日本の原風景が残る場所でオープンした人気イタリアン
富山県南西部に位置する南砺市(なんとし)は、散居村をはじめとした日本の原風景と、古き良き日本の伝統文化、そして山と海によって育まれた北陸特有の食文化が息づいている場所です。今回ご紹介する「クチーナ ノブ」は、南砺市にある大正後期に建てられた古民家をリノベーションしたイタリアン。2018年にオープンして以来、地元の人をはじめ県内外のお客さんの胃袋をつかみ、レストラン営業、テイクアウトともに予約の絶えないお店として知られています。
薪窯で焼いたお店の味をそのままに
なかでも薪窯で焼くピッツァはお店の一番人気です。返礼品の「家窯(うちがま)ピッツァ」は、400℃に熱した薪窯で一気に焼き上げ、香ばしい風味を閉じ込めるために急速冷凍しました。
家族で南砺市に移住。お店を持ちたい思いが現実に
オーナーの井上浩延(いのうえ ひろのぶ)さんは奈良県出身。北海道のホテルや神奈川のイタリア料理店で料理の経験を積んでいましたが、子育てに良い環境を求めて2015年に家族で南砺市に移住しました。移住直後は「地域おこし協力隊」として活躍していた井上さんでしたが、ある日、地元新聞のインタビューを受けることに。何気なく口にした「いつか自分の店を持ちたい」という思いが掲載され、それを読んだ地元企業の社長から「うちの実家を使ってお店をやってみてはどうか」と声をかけられたそうです。
「紹介されたのは、築100年以上経つ立派なお宅でした。自分たちにはもったいないくらいでしたが『若い方に活躍してほしい』という社長の言葉に背中を押され、このチャンスを活かそうと思ったんです」と井上さん。まさに運命のような出会いから、井上さんのお店づくりがスタートしました。
冷めてもかたくならない塩麹配合の生地
自身のイタリア料理の経験を生かした店を始めることにした井上さん。ここにしかない空間で富山らしさを出したいと思っていたことから、富山の食材をふんだんに取り入れたメニューにこだわっています。
なかでも、一番のこだわりは生地。南砺市にある創業1895年の老舗種麹屋、石黒種麹店さんの塩麹を使用し、富山県産の小麦などをブレンドした独自の配合で、モチモチの生地に仕上げています。「富山に来て、地元の郷土料理である『かぶらずし』を食べた時に、かぶらと魚、麹のバランスと発酵によるまろやかさに衝撃を受けたことからヒントを得ました。塩麹なら肉を柔らかくする効果があるので、生地にいれたらどうなるだろうと思い試してみたら、冷めても生地がかたくならない。これなら冷凍しても美味しく食べられると思ったんです」と井上さん。
手作りの薪窯で絶妙な焼き加減を
薪窯はなんと井上さんの手作り。毎朝2時間半かけて窯の温度を400℃までじっくり上げていきます。炎が落ち着き火力が安定したところでピッツァを投入。焼き加減を見極めながらピッツァをクルクルと回していきます。
ちなみに井上さんが手にしているピッツァを載せるパーラーは、南砺市の伝統工芸、井波(いなみ)彫刻の職人に作ってもらったもの。井上さんの「富山愛」はお店のいたるところに溢れています。
薪窯にピッツァを入れ、焼き上がるまでわずか2〜3分。井上さんと楽しくお話している間にあっという間に出来上がりました。程よく焦げ目のついた香ばしい生地ととろけたチーズの香りが食欲をそそります。
返礼品のピッツァは、出来上がったばかりの香りや風味を閉じ込めたまま急速冷凍します。この商品ができたのは2021年6月のこと。オープン当初から冷凍ピッツァの構想はあったそうですが、コロナ禍の需要もあって一気に実現へ。お家でもお店の味が楽しめると、お客さまからも好評です。
お店の味に近づけるためのちょっとした工夫
返礼品は冷凍の状態で届き、食べるまで冷凍庫で保管できます。取り出してすぐに焼いても美味しくいただけますが、よりお店の味に近づけるためには、「冷凍庫から取り出し、室温で30分ほど解凍してからアルミホイルで包んでトースターで温めるとさらにモチモチの生地が楽しめます」と井上さん。
たしかにアルミホイルに包んで温めると、生地のみみまでやわらかです。最近はこのピッツァをキャンプで利用する人も多いのだとか。冷凍のまま持っていき、お家を出てキャンプ場で火の準備ができた頃が食べどきなので、家でも屋外でも手軽に本格的な味を楽しめるのは嬉しいですよね。
人が集い楽しむきっかけを作りたい
「お店を始めたのは“人が集まる場所を作りたい”という思いがあったから」と井上さん。みんなが楽しそうに食事をしながら語らう様子を見るのが何よりも嬉しいと言います。簡単調理で食卓が華やぐ「家窯ピッツァ」は、普段使いでもパーティーのような人が集うシーンでも大活躍!本格的なイタリアンピッツァでありながら富山らしさも感じられるその味を、ぜひお楽しみください。