"発見!ふるさとグルメ”として特集されました!
全国で愛されるブランド和牛の故郷の地「大崎町」
その名は、大崎牛。全国的に有名なブランド和牛と比べると、あまり耳なじみがないかもしれません。しかし、鹿児島県大崎町の畜産業界には、全国のブランド和牛に質の良い種牛を提供してきた歴史があります。
皆さんが今まで味わった和牛の中にも、もしかしたら大崎町で生まれた牛の遺伝子が入っていたかも?質良し、味良し、生まれ良し。和牛界のエリートともいえる大崎牛の肩ロースバラすき焼き用を、ぜひご自宅でお楽しみください。
古くから牛や馬と暮らしを共にしていた歴史を持つ
大崎町は、県の東側の大隅半島に位置する人口1万2千人ほどの町です。大崎町中央公民館内にある郷土資料展示室には、1864年にまとめられた「牛馬改帳」という江戸時代の農耕仕事の様子が記録された資料があります。この資料によると大崎町では当時、42頭の牛馬が農耕具として飼育されていたそうです。
古くから牛や馬に親しみがあった大崎町の暮らしは、近年の大崎牛のブランド化の動きを知ると、ごくごく自然なことのように感じられます。
大崎町の強みを活かした、新和牛ブランド「大崎牛」の魅力
日本一に輝いた鹿児島黒牛の中でも、大崎町で育てられる大崎牛は、約60年の歴史を持つ羽子田人工授精所と地元の畜産農家が連携して「生まれも育ちも大崎町」をコンセプトにブランド力を高めています。もっとも、こんな風に表現すると「何を当たり前のことを…?」と思われるかもしれません。ところが、全国各地に存在するブランド和牛の中には、その土地で生まれた仔牛ではなく、他の地域で生まれた仔牛を購入し、育てている事例も少なくありません。
一方、大崎町には質の良い種牛を飼育し、その精子を採取して全国の繁殖農家に販売を行っている羽子田人工授精所があるため、文字通り、生まれも育ちも大崎町の和牛を育てることができます。この授精所は、種牛界のスーパースターと呼ばれる「隆之国」を生み出した全国的にも評価の高い名施設。中には「あのブランド牛も、元をたどれば大崎町にゆかりがある」、なんて事例もあるそうですよ。
お客さんと生産者。どちらにとっても親しみやすい大崎牛に
そんな和牛本来のおいしさを持つ大崎牛には、畜産農家をはじめ、たくさんの人の思いが込められています。お話を伺ったのは、町内で大崎牛を楽しめる焼肉店「肉のたかしや」。お店を経営しながら、返礼品として大崎牛を全国各地に届けているのが前田隆博さんです。
前田さんの実家は、羽子田人工授精所と連携して大崎牛の生産を行う畜産農家。今から40年ほど前に、人工授精師として働いていたお父さんが牛を飼いはじめたことがきっかけです。長男だったこともあり「将来は自分も牛飼いになろう」と考えていた前田さんでしたが、家業の畜産業は2人の弟たちが継ぐことに。
「実家は弟たちに任せましたが、畜産業界に関わりたいという思いは消えませんでした」と話す前田さんは、牛飼いから転身して、肉屋になることを決意します。その後、しばらくして父の「焼肉屋を作るぞ」というアイデアから、大崎牛を提供する肉のたかしやを開業しました。
開業当初は父の真意がハッキリとしなかった前田さんでしたが、数年後、開業の裏には「良い牛肉を畜産農家の仲間たちにも手が届きやすい価格帯で提供したい」という願いが込められていたことを知ります。「父は長年『牛を飼っている人が、金額を理由に牛肉が食べられないのはおかしいのでは?』という疑問を持っていたみたいです。『お客さんに楽しんでもらうことも大切だけど、身近な畜産の仲間たちにも、もっと気軽に牛肉を楽しんでもらいたい』。その思いを叶えるために、自分のところで育てた牛を提供する焼肉店を作りたかった、と後になって話してくれました」
お客さんと生産者、どちらにも親しまれる和牛を目指し、大崎牛には麦や大豆かす、きのこや黒糖など、7種類の食品を配合したこだわりの飼料を与えています。牛の体調によっては、合間におやつを与えることも。月齢9ヶ月の仔牛を20ヶ月間じっくり育てることで、力強い味わいの赤身と、あまくてとろける脂肪を備えた質の良い和牛に成長するそうです。
大崎牛のうま味を逃さないために、解凍はゆっくり時間をかけて
肉のたかしやのお肉は、冷凍で届きます。すぐに食べる場合は、そのまま冷蔵庫へ。数日後に食べる場合は、冷凍庫で保管しましょう。なぜかというと、お肉は急速な温度変化にさらされると、タンパク質やうま味成分を含んだドリップという赤い液体が出やすくなってしまうからです。
大崎牛のうま味をなるべく逃さないように、解凍は冷蔵庫でゆっくりと。食べる予定の前の晩に冷蔵庫に移しておけば、翌日には解凍されています。
大崎牛のうま味が溶け出す、極上のすき焼き体験
今回ご紹介するのは、「肩ロースバラ すきやき用」。大崎牛を使ったすき焼きに、難しい工程は必要ありません。一般的なすき焼きのレシピを参考に、溶いた生卵に潜らせたり、炊き立てのごはんにバウンドさせたりしながら、割り下が染みた大崎牛をじっくりとお楽しみください。ちなみに、前田さんが幼い頃に食べていたすき焼きについて尋ねると「わが家の場合は、母がこれでもか!というほど白砂糖を入れて、醤油は薄口を使っていました」と意外なレシピを教えてくれました。
そして、「よその作り方とは違うだろうけど、それが前田家の味なんですよね。例えば、お店の場合は、そのお店のこだわりがあるでしょう。でも、家で食べるのであれば、その家の味で食べるのが一番その人の口に合うと思います。だから、皆さんにもそれぞれの家庭の味の中で大崎牛を楽しんでもらえたら、うれしいです」と前田さん。届ける側のおすすめを押し付けることなく、それぞれの味わい方を尊重するその姿勢に、生産者の誇りと大崎牛に対する自信を感じました。大崎牛のほどけるような口溶けとうま味を、ぜひご家庭で。
すき焼き以外に、こんな食べ方もおすすめです!
すき焼きを楽しんだけど、お肉が余っちゃった!という場合は、しゃぶしゃぶにしてポン酢や胡麻ダレでいただくのもおすすめです。また、大崎牛を他の食材と組み合わせて楽しみたい…という場合は、肉じゃがもおすすめ。
和牛のうま味が強い大崎牛は、他の食材に負けることなく、むしろ食材のうま味を引き上げます。牛肉の出汁が染みたジャガイモと糸こんにゃく…想像しただけで、ヨダレが止まりません。
大崎牛と共に、地域のストーリーも味わって欲しい
全国で親しまれているブランド和牛の故郷ともいえる大崎町。そんな町の歴史と、人の思いがたっぷり注がれた大崎牛。正直にいってしまうと、おいしいのは当たり前です。その証拠に、肉のたかしやには、質の高い牛肉を求めて畜産農家をはじめ、多くの人が足を運びます。
「どうしたら質の良い牛を育てられるのか?」をテーマに町をあげて知恵を出し、手を動かすことで、一歩ずつ認知度を高めている大崎牛。食べる際は、大崎牛が持つ和牛本来のうま味はもちろん、大崎牛と共に歩む人々のストーリーも一緒に味わっていただけるとうれしいです。
九州支部(鹿児島県曽於郡大崎町担当) / 福島 花咲里(ふくしま かざり)
生まれも育ちも鹿児島県。現在は南九州市頴娃町(えい町)を拠点に、フリーランスのブロガー、ライターとして活動しています。2016年11月より個人ブログ「ONESELF Lab|ワンセルフラボ」の運営を開始し「わたしと町の研究所」をコンセプトに、日々の田舎暮らしを記録。ケの日に寄り添った文章表現が得意です。
大崎町には、古墳やキャンプ場など楽しい名所が盛りだくさん。ウミガメが産卵に訪れる大崎海岸もありますよ?!