ローカルの雰囲気「御成通り」と鎌倉本店
山と海に囲まれた自然豊かな古都、神奈川県鎌倉市。外から訪れる人を受け入れ賑わう『小町通り』と対をなして、地元の人も多く行き交うのが「御成(おなり)通り」。ローカルなカフェや雑貨屋さんがずらりと並び、落ち着いた雰囲気を楽しめます。「鎌倉小川軒」は、この通りの中ほどに本店を構えています。
平日は地元のお客様、休日には観光客と多くの人でにぎわいます。店内にずらりと並ぶ焼菓子や、ショーケースに並ぶケーキやプリン、シュークリームに目を奪われます。不動の人気はレーズンウィッチですが、それ以外の店頭一番人気はシュークリームなんだとか。
「鎌倉小川軒」の歴史は、1988年に東京代官山の「小川軒」からのれん分けのかたちで独立したことによりスタートしました。屋号を「お菓子の家・鎌倉小川軒」として、1989年に鎌倉本店と戸塚店をオープン。現在は、鎌倉本店・シァル鎌倉店・大船ルミネウィング店・藤沢小田急店・テラスモール湘南店・町田小田急店・戸塚工場直営店の7店舗で営業しています。
鎌倉土産の定番、「レーズンウィッチ」
今回ご紹介する返礼品は、「レーズンウィッチ」。サクサク食感のサブレや、たっぷりサンドされたラムレーズン、口どけのよいなめらかなバタークリームという、おいしさのアンサンブルが楽しめる、鎌倉小川軒を代表する逸品です。アルコール分を揮発させることでやさしく上品なラムの香りを閉じ込め、ふっくらと煮上げたラムレーズンは、お子様やお酒の弱い方でも安心してお召し上がりいただけます。
地元では日常のおやつとして、鎌倉を訪れた方にはお土産の定番として、幅広い年代の方に愛されているんです。
偶然から生まれたお菓子
「鎌倉小川軒」代表取締役の中村友(なかむら・とも)さんに、鎌倉本店でお話を伺いました。なぜレーズンウィッチをつくるようになったのかお尋ねしたところ、驚く回答が。「この『レーズンウィッチ』、実は偶然から生まれたお菓子なんです」。
東京オリンピック開催前の1960年代初頭、当時はまだ洋菓子自体が珍しく、1905年創業の「小川軒」は当時から老舗として有名でした。土台にビスケットを敷くというのが特徴のひとつだったという、「小川軒」のデコレーションケーキ。ある日、スタッフがそのビスケットを焼き過ぎて余らせてしまいます。「これは怒られる」と思ったスタッフは、とっさにあることを思いつきます。フルーツケーキに使っていた漬け込みのフルーツと、当時デコレーションケーキの主流だったバタークリームを、余ったビスケットに挟んで出したのです。怒られるどころか、商品化すべきだという声が上がり、こうして「レーズンウィッチ」は誕生したのでした。
「『レーズンウィッチ』は、そのようにして1960年代に生まれ、改良を繰り返して120%仕上がっている商品です。もうこれ以上はないと言える商品」。そのため、品質を落とさずに良い素材を吟味して使うということと、手作り感を大切に製造するということを、徹底して行ってきました。
近年では、地元鎌倉のお客様ばかりでなくお土産としてご利用される方や遠方からご注文される方も増え、オンラインショップや有名百貨店を通じて、多くの方々に愛されるお菓子となりました。
ハンドメイドの温もりを大切に
そんな「鎌倉小川軒」の代名詞とも言える「レーズンウィッチ」は、横浜市戸塚区にある工場で製造されています。毎日平均12,000〜15,000個を生産しているということは、サブレの枚数でいえば、1日2万枚以上焼いている計算になります。卵塗りやアーモンドを乗せて焼くという作業を1枚1枚人の手で行い、長い経験を積んだスタッフが鮮やかな手つきでレーズンをサンドしています。
機械を使っているものの、その役割はサポートがメインで、あくまで人の手による手作りが中心。不揃いな形も機械には出せない味で、お菓子を通してハンドメイドの温もりが伝わります。
伝統を引き継ぎ、次の30年へ
「鎌倉小川軒」は、1989年に創業してから30年を過ぎたところ。次の30年を見据え、リブランディングを図っているそうです。「これまでの30年の重みを感じつつも、次の30年を見据えて新しいことにもどんどんチャレンジしていきたいと思っています。お客様の世代も変わってきている中で、親から子へと、世代を越えて愛され続けるようなブランドにしていきたいですね」。
リニューアルしたロゴにも、創業時の思いがそのまま宿っています。「フィルムにも印刷されている、五角形のロゴを目にしたことのある方も多いのではないかと思います。この五角形には、『お菓子の家・鎌倉小川軒』と名付け創業した当時の思いが込められており、“家”を表しているんです」。“家”というのは、温もりや安らぎを象徴するものなのではないかと、中村さん。「鎌倉小川軒」も、皆さんにとってそんな存在でありたいといいます。
そうして伝統の味を守るなかで中村さんが新たに考えたのは、「強みを生かした商品展開」でした。強みとは、もちろん「レーズンウィッチ」。そして、素材であるビスケットやバタークリームです。例えばビスケットをチョコレートでコーティングした「チョコビスケ」や、季節に合わせてサンドする素材が変わる「セゾンウィッチ」、コーヒークリームとラムレーズンをサンドした「レーズンウィッチコーヒー」など、次々と新たな商品を生み出しています。
ここ鎌倉本店には、唯一であるカフェコーナーも併設。「ラムレーズンソフト」など「鎌倉小川軒」らしいオリジナルのカフェメニューを楽しむことができます。「鎌倉は、古くからハイカラ好きの街として知られているし、食へのこだわりが強い人が多いんです。そんな中でも、地元のお客様にご愛顧いただいているし、愛情を持って接してくださっている。定番ももちろんのこと、次々と新しいものもお出しして、お客様を楽しませていきたいと思っています」。
中村さんのご実家も鎌倉にあり、小さな頃から親しんできたというこの地域。今後も、「現在の7店舗を中心に、目の届く範囲で事業を続けていきたい」のだといいます。
愛され続ける手作りの味
昔から愛され続けてきた、「鎌倉小川軒」の「レーズンウィッチ」。私たちも大好きで、お土産にはもちろんのこと、自分たちのおやつにも購入してしまうほど。大切につくられ続けてきたほっとする手作りの味を、ぜひご賞味いただけたら幸いです。
関東支部(神奈川県鎌倉市担当) / 庄司 賢吾(しょうじ けんご)・真帆(まほ)
神奈川県逗子市在住。夫婦で土曜日だけの珈琲店「アンドサタデー」を営む傍ら、逗子・葉山を拠点に編集社としてライティングや撮影、企画などの活動をしています。記事を通して、事業者さんの人柄や温かみをお伝えしていきたいと思っています。
海と山、自然の豊かさはもちろんのこと、魅力的な人や心高鳴る素敵なお店がたくさんある鎌倉が大好きです。