近江牛発祥の地で、産地をリードする名牧場
神戸牛、松阪牛に並び、ブランド和牛として名高い「近江牛」。このブランド牛の発祥の地がここ竜王町を含むエリアです。竜王町は滋賀県南部にあり、鈴鹿山系の豊かな水脈に恵まれた土地柄と、丹精込めて育て上げる“近江商人”の気質が合わさって極上の和牛を生み出しています。
そんな近江牛の発祥地で、1975(昭和50)年から近江牛の牧場を営むのが、近江牛の牧場としては最大級を誇る澤井牧場。早々と「農場HACCP」などの認証を受けた近江牛牧場のパイオニアは、「牛と共に」をモットーに掲げています。のどかな田園風景に囲まれた産地をリードする牧場から、近江牛のお礼の品をご紹介します。
良質な脂。だからこそうま味だけが際立つ
こだわりの飼育方法や澤井牧場の思いを伝える前に、まずはどんなお礼の品が届くのか気になりますよね。見てください、このうつくしいお肉のひと盛を。赤身もさしもお見事な近江牛が600グラムも詰まった「焼肉三種盛り」(霜降り、赤身など)です。
バーベキューに澤井牧場の盛り合わせを持参したら、きっと手放しで喜ばれる逸品です。さっと焼いて口に運べば、肉本来のうま味がじゅわ?っと溢れだし、近江牛特有の良質な脂がはかなく溶ける。これぞ和牛最高級の味とコクと風味。なぜこんなにおいしいお肉ができるのだろう??その秘訣を探りに、澤井牧場へ行ってきました。
ストレスフリーの極み!だからこそおいしい
紫色の作業着がばちっと決まっているこちらの方が、澤井牧場の釜増 勇輝(かまます ゆうき)さん。牧場の牛たちを育てる責任者です。
牛舎に入ってみて、まず驚いたのは、飼養されている環境がとてもきれいなこと。早速、釜増さんに質問してみました。
「牛たちがリラックスできる環境を作ってあげることが大切なのですよ。きれいじゃないと精神的なストレスにつながってしまいます。清潔な環境を保つことで牛たちが心地いい状態を保つのです」と釜増さん。そして、そのきれいな環境で牛が地べたにぺったりと座ることも大事なのだといいます。その姿勢は牛が反芻をしているサイン。「リラックスしているか」を見極めるポイントになり、肉質の向上に関わってくるのだそうです。
さらに、牛舎では人工的な温度調整を行わず、自然換気をすることでもストレスを軽減しています。細かな管理は見回りにも。日中だけでなく、深夜にも実施し、牛の様子を丁寧に観察しているのです。
味わいを追求するから雌牛に特化する
澤井牧場の肉牛は、そのほとんどが雌牛です。釜増さん曰く、肉牛は「見た目の雄、味の雌」と例えられるのだとか。「雌牛の肉は融点が低く、口溶けがいいのが特徴です。ただ、肉をスライスしたときの見映えは雄牛の方が勝るんです」。
当然、売り場では、見映えがいい方が求められるわけですが、あえて雌牛を選ぶこの選択からは、目の前の利益よりも味にこだわりたいという生産者の誇りが感じ取れました。
えさを独自ブレンド。成長段階に分けて内容を変える
もう一つ、澤井牧場の特徴は独自ブレンドのえさ。この設備は穀物飼料タンクです。「独自に飼料を作る施設を持っている牧場は多くはないですよ」と釜増さん。えさのベースに、米を発酵させたものなどを入れて独自にブレンドしています。仔牛から大きく成長するまで、ステージごとに餌を変えるというこだわり具合。この大変な手間が、肉の味わいに直結していくのです。
そのほか、鈴鹿山系から流れ込む良質な地下水や、稲藁や飼料に使う米など、徹底して地域資源を活かしていることも、澤井牧場のこだわりです。
おいしいお肉を最高の状態で食べるコツ
産地をみて、澤井牧場の思いを知ったら、届いたものを最高の状態で食べてあげたい!釜増さんに焼き方とおすすめの食べ方を教えてもらいました。
「焼き過ぎないことが重要です。冷凍で届いたものを、冷蔵庫でゆっくり解凍します。焼く少し前に、常温の状態に置き、肉の表面温度を少し上げておくのもポイントです」。食べ方については、「近江牛は味が濃いといわれているので、塩やわさびがおすすめ。もし、タレを絡めてご飯と一緒に食べるのが好きなら、それが一番です」と釜増さん。
近江牛のため、産地のために全体を盛り上げる
澤井牧場は2011年から地元で精肉店も営んでいます。実は近江牛は滋賀県内で消費されることが多いのだそう。地元で愛されているというのはすばらしいこと。でも釜増さんはこんな思いを抱いています。
「国内だけではなく、海外への輸出に力を入れています。いろんな和牛がある中で近江牛がおいしいって感じてもらうことが目標。近江牛はどこの牧場さんも脂の質に自信を持っています。澤井牧場のものを、とはいわずとにかく近江牛を食べてもらって、産地全体が盛り上がっていくのが理想です」
愛情と手間の産物を、風土丸ごと召し上がれ
最後に、竜王町への思いを聞きました。「その昔、別の地域で牧場をしないか、と誘われたこともありました。ここは、近江牛の発祥の地でもありますし、地域一体となって産地を築いているので、この場所でないと牧場を営む意味がないと思っています」
のどかな田園風景の中で、この土地だからこその味わいを、牛への愛情と手間でつむぎだす澤井牧場。竜王町の豊かな風土と思いを丸ごと、味わってみてくださいね。
中部支部(滋賀県竜王町担当) / 山瀬 鷹衡(やませ たかひで)
滋賀県長浜市在住。2017年に地域おこし協力隊として帰郷したのち、イベントの企画やデザイン・ライティングなどを通して、地域の魅力を発見・発信する「まちの編集者」として「うるう」を開業。地域で生きる人たちのそれぞれのストーリーを大切に、見たこと聞いたこと感じたことをお伝えできればと思います。
竜王町は、畜産はもちろん、いちごやぶどうといったフルーツやお米なども盛んに育てられていて、まさにグルメの宝庫です!