名古屋が誇る豆みそ文化から生まれた「みそかつ」
愛知県名古屋市は江戸時代に徳川御三家の筆頭「尾張徳川家」の治める城下町として繁栄してきました。金のしゃちほこや復元された本丸御殿で有名な名古屋城、三種の神器のひとつである草薙剣を古くから祀る熱田神宮など、歴史にゆかりのある観光スポットも人気です。
そんな名古屋独特の食文化といえば「名古屋飯」。みそ煮込みうどんやどて煮、みそかつなど、豆みそ(赤みそ)を使った風味豊かな深い味わいは、地元の人のみならず仕事や旅行で訪れた人たちの舌をうならせてきました。
今回、ご紹介するお礼の品は、名古屋名物みそかつの老舗「矢場とん」の「矢場とん定期便(3回)」です。すでに揚げてあるレンジロースとんかつ・ひれとんかつとみそだれが入った「みそかつセット」、すでに揚げてあるレンジ串かつとみそだれが入った「みそ串かつセット」、揚げる前のフライロースとんかつ・ひれとんかつとオリジナル油・みそダレが入った「ふるさとセット」を毎月1セット計3回発送致。名古屋のまちなかで行列のできるみそかつ店の味をご家庭で気軽にお楽しみいただけます。
昭和22年創業、名古屋の戦後復興を支えた味
矢場とんのみそかつが生まれたきっかけは、戦後復興のさなかに初代店主である鈴木義夫(すずきよしお)さんが居合わせた雑踏の屋台でのこと。客の1人がつまみで食べていた串かつを「どて鍋(名古屋は豆みそのもつ煮込み)」に浸して食べてみたところ「これは美味い」と口コミで広がっていったそうです。
鈴木さんはこれを何とか商品化できないものかと試行錯誤を繰り返して秘伝のみそダレを完成。戦後間もない昭和22年、愛知県名古屋市に大衆食堂「矢場のとんかつ」として創業し、地元の人気店になりました。
「戦後まもない当時のお肉は貴重品。創業時はみそ串かつ、その後10年ほどしてみそかつが誕生しました。当時は数カ月に一度みそかつを食べるのが贅沢だったようです」と話すのは矢場とん広報部の鬼頭明嗣(きとうあきつぐ)さんです(写真左)。矢場とんのみそかつのルーツは「うまみあるどて煮のみそを、かつの上にかけて食べること」。数あるみそかつ店の中で、矢場とん独自の味わいはここからきているようですね。
矢場とんこだわりのみそかつ作りや通販でも美味しく食べられる秘策を経理部・栗原耕二(くりはらこうじ)さん(写真中央)、通販事業部・安藤英機(あんどうえいき)さん(写真右)に詳しく伺いました。
門外不出の秘伝の“みそダレ”に合う食材選び
かつに使われる豚肉は叩いて柔らかくするのが一般的。「矢場とんのお肉は叩かなくてもやわらかい良い肉を使用しているんです」と長年キッチンを担当していた安藤さんが教えてくれました。
仕入れ先にこだわり、豚肉は南九州産のものを購入。特に9割以上を占める鹿児島県産の豚はストレスを溜めない環境と名産のいも焼酎の粕を食べて育ったもの。一週間に14頭分しか入荷できない貴重な豚肉で、矢場とんの秘伝のみそだれによく合うやわらかくてうまみ豊かなお肉なのだそうです。
胃もたれ感なく食べ切れるワケは油とパン粉にあり
「ふるさとセット」にも含まれている矢場とんのオリジナル油。こちらはお肉やパン粉と合うようにサラダ油とラード(豚脂)で、油切れがよく胃もたれしにくいように調合されています。また、パン粉も2種類の乾燥パン粉をブレンドすることで通常のパン粉よりも油の吸収が少なく、揚げ時間も短く抑えられれています。よって矢場とんのみそかつは“切れのよい油”と“油の吸収が抑えられたパン粉”で1枚食べ切った後の胃に重い印象が残らないよう工夫されていました。
ちょっとした手間でお店の味を自宅で再現
素材選びから細部までこだわり抜いている矢場とんでは、多い日には1店舗2000人以上のお客様が来店されます。順番待ちのお客様が椅子に座ってから品出しまでの最短時間はなんと53秒!その秘密はセントラルキッチンで下処理を行い、店舗では揚げの作業に専念できるよう工夫されているから。どこの店舗も順番待ちをするほど人気の矢場とんが、案外待たずに席に座れる理由はここにあったんですね。「店舗で積み上げてきた創意工夫が返礼品にも生かされています」という通販事業部・安藤さん。店舗と同様、返礼品もセントラルキッチンでつくられているため、家でも店と同じ味をすぐに食べられるようになっているのです。
矢場とんの味を最後に決める「揚げ」の作業は、新入社員や入ったばかりのアルバイトは任されないのだとか。「私も入社3年してやっと揚げ場に立ちました。一昔前は揚げまで10年と言われていたほど難しい作業なのです」と通販事業部・安藤さん。そう聞くと揚げることに身構えてしまいそうですが、一般のご家庭でもプロの技を真似できるのでしょうか。通販で購入した場合、実はちょっとした手間でお店の味を再現できる裏技があるのだそうです。
返礼品は冷凍でお届けされます。より美味しくするためには食べる前に冷蔵庫や常温で半日くらい寝かせて半解凍くらいにしてから温めるのだとか。そうすると電子レンジで調理してもお店と同じくらいの加熱状態ができます。
矢場とんのレンジシリーズ(揚げ済み)を半解凍から温めるときは電子レンジ600wでだいたい1分30秒。そこからさらにもうひと手間、オーブントースターで30秒から40秒ほど加熱して表面の水分を飛ばすことでカリッと感が出せるそうです。フライシリーズ(揚げる前のもの)も同様に、半解凍にしてから揚げた方が火の入り方が絶妙になるそう。ちょっとした手間でお店の味が再現できるのであれば、ぜひ試してみたいですね。
2005年以降の名古屋飯ブームで全国展開
名古屋を含めた東海地域では昔から食べられて名古屋飯。全国的に知名度を上げたのは、2005年以降だったと言われています。それまで名古屋に1店舗だった矢場とんも2005年以降は毎日長蛇の列を作り、そのほとんどが名古屋以外からの観光客だったそうです。そして、より多くの人に名古屋飯みそかつを楽しんでもらおうと、全国展開をスタート。現在はテイクアウト店を含めて全国29店舗まで増えました。矢場とんのみそかつがたくさんの人に食べてもらうようになったのはこんな歴史があったんですね。
本場、名古屋の味をご家庭で
取材を終えると、すぐ食べたくなって吸い込まれるように矢場とん本店に。名物「わらじ定食」を注文するとみそだれに浸された熱々のみそかつがすぐに出てきました。まるで本物の「わらじ」のように大きなみそかつを前に「全部食べ切れるだろうか」と心配になりつつ1口ぱくり。サクッとジューシーなとんかつと、見た目とは裏腹にさっぱりとした後味のみそだれが口いっぱいに広がりご飯がすすみます。話で聞いた通り、食べ終えた後に胃もたれ感が残らない大満足のみそかつはさすが名古屋の矢場とん。行列のできる名古屋飯の本場「矢場とん」の味わいをこの機会に自宅でご堪能してみてはいかがでしょうか。
中部支部(愛知県名古屋市担当) / 小澤 志穂(おざわ しほ)
愛知県豊橋市生まれ・在住。趣味の旅行をきっかけにライターとして東海地域のおもしろさを発信しています。ガイドブックには載っていない、ローカルなグルメや絶景スポットを訪れるたびに「また行きたい」とその町の良さを再発見します。そんな地域の魅力をお伝えしていきたいです。
ビルが立ち並ぶ名古屋駅から少し移動すると、歴史的な建造物と古い街並み、活気のある商店街など、いろいろな顔を見せてくれる訪れた人を飽きさせないまちです。