれながら、美唄を後にしました。