温暖な瀬戸内の自然に育まれる、島栽培の杜仲茶
「坂のまち」「文学のまち」「映画のまち」として知られている広島県尾道市。レトロな路地裏や風情漂う港町も素敵ですが、尾道市から愛媛県今治市までを6つの島で結ぶ「しまなみ海道」も風光明媚なエリアです。多島美の景色が素晴らしく、それぞれの島では瀬戸内の温暖な気候を利用したさまざまな作物が栽培されています。
そのひとつが、因島(いんのしま)一帯で育てられている「杜仲茶」。中国が原産のこのお茶は、杜仲の葉から作られる健康効果の高いカフェインフリーのお茶です。氷河期さえも生きのびたと言われるほど生命力の強い植物で、中国最古の薬物学書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』には薬草として紹介されています。樹皮は漢方薬や医薬品の原料として使用され、降圧や利尿、強壮の効果があるといわれています。
返礼品としてお届けする瀬戸内産杜仲茶は、手軽なティーパックタイプ。ホットでもアイスでも好みで味わえ、さまざまな効能で健康をサポートします。瀬戸内産にこだわり、手摘みで収穫されるこのお茶がどのように作られているのか、取材しました。
体に染み込むような清涼感とほのかな甘さの健康茶
杜仲茶の特徴は爽やかな喉越し。若葉のような花のような自然な香りと、体にすっと染み込む清涼感があります。とくにこちらの杜仲茶はほんのり甘さが感じられ、「こんなに飲みやすい杜仲茶は初めて」「優しい甘さが美味しい」と、全国の愛飲者から喜びの声が寄せられます。
ティーパックにお湯を注いでも美味ですが、やかんの中で煮出すと風味と香ばしさがよりいっそう引き立ちます。暑い時期なら、煮出したものを冷蔵庫で冷やしてアイスで飲むのもおすすめです。
地域の雇用創出も視野に入れて始まった杜仲栽培
因島でこのお茶の栽培を始めたのは、四半世紀前にバイオ事業部を抱え、新事業を模索していた「日立造船」でした。この地に工場を構える日立造船は、当時造船業という枠を超えて“地域に新たな雇用の場と明るい未来を”と考えていたのだといいます。しかしながらお茶に対するノウハウがなかったため、尾道に「宇治園製茶株式会社」を構える、代表の溝口義揮(みぞぐち・よしき)さん(写真左)をアドバイザーに迎え、美味しい杜仲茶づくりに乗り出しました。
老舗製茶農家の血を継ぐ茶師が茶づくりを請け負う
溝口さんの本家は熊本で約400年続く製茶農家。本家の五男である溝口さんの父親はその技術を生かし、尾道に「宇治園製茶株式会社」を設立。ここで販売されるお茶は非常に高品質で評価が高く、広島を発祥とする武家茶道「上田宗箇流(うえだそうこりゅう)」でも用いられています。
自身もまた、京都「祇園辻利(ぎおんつじり)」などで研鑽を積んだ溝口さん。父親から継いだ会社を営みながら、茶づくりと販売のアドバイザーとして日立造船に出向していた時のことを、「大変だったけどやりがいがあった」と振り返ります。何より尾道生まれ尾道育ちの溝口さんにとって、“地域に雇用を生み出し、明るい未来をつくりたい”という日立造船の思いに強く共感したと話します。
たっぷりの陽光と潮風を浴びて大きく育つ高品質の茶葉
栽培地の傾斜具合から日照条件がとても良く、大人の手のひらほどにも大きく育つ因島の杜仲の葉は、その品質も抜群。365日潮風にさらされることで葉の甘みが増し、濃い緑色は栄養素を豊富に含んでいます。天高く伸びた木は、その立ち姿からも生命力の塊のようです。
日立造船の杜仲茶事業が軌道に乗った当時、ちょうど健康ブームのまっただなか。抗ストレス、アンチエイジング、便秘や冷え性、肩こり改善まで効果があるといわれる杜仲茶は、メディアで取り上げられることも多く、たちまち話題に。地域の産業としてしっかり根付いた杜仲茶事業は、その後、宇治園製茶の系列会社「セカンドグリッド」で引き継ぐことになりました。現在は30名の生産組合員とともに、手摘みの杜仲茶づくりを守っています。
高齢化が進む島において理想的で最適な作物
今の生産組合長を務める石田勝好(いしだ・かつよし)さん(写真左)は御年89歳。奥さまの伸子(のぶこ)さん(写真右)と一緒に、普段の食生活にたっぷりと杜仲茶を取り入れているのだとか。「おかげで元気に過ごせていると、よく話してくれます。杜仲の葉はとても軽く、高齢の生産者でも収穫が楽です。また、葉の中に粘度の高い成分が含まれるため、害虫をよせつけません。手間なく完全無農薬が実現できて兼業栽培もしやすい、今後の島に最適で理想的な作物だと思います」。
手間をかけ、妥協せず、最高の味わいを生み出していく
収穫した葉は天日干しにし、くず葉を丁寧に取り除き工場へ出荷します。葉っぱを揉むように袋詰めすると、芳しい杜仲の香りが立ち込めます。焙煎のオーダーは、お茶の専門家である溝口さんの腕の見せどころ。焙煎具合が足りないと生臭さが残り、煎り過ぎると苦味が出てしまうため、丁度良さを見極めるのがポイントです。その年の葉の成長具合により、葉の厚さや水分量が異なるので、その時々の工程で調整しています。
サステナブルなお茶づくりで人々の健康を支える
現在、島の杜仲茶づくりには「NPO法人おのみち寺子屋」も加わりました。20代の若者たちが故郷への想いを学びながら、栽培や加工、出荷までを手伝っています。「宇治園製茶グループが掲げる2021年度のスローガンは、“お客様、人々の笑顔と健康をお茶でサステナブル(持続可能)にすること”です」と、溝口さん。
作り手たちの思いが込もった杜仲茶を日々の暮らしに
今回、セカンドグリッドさんを訪れ、しっかりと守られてきた瀬戸内の杜仲茶づくりと、そこに関わる人たちの思いに心を打たれました。そして取材時に出していただいた杜仲茶の爽やかなこと!もっと薬膳のような風味かと思っていましたが、クセがまったくなく、すっきりした飲み心地でした。そのまま飲んでも美味しいですが、お茶でご飯を炊くと香ばしい茶飯に、コーヒー豆に茶葉を混ぜて淹れるとまろやかで健康効果の高いコーヒーが楽しめるそうです。
近年では細胞から若返り、代謝力や免疫力があがる「胆汁酸ダイエット」の食材としても再注目を集めています。そんなあれやこれやの情報を収集して、さっそく直営店でセカンドグリッドさんの杜仲茶を買って帰ったのはここだけの話(笑)。私もぜひ飲み続けようと思います!
中国支部(広島県尾道市担当) / 浅井 ゆかり(あさい ゆかり)
タウン誌をメインに、ジャンル問わず取材執筆(時々撮影)を手がけるフリーライターです。広島に嫁いで十数年になりますが、広島生まれ広島育ちの夫よりこのまちに詳しい自信あり! 取材に応じてくれる人、記事を手にしてくれる人へ、ちょっとした幸せや新鮮な驚きを届けられるようなプラスの言葉を紡いでいきたいです。
年に数回必ず訪れる尾道は、今と昔が混在するとっても素敵な場所。最近ではレモネードスタンドやクラフトビールの醸造所もでき、ますます活気が感じられます。尾道に行くなら本土だけでなく、しまなみ海道にも足をのばしてほしいです。