長崎麺文化を背景に生まれた、3分でできるお手軽フード
「ちゃんぽん」や「皿うどん」などの独自の麺文化が定着している長崎県。今回の返礼品は島原手延べ素麺の乾麺ときのこ具材、スープとかやく、薬味がセットになった「養々麺」です。「養々麺」とは、長崎県で営む「雲仙きのこ本舗」のオリジナル麺。お湯を注げば3分でおいしい島原そうめんがきのこと一緒に食べられるというお手軽な商品として、平成12年から販売されています。
おいしいきのこを島原から全国へ。2代目社長 楠田喜熊の思い
肥沃な土壌と2つの海に囲まれた、豊かな農産物や海産物を誇る島原半島。楠田 喜弥人(くすだ・きやと)さんがこの地に雲仙きのこ本舗を創業したのは昭和32年のことでした。当時はきのこの人工栽培が初めて長野県で始まった頃。その技術を長崎県でも広めようと、きのこの生産組合が誕生しました。楠田さんはその設立にも寄与したといいます。
きのこの人工栽培は珍しい技術だったため、当初は販売に苦戦したといいます。しかし、人工栽培だからこそ食べられる新鮮なきのこのおいしさに感動した創業者と2代目・楠田 喜熊(くすだ・よしくま)さん(写真上)が「こんなおいしいものが世の中に広がれば、お客さまもきっと喜んでくれる」という思いで生まれたのが雲仙きのこ本舗です。
「おいしい」と「体にいい」をどちらも叶えるために
きのこは食物繊維やビタミン類などが豊富なのに低カロリーな食材です。雲仙きのこ本舗は、この素晴らしい食材を取り扱いながら、健康をテーマに「美味養生(びみようじょう)」という言葉にこだわった食品づくりを行っています。これは「おいしいことは当たり前、さらに体に良いもの」をお客様に届けたいという想いが込められています。
雲仙きのこ本舗では「無農薬栽培」を徹底し、できるだけ長崎、そして九州で生まれた、厳選した原材料を使用しています。
加工しても「島原手延べ素麺」のおいしさをお客様に
そんなからだ想いの雲仙きのこ本舗から生まれたのが、「養々麺」です。ヘルシーで体に良い「きのこ」と、島原半島の名産品である「島原手延べ素麺」をかけ合わせて販売してみては、という着想から商品開発ははじまりました。しかしアイデアを形にするまでには、2年もの間苦労と試作の日々があったといいます。
商品化にあたり重要だったのは、「島原手延べ素麺」の手延べならではの食感を、お湯で戻したあとも残せるかどうかでした。島原で作られる手延べ素麺は、1本の生地を薄く延ばし、乾燥させて短く切ったものを販売しています。1本の生地から作ることで硬さが均一になり、のどごしや弾力の良さといった品質を一定に保てるのだといいます。しかし養々麺の場合は、一度茹でたものを乾燥して商品化します。島原手延べ素麺ならではの品質を保ったままお客様の元に届けるためには、麺の粉の配分や加工技術、湯がき時間や適切な温度、乾燥時間に至るまで、いちから試行錯誤する必要があったのです。
正解のない日々、試行錯誤の末に
試作はすべての工程に開発メンバーが張り付き、調理や配分によって変化する品質をチェックしながら、最もよい状態を見極めていきました。麺作りに使用する粉は、何をどれくらい配合するのか、どのように加工するのかを何パターンも試し、メンバーが納得できる基準を決めていったといいます。
試作中はたった数秒で食感や味が変わるため、開発メンバーは連日早朝から夜半まで試作を続けたそう。また最適な加工技術を求め、北海道の製麺会社まで研修に足を運んだこともありました。
熟成・乾燥に10日間。手間ひまは惜しまない
ここからは養々麺の現在の製法をご紹介しましょう。まず、島原手延べ素麺を専用の機械で茹でます。麺を機械に入れ一定時間が経つと、手前から奥へ麺が自動で移動。こうして茹でる場所を何度か変えていくことで、茹で上がり時間や温度を均一にすることができ、加工後も島原手延べ素麺ならではの品質を味わえるようになりました。
茹でた麺は10日間もの間、乾燥・熟成させます。これも品質を保った即席麺を作るために重要な工程のひとつ。開発当初は乾燥する時間を変えながら、麺の熟成具合や味をこまめにチェックしていたそうです。
少しのアレンジでこんなおいしい食べ方も
こうして、試行錯誤と情熱によって生まれた養々麺。おいしい食べ方について、商品開発担当者に聞きました。養々麺はにゅうめんのように温かいままいただくこともできますが、夏場は冷やして食べてもおいしいといいます。ひきわり納豆やネギ、温泉卵を加えてアレンジしたり、おぼろ昆布やのりを添えて食べたりするのもおすすめだとか。
養々麺のファンである筆者は、夏に冷たいものを食べすぎたときに、あえて温かいにゅうめんにして食べています。また小さな子どももたくさん食べてくれるので、仕事で夜遅くなったときなどにも利用しています。調理に手間がかからないので、県外へのお土産としても重宝しています。
五感で長崎を、きのこを楽しめる直営店も魅力
そんな雲仙きのこ本舗の直営店「雲か山か 愛野店」には、きのこや養々麺を楽しめるサービスなど、お客様思いのアイデアが詰まっています。敷地内にはきのこの収穫体験ができる場所があり、購入するだけでなくきのこをとって自宅で料理を楽しむことも。
また養々麺をその場で食べられるランチタイム限定のレストランでは、きのこの炊き込みご飯や天ぷらなど、きのこづくしの料理をいただけます。雲仙の雄大な景色を見ながらきのこ料理を堪能できるのもまた、地元・島原半島を五感で感じてほしいという2代目の粋なはからいの一つ。養々麺が好きになったら、ぜひ店舗に足を運んでみてはいかがでしょうか。
長崎、九州のものを使って地域貢献
地元の名産である島原手延べ素麺で養々麺を作り続けるなど、今後もできるだけ地元の食材を使うことで地域貢献を果たしていきたいという雲仙きのこ本舗。養々麺以外にも、ながさき南部生産組合が作るトマトを使った「冷製トマト麺」や、大分県で生産された梅を練り込んだ「梅そうめん」など、長崎や九州の農産物を使った製品を、世に出し続けています。
乾燥・熟成に10日間を要するなど、手間ひまかかる養々麺ですが、「おいしい商品を作り続けること」に対するこだわりは今後も変わらないと二代目はいいます。さらに知名度を高めて、地元経済に貢献していきたいというその思いが、養々麺のおいしさとともに全国に広がっていくことは、長崎に住む者として楽しみでなりません。
九州支部(長崎県長崎市担当) / 古地 優菜(こち ゆうな)
WEBも紙もできるクラウドフリーライター。奈良県出身、長崎県諫早市在住の2児の母 。ライター活動を軸に、日本ワーケーション協会の理事やHokkaido Design Codeの社員、LINE WORKSアンバサダーなど。地域が活性化してビジネスが回ることで子どもたちに「選択肢の自由な明日」を残す。
養々麺は大好きな地元食です。島原手延べ素麺の食感と程よい味付けのきのこのうまみをご堪能あれ。