新旧の文化人に愛されてきた風光明媚なまち・尾道
広島県南東部に位置し、古くから港町や商都として栄えてきた尾道市(おのみちし)。向島(むかいしま)と挟まれ、「海の川」とも呼ばれる尾道水道に面していて、山と海とが揃う風光明媚なまちは多くの文化人に愛されてきました。古寺へと続く石段坂が風情ある佇まいのため「坂のまち」とも呼ばれ、数々の映画のロケ地になったことから「映画のまち」としても知られています。
まちの歴史が刻まれたシンボリックな建物を宿として再生
JR尾道駅から徒歩15分、千光寺(せんこうじ)へと続く石段を100段ほどのぼったところに「せとうち 湊のやど」の宿が2棟あります。
そのうちの1棟、「島居邸(しまずいてい)洋館」で利用できるギフトカードが今回の返礼品です。2階建ての建物は、一棟貸しや半棟貸しで宿泊できます。もとは明治期にこの地を所有していた豪商・島居氏に由来する邸宅で、昭和6年に建築されたもの。長い時を経てきたこの建物を、広島出身の建築家・桐谷昌寛(きりたに まさひろ)氏の手により宿として蘇らせています。
「せとうち 湊のやど」で過ごす、暮らしを営むような時間
この宿の良さを「尾道で暮らすような感覚で宿泊できます」と話すのは、支配人の小林紀子(こばやし のりこ)さんです。「坂の途中にある立地は不便をかけますが、時間をかけてゆっくりと石段をのぼり、振り返れば尾道のまちと尾道水道の景色が一望できます。宿の窓を開け放てば、遠くに行き交う渡船の姿が見え、夕方にはお寺の鐘の音が聞こえてきます。そんな尾道の人々の暮らしに溶け込むような体験を、ぜひこの宿で味わってほしいです」。
桐谷氏が手がけたリノベーションは、アースカラーのモルタル洗い出しの外壁や2階バルコニーのアーチ型支柱など擬洋風建築の意匠はそのままに、内装は和モダンにチェンジ。牡蠣殻粉末を使った瀬戸漆喰など、広島らしい建築材料を用いているのも嬉しいポイントです。備後畳表を使ったベンチや備後絣使用のラグといった、地域の伝統工芸に触れられるような工夫も凝らされています。
料理はダイニングでもデリバリーでも、自分で調理するのもOK
宿のお楽しみである食事は、敷地内の宿「LOG」のダイニングでいただくことができ、こちらの料理を部屋までデリバリーしてもらうのも可能です。
「LOG」の料理は料理家・細川亜衣さんが監修したもので、地元で採れる野菜や果物がたっぷり。素材そのものの味をオイルや塩で引き出すのも特徴。デリバリーなら宿内のお好きな部屋で、朝食は鳥のさえずりを聞きながらテラスや縁側でとるのも素敵。新鮮なフルーツや淹れたてのコーヒーが、心身のバランスを気持ちよく調えてくれそう!木漏れ日と海から運ばれてくる潮風が1日の始まりを豊かに彩ります。
宿内にはキッチンが設えてあるので、材料を持ち込んで自分で調理するのもOK。石段を真っすぐ下っていくと尾道商店街のど真ん中に出るので、地元の材料を買い求めに行くのも楽しそう。調理器具、食器、調味料などが一通り揃っているので、普段はできない凝った料理に挑戦するのもいいかもしれません。
心が解きほぐれる端正な表情の浴室と行き届いたしつらい
「何もしないことが一番のリラックス」という人は、まるで美術館の一角のような端正な表情のお風呂に、時間をかけて浸かるのが最高です。浴室は2つあり、一棟貸しの場合ならどちらも自由に使うことができます。備え付けのタオルは使い心地の良い正岡タオルのO.H.T.シリーズ、麻とレーヨンで織られた着心地抜群のルームウェアが備えてあるのもありがたい計らいです。
忙しない日常を忘れ、心身ともにリフレッシュ
「せっかく来たなら、普段と違うことがしてみたい」という人には、体験プランも用意されています。写経道具や絵画道具を有料で貸してもらえるので、ぜひ挑戦してみてください。静かな部屋で書や絵に集中して取り組む時間は、きっと穏やかな気持ちにしてくれるはず。
尾道は多くのアーティストが絵画の写生地として選んでいる場所でもあり、思わず紙に残しておきたくなるような風景がたくさん。まちを一望できる千光寺までは徒歩10分程度なので、絵画道具片手にスケッチ散歩に出かけるのもいいですよ。
ちなみにベッドルームも2つあり、こちらは玄関横にあるお部屋。もともと邸宅に残されていた明り取りの円窓が印象的でノスタルジックな雰囲気です。陰影のある美しさは、この宿の魅力のひとつにもなっています。フカフカのベッドでまどろめば、いつになく幸せな安眠を得られることでしょう。
共に過ごす人との距離を縮め、尾道を深く知る拠点に
様々な過ごし方のできる「島居邸洋館」ですが、やはり一棟貸しなのが一番のポイント。ほかの宿泊者に気兼ねすることなく、こだわりの空間を自分らしく堪能できます。カップルでも、家族でも、グループでも、一緒に訪れた人との距離がぐっと近くなること請け合いです。できるならば数日間滞在して、地元の神社仏閣や文化施設を巡り、まちを丸ごと体感してほしい。まさに“尾道を知る”拠点にふさわしい一軒です。
中国支部(広島県尾道市担当) / 浅井 ゆかり(あさい ゆかり)
タウン誌をメインに、ジャンル問わず取材執筆(時々撮影)を手がけるフリーライターです。広島に嫁いで十数年になりますが、広島生まれ広島育ちの夫よりこのまちに詳しい自信あり! 取材に応じてくれる人、記事を手にしてくれる人へ、ちょっとした幸せや新鮮な驚きを届けられるようなプラスの言葉を紡いでいきたいです。
古き良きものと、洗練された新しいものが混在する尾道市。坂と海が印象的なこのまちは、多くの映画や文学の舞台になっていることもあり、文化的な香りがします。細い路地裏に足を踏み入れるとネコが寛いでいたりして、まるでジブリ映画のよう。必ず再訪したくなる、魅力に溢れたエリアです。