広大な渡良瀬遊水地の71.2%を占める栃木市
関東平野のほぼ中央、栃木県・群馬県・埼玉県・茨城県の4県にまたがる渡良瀬(わたらせ)遊水地。33平方kmにも及ぶ広大な面積を誇る国内最大の遊水地です。緑豊かなヨシ原には多様な動植物が生息しており、湿地を守るためのラムサール条約にも登録されています。その遊水地のなんと71.2%を占めているのが、栃木市です。
遊水地には、ウィンドサーフィンやカヌーといったウォータースポーツが盛んな谷中湖(やなかこ)、史跡や子供広場、スポーツが楽しめるグラウンドなど、さまざまなスポットが点在しています。とくにおすすめは、遊水地の爽やかな風に吹かれながらのサイクリング。レンタサイクルで遊水地をのんびり巡れば、大自然をより近くに感じることができます。
熱気球の搭乗体験で“大空の散歩”
返礼品は、この広大な渡良瀬遊水地が“舞台”。熱気球に乗って、遊水地を空から眺める「熱気球搭乗体験(係留フライト)」です。係留フライトとは、ロープで地上と熱気球をつないで飛行するスタイルのこと。初めての人も安心して楽しむことができます。
熱気球に搭乗して20?30m上がれば、そこは別世界。眼下にはどこまでも広がる遊水地の風景や、天気が良ければ遠くに筑波山や富士山などを眺めることができます。約5分の“大空の散歩”は、心に刻まれる貴重な体験になることでしょう。
障害物の少ない平坦な遊水地は熱気球に最適の地
渡良瀬遊水地を訪ねてみると、見渡す限り平坦な風景が広がっています。遊水地は毎年、全国から参加者が集まる「栃木市・渡良瀬バルーンレース」が開催されるなど、熱気球の盛んな地として全国的に知られています。その理由の1つが、この特徴的な地形にあるそうです。
栃木市熱気球クラブ代表の神島馨(かみしま かおる)さんによると、「電線や建物といった障害物が少ないことがフライトの条件です。とくに自由に飛んでいくスタイルのフリーフライトは熱気球を追いかけなくてはいけないため、遠くまで見渡せる平坦な場所が適しています」とのこと。さらに、会場として田んぼが活用されるケースもありますが、「田んぼだと稲刈り後でなくては使えません。一年中飛ばせるのも遊水地のメリットです」と話します。
市の宝、渡良瀬遊水地を熱気球でPR
「栃木市熱気球クラブ」は、栃木市の宝である渡良瀬遊水地を広くPRしようと、栃木市が熱気球を購入したのを機に2014年に設立されました。以降、市とクラブがタッグを組んで熱気球の搭乗体験を展開。2021年4月から、毎月第3日曜日には熱気球の飛行体験イベント「わたらせ熱気球day」を開催しています。
熱気球dayの大空を彩るのは、栃木県名産・イチゴの形をした熱気球や谷中湖をモチーフにした熱気球。約20人で組織するクラブのメンバーは、熱気球dayだけでなく、県内外のイベントに出向いて、“熱気球の街・栃木”をアピールしています。
大空を肌で感じられるのが、熱気球の大きな魅力
“熱気球の街”の陣頭指揮を執っている神島さんが熱気球と出会ったのは、1995年。知人がやっていた熱気球を手伝うようになり、熱気球のパイロットライセンスを取得しました。「大きさにも圧倒されましたが、空を飛ぶという人間の夢が叶えられるスポーツだという点に興味を持ちました」と神島さん。
熱気球の魅力について、神島さんは「大空から眺める景色はもちろんですが、ガラスなど遮るものが何もない状態で、空を肌で感じられる。それが大きな魅力だと思います」といいます。実際に搭乗した人からは「味わったことのない貴重な体験ができました」「想像以上に景色が綺麗だったので驚きました」といった感動の声が寄せられるそうです。
景色は一変!地上30mは静寂な非日常の世界
「熱気球搭乗体験(係留フライト)」は地上と熱気球をロープでつないでいるため、初心者でも安心して体験できます。バーナーの音とともに、ゆっくりと “浮く”ように上昇して…気付いた時には30mの上空! バーナーの音がないと、驚くほど静かな非日常の世界。地上の景色とは一変し、今まで見たことのない絶景が広がります。
「安全性には細心の注意を図っています」という神島さんの言葉通り、搭乗体験ではヘリウムガス入りの風船を高く上げて風向や風速を確認しています。安全性の高い係留フライトのため、子どもからご年配の方まで、幅広い年代で楽しめるのも魅力です。
遊水地と熱気球で伝えたい、故郷・栃木市の魅力
「栃木市はこんなに良い場所があるということを、もっと知ってもらいたいですね」と話す神島さん。クラブの活動だけでなく、市内外の小学校に出向き、4年生の理科の授業で熱気球の仕組みや魅力を伝える活動もしています。神島さんのこうした取り組みの原動力となっているのは、「栃木市、そして渡良瀬遊水地の魅力を多くの人に伝えたい。そして、人々の喜ぶ顔が見たい」という思いです。
渡良瀬遊水地という国内有数の貴重なロケーション。そして、熱気球が誘う非日常の世界。ここでしか味わえない貴重な搭乗体験が、多くの人に笑顔を届けてくれることでしょう。
関東支部(栃木県栃木市担当) / 斎藤 里香(さいとう りか)
群馬県桐生市在住。北関東と埼玉を中心に取材・執筆活動をしています。一番、大切にしたいのは、人々の「思い」です。いろいろな「コト」や「モノ」に携わっている人々の“代弁者”として、頑張っている姿、その根底にある思いなどを多くの人たちに伝えることができたら嬉しいです。
渡良瀬遊水地を訪れたら、車でなくぜひ自転車で巡ってください。湿原を渡る風、鳥の鳴き声。遊水地の大自然を肌で感じることができますよ。