大東市から世界へ。ハーレー向け
路地を1本入るとどこからともなく聞こえてくる、機械の音。大きなシャッターの中を覗けば、金属を溶接している光がぴかぴかと跳ねている……そんな光景が日常に溶け込んでいるのが、ものづくりのまち・大東市です。
今回ご紹介する返礼品は、そんな大東市で作られる「Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)」向けのバイクカスタムパーツ「TWISTED KICK ARM・KICK PEDAL(ツイステッドキックアーム・キックペダル)」です。堂々とした佇まいでハーレーの格好よさをグッと引き立ててくれる、カスタムパーツの魅力に迫ります。
どこにもないパーツを届ける
艶やかなメッキと細やかなツイストが美しいこのパーツを作っているのは、「REVOLT CUSTOM CYCLES(リボルトカスタムサイクルズ)」の井上正雄さんです。ハーレーのカスタムビルダーとしてお店を構える井上さんは、本場米国の歴史あるカスタムショー「EASY RIDERS BIKE SHOW TOUR2017」でチャンピオンに輝いた実力者でもあります。
井上さんにREVOLT CUSTOM CYCLESの強みを伺ってみると、「どこにもないものを作って販売していること」だと答えてくれました。日本だけでなく世界のバイクを見てきた井上さんだからこそ分かる、まだこの世に生まれていないパーツ。それをたくさんの人に手にしてもらいたいという思いで、オリジナルパーツを製作しているのだそうです。
イメージを形にするカスタムならではの面白さ
バイクをカスタムして自分だけのスタイルを追求する楽しさは、唯一無二のもの。その楽しさは、カスタムビルダーである井上さんにとっても同じです。「お客さんがイメージするバイクを形にできるのが、この仕事の面白さだと思っています。お客さんはカタログではなく、頭の中にあるイメージを『この人なら形にしてくれるのでは?』と相談してくださいます。それに応えて喜んでもらえるのが一番ですね」。
イメージを形にする過程で、じっくりとディスカッションを行うのが井上さん流。お客さんからの要望をそのまま受け入れるのではなく、お客さん本人にとっても周りから見てもクールな逸品を生み出すために、きちんと時間をかけて話し合います。「それはやっぱり、ハーレーにずっと乗ってもらいたいから。長く乗る愛車のことだからこそ、しっかり意思確認をした上で作り始めるようにしています」と職人の顔で話してくれました。
ハーレー乗りの自由さに憧れ、その道に進む
そんな井上さんがハーレーに憧れを持ったのは、10代の頃。地元・愛媛県のフェリー乗り場に集まったハーレー乗りたちの姿を見て、衝撃を受けたそうです。「Tシャツを着て荷物を後ろに積んで、どっしりとした構えでハーレーに乗る人たちが、すごく自由で楽しそうに見えたんです。ちょうどその時は、小さい頃から続けていたサッカーの練習や大会でヘロヘロになっていたので、一層強く記憶に残りました」。
その後サッカーを辞めた井上さんはハーレー乗りの道に進み、「人と同じものは嫌だ」という思いから、バイクのカスタムを覚えていきます。カスタムの世界へ本格的にのめり込んでいったのは、友達に頼まれカスタムしたバイクを、喜んでもらえたことがきっかけなのだとか。
世界への思いを強くしていった修業時代
仕事として本格的にハーレーのカスタムをするために修業を積んだのは、宮城県にあるカスタムショップでした。「雑誌で見て衝撃を受けたバイクのあるお店で、この人のところで働きたい!と心に決めたんです。メッキ屋さんや溶接屋さん、機械屋さんで5年間下積みをしてから宮城まで行き、なんとか働かせてもらうことになりました」。
カスタムショップの社長は、30年前からアメリカのカスタムショーに参加した方。その側で9年間働くことで、井上さんにとっても世界大会が身近に感じられるものになりました。社長について渡米するたびに「自分もこの舞台に立たなければ」という思いを強くし、独立するときには「5年で世界で一番大きなカスタムショーに出よう」と心に決めたそうです。
有言実行、本場アメリカで戦った熱い職人魂
井上さんはその言葉通り、独立から5年の節目となる2017年にアメリカで行われた「EASY RIDERS BIKE SHOW TOUR2017」に出場。見事年間チャンピオンに輝きます。「当時アメリカに行くときは、世界を取ってやる!という自信に満ち溢れていました」と笑う井上さん。
世界を知る人の技を間近で見ながら、アメリカで評価されるためにはどうすればいいのかを研究し続けてきたのですから、それもそのはずです。世界の場で戦うために長年に渡る計画を立て、しっかりと有言実行を遂げるその姿勢には、ハーレーを愛する職人の熱い魂が宿っていました。
世界を獲ったバイクにも取り付けられていた手作りの逸品
ご紹介する返礼品の「TWISTED KICK ARM・KICK PEDAL」は、2017年にチャンピオンになったバイクにも取り付けられていたパーツで、井上さんの経験を活かした手作りの逸品です。この細やかで美しいツイストは機械で作るのが難しく、手作業でないと生み出せないもの。世界中を見てもなかなか無い形で、「このツイストを見て、日本のREVOLTが作ったバイクだと分かってもらえるようになったら」という願いも込められています。
キックペダルは、バイクのエンジンをかけるための大切なパーツの1つ。見た目だけでなく、蹴りやすい角度や耐久性にもこだわりが込められています。「長く乗り続けるバイクには、同じように長く使えるパーツが必要です。耐久性を下げてしまわないように、自分の目と感覚を信じて、鉄の粒子を壊さないタイミングで溶接・加工をしています。これが機械だとなかなかできないんですよね」。
美しくタフな魅力あふれるキックアーム・キックペダル
TWISTED KICK ARM・KICK PEDALを購入された方からの反応は上々で、国内・国外問わず喜びの声が届いているのだとか。バイクをカスタムしたことのない私でも、このメッキの輝きとツイストの曲線美、その美しさの中にあるタフな格好よさは十二分に感じ取れます。
艶やかに輝くパーツの数々をどう組み合わせるかは、自分次第です。きっと私が想像するより何倍も、バイクカスタムの世界は奥深いもの。TWISTED KICK ARM・KICK PEDALが取り付けられたバイクを見ていると、その片鱗に少しだけ触れたような心地がしました。
大東市には、ものづくりのあたたかい魂が宿っている
最後に大東市への思いを伺うと、「本当にいいところです。今後もここにいたいと思っています」と笑顔で答えてくれました。「初めの頃はバイクの排気音がご迷惑になっていないか気になって仕方なかったんですが、ご近所の方は『ここはもともと準工業地域だから、静かすぎると落ち着かない。だから気にしないで!』と言ってくださって……。やっぱりものづくりのまちなんだなと感じました。本当にありがたいですね」。
そんな人情味あふれるまち、大東市で生まれたキックペダルをバイクに取り付けたら、ぜひREVOLT CUSTOM CYCLESまでツーリングを。ずらりと並んだハーレーのバイクと井上さん、そしてものづくりの魂を持った大東市の人々が、きっとあたたかく迎え入れてくれることでしょう。
近畿支部(大阪府大東市担当) / 鶴留 彩花(つるどめ あやか)
兵庫県加西市在住。奈良県の盆地で育ち、大阪や神奈川でも暮らしてきました。持ち前の行動力とリサーチ力を生かし、ライター・カメラマンとして活動中。おいしいもの・すてきなこととの出会いを日々追い求め、その魅力を発信しながら“トカイナカ”と言われる加西でのんびり楽しく暮らしています。
大阪を代表する工業都市で、町工場のエネルギーにあふれる大東市。大阪都心部にも生駒山系の山間地にも近く、都会と田舎の“ええとこどり”ができる住みよいまちです。