地元民やクラフトビールファンの間で名高いナギサビール
ハワイのワイキキビーチの姉妹浜である白良浜、古くから天皇が湯治に訪れたと日本書紀や万葉集に記述がある白浜温泉、希少なパンダが見られるテーマパークなど、関西で名を馳せるリゾート地・南紀白浜。
そんな白浜の名産品が、今回の返礼品である本格クラフトビール「ナギサビールです。今でこそ白浜名物というイメージが定着して久しいですが、最初は小さなパチンコ店を改装した工場から始まりました。ナギサビールがここまで広く愛されるようになった製造のこだわりや歩みについて、社長の眞鍋和矢(まなべかずや)さんに取材しました。
地元の名水「富田の水」を使用
ビールの主な原材料は麦芽、ホップ、酵母、水。中でも口当たりや色味、麦芽本来の風味の出し方に最も影響を及ぼすのは水です。白浜町は熊野古道を流れる富田川から水道水が引かれており、フィルターを通さずに飲んでも十分美味しいので、ナギサビールも最初は水道水を使って仕込んでいました。
しかしある日知人から「白浜には“富田(とんだ)の水”という名水があるのになぜ使わないのか」と尋ねられ、試しにタンクに富田の水を張ってみたところ、澄み切った水色に感動した眞鍋さん。良質な水は原材料の味と香りを引き出してくれるものだと改めて知り、今ではナギサビールに欠かせない存在となりました。
酸化を防ぐ高度なボトリング
ナギサビールは加熱殺菌処理・フィルター濾過を一切行わない「生」のクラフトビールです。それを可能にしているのが高度なボトリング技術。通常、ビールはボトルに詰める際に酸素に触れ酸化してしまいますが、ナギサビールは(1)充填前にボトル内の空気をポンプで吸引し二酸化炭素を注入、(2)再びボトル内の空気を吸引し二酸化炭素を注入、という二段階の作業により、ボトル内に残る酸素を大幅に軽減し酸化を防ぎます。
おいしくいただける目安は瓶詰後180日以内。冷蔵保存もお忘れなく。
最高峰のビールとハムの奇跡のコラボレーション
こだわりの製法で生まれた返礼品は、カラメル麦芽を使った甘みとコクがあってフルーティーなペールエール、小麦の麦芽を使ったクセがなく飲みやすいアメリカンウィート、そして本場ドイツ出身で和歌山県在住の職人シンドラー・ヴェルナーさん手作りのハム&ソーセージセット。素材選びから製造まで一貫してドイツ製法で作られ、科学調味料などは一切使用していない本格的な商品です。
権威あるビールコンペ「インターナショナルビアカップ」で金賞と銅賞を受賞した白浜最高峰のビールと、ビールを知り尽くしたドイツ職人の奇跡のコラボレーションです。
ナギサビール命名秘話
眞鍋さんにナギサビールの生い立ちもお伺いしました。眞鍋さんは生まれも育ちも白浜町。20代の頃、今ほど普及していなかったヱビスビールを京都で初めて飲んだ時、その味わい深さと縁起のいいネーミング、高級感のあるデザインなどにとても心惹かれたそうです。
当時白浜で酒を作る業者はなく、あったとしても認知度は高いものではありませんでした。白浜は昔からの観光地でありながら観光客に認知されるお土産は少なかったのです。眞鍋さんは、散髪屋である実家の屋号だった「なぎさ理容所」の「なぎさ」を使って「ナギサビール」をやりたいと考えました。
「ナギサビール」をやると決めていた。でも…
固い決意を持って「ナギサビール」をやることだけは決めていた眞鍋さんでしたが、お酒に関する知識も経験もありませんでした。構想を膨らませつつ県外でサラリーマンや飲食店経営を経験し、ナギサビールが形になっていくのはもっと後になってからでした。
1994年の酒税法改正により最低製造数量基準が引き下げられたことで、いわゆる「地ビール」文化が興りました。地ビールという名前の通り、地名を冠するビールの名前がほとんどだった時代に「南紀白浜ビール」ではなく「ナギサビール」という独自の名前をつけるのはめずらしかったそうです。こうして1996年にナギサビール株式会社を設立し、翌1997年にいよいよナギサビールの販売が始まりました。
ビール造りは形になりましたがとにかく飲んでもらわないと始まらない、と2000年に店舗をオープンした眞鍋さん。しかし、地元民でもあまり通らないような山の上だったため「こんな場所にどうやってお客さん連れてくるんや」とお客様に叱られたこともあったそうです。
苦難の時代を経て山の上の店舗を直営レストランとして海沿いに移転し、2015年には本社工場も移転拡大。ナギサビールは徐々に認知度を上げていきました。
ラベルに込められた思い
どこかレトロでおしゃれなナギサビールのラベルに描かれている地図は、実は白浜町の地図なんです。普段見る地図と角度が違うので、地元民の私も教えてもらうまで気がつきませんでした。まるでヨーロッパの大陸のような描き方がユニーク。白浜町から県外へ、そして世界へと旅立つビールの物語性が伺えます。
もう1つ注目したいのが“First Breath 1997”という部分。創業年などを記すときは“since”を使うのが一般的ですが、ここでは“First Breath(ファーストブレス)”というオリジナルな表現が使われています。
これは真鍋さんがナギサビールを構想している時たまたま深夜の通販番組で見た一枚の絵から着想を得たものでした。母クジラが子どもを産んですぐ呼吸をさせるため海面に押し上げる場面を描いたもので、そのタイトルが”First Breath”だったそうです。ナギサビールが初めて世に出たのは1997年のこと。まさに最初のひと呼吸だったわけですね。
ナギサビールを飲みに白浜へ 観光ツールの1つに
最後に、白浜町に対する思いを眞鍋さんにお伺いしました。「白浜は白良浜や温泉といった自然に恵まれ、希少なパンダもいる抜群の観光地。最近は過疎化が進んでいますが、昔のような活気を取り戻したいです。微力ながらナギサビールもそれに貢献したい。ナギサビールが売れることで白浜の宣伝になり、現地でナギサビールを飲みたいから白浜に行くというツールの1つになれば嬉しいです」
ナギサビールは白浜町内の多くの量販店や飲食店で取扱いがあります。ぜひ現地に足を運んで美しい海を見ながら一杯、あるいは温泉に浸かった後に一杯と、白浜の風景とともに味わってみてくださいね。
近畿支部(和歌山県白浜町担当) / 小山 志織(こやま しおり)
紀南在住。県外の大学卒業後、和歌山にUターン。和歌山を拠点にしつつ旅するライター&エッセイストとして旅で得た経験などを元に執筆活動をしている。地域の情報発信にも関心があり、県内の取材に出かけることが多い。書くことが好きで、自分自身が地域の魅力を知りたい!という気持ちで取材執筆しています。
ナギサビールは予約不要で工場見学ができます。海や温泉を堪能した後はぜひ工場見学も楽しんでください!