建築のプロたちも愛用する、強力カビ取り剤
栃木県栃木市に本社を置く株式会社榮建設は、一般木造住宅やリフォームなど住宅全般を手掛ける建設会社です。カビ取り剤開発の発端は、お客さまからの「市販のカビ取りだと、カビが消えない」「何度もカビ取り剤を使っているうちに素材を傷めてしまった」といった声でした。とくに、木材のカビはプロでも除去することが難しかったため、同社代表取締役の菊元栄治(きくもとえいじ)さんが「これまでにないカビ取り剤を」と開発したのが、擦(こす)らず楽々強力カビ取り剤「MoldZERO」(モールドゼロ)です。
住宅メーカーや設備関係など“建設のプロたち”からも注文があるという効果抜群のカビ取り剤。一体、どれほどの効果があるのでしょうか。榮建設に伺って、その威力を見せていただきました。
お客さまの“声”に応えるために新製品の開発に着手
開発にあたっては、菊元さんのこれまでの知識や経験が最大限、生かされました。大学時代、電気工学部で電気浸透学を学んだ菊元さんは卒業後、大手エレクトロニクスメーカーに入社し、海外の多くの仕事に携わりました。「海外勤務では、手に入らないものも多くありました。だから、『ないものは作ればいい』という感覚でした。それが今回の開発に生かされましたね」と菊元さん。
とはいうものの、商品化するためには、いくつかのハードルを越える必要がありました。「家庭で使うものだけに、一番、安全性が重要」と、一般財団法人日本食品分析センターの急性経口毒性試験を実施して安全性を確認。一方、大腸菌や黄色ブドウ球菌、緑膿菌、クロコウジカビやアオカビなどの抗菌抗カビ試験で除菌効果も調べました。また、疑問点や不明点は会社員時代の人脈に頼ったり、学んだりしながら商品化にこぎつけました。
特殊な成分で浸透力アップ。素材を傷めないのが特徴
では、どんな点が「これまでにないカビ取り剤」かというと…「界面活性剤と、新鮮な次亜塩素酸ナトリウムを配合していること」と菊元さん。効果を維持するためには、次亜塩素酸ナトリウムの濃度を下げないことがポイント。余分なものを混ぜたり、紫外線や温度、時間によって濃度が下がるため、必要最低限の成分を配合し、「新鮮なうちに使い切ってもらいたい」と、製造年月日を明記、消費期限を1年としています。
また、特殊な界面活性剤は、モールドゼロの大きな特徴である「浸透力」に力を発揮。次亜塩素酸ナトリウムを効率良く浸透させる役割を果たしています。「一般的なカビ取り剤は泡などで素材に長く定着させることでカビを除去しますが、素材への接触時間が長くなればなるほど、素材が傷んでしまいます。でも、この商品は素早く浸透するため素材との接触時間が短く、結果、素材への負担が少ないんです」と菊元さん。「素材を傷めない」のも、モールドゼロの大きなメリットです。
まるで手品を見ているように木の相が復活!
まずは、「百聞は一見にしかず」ということで、菊元さんにモールドゼロを試していただきました。菊元さんが用意したのは屋外に1年間、放置しておいた木の板。紫外線焼けをした板は一面黒ずんで、木肌も見えません。そこに、モールドゼロを数滴垂らします。液体の見た目はサラサラで水のよう。その液が広がり、あっという間に木肌が見えてきました!その間、ほんの数十秒。まるで、手品を見ているようです。
「液が浸透した後に残るのは塩のみなので、後はお水で流して終了です」と菊元さん。スプレーして水で流すだけという手軽さも、嬉しい限りです。
家中どこにでも使えて素材を傷めない“すぐれモノ”
カビ取りとうたっていますが、実験で紹介した紫外線焼けやコケにも効果があるモールドゼロ。これまで、カビを取るのが難しかった木造建築の古い社などから、家庭の浴槽や洗面台といった水回り、壁紙や畳、ウッドデッキ、外壁やコンクリート材など、繊維と金属以外のさまざまな場所に利用できます。
実際に使用した人からは、「魔法のように黒いカビが消えて、信じられません」「拭いても拭いても生じていたカビがなくなりました」といった声も寄せられています。菊元社長は「この商品の臭いを気にする人もいますが、臭いは一瞬。それよりも、ぜひ効果を実感していただきたいですね」と話します。
ものづくりを代表する企業として栃木県のフロンティア企業に
「とちぎのものづくりを代表する企業」として、栃木県のフロンティア企業に認証されている榮建設。カビ取り剤を皮切りに、錆び取り剤を開発。さらに、近々油取り剤も発売する予定です。そこには、「分からないことがあれば、勉強しなおせばいいし、なければ作ればいい。そこに壁はありません」と、40代で建築士や施工管理技士、大工の資格を取得するなど、常に挑戦を続ける菊元さんの姿勢が色濃く反映されています。
家づくりのプロが手がける新製品に期待大
家づくりのプロの視点で作られたカビ取り剤は、さすが素材に精通しているだけあって、驚くほどの効果を見せてくれました。「新商品のアイデアはまだまだたくさんあります」と話す菊元さん。これまで学んだ知識、海外勤務で培った柔軟な発想力、そして行動力によって、次にどんな商品がお目見えするのでしょうか。日々、家事を担う一消費者として、とても楽しみです。
関東支部(栃木県栃木市担当) / 斎藤 里香(さいとう りか)
群馬県桐生市在住。北関東と埼玉を中心に取材・執筆活動をしています。一番、大切にしたいのは、人々の「思い」です。いろいろな「コト」や「モノ」に携わっている人々の“代弁者”として、頑張っている姿、その根底にある思いなどを多くの人たちに伝えることができたら嬉しいです。
小江戸と呼ばれる栃木市は今と昔を繋ぐ街。中心地の蔵巡りも楽しいですよ。