秋田県民の胃袋わし掴み!魅惑のソーセージ
「大仙市に、秋田県民なら誰もが知っている本格ソーセージがあるらしい」という噂を聞いた私。しかも、そのソーセージを作っているのが、ポーランド出身のタベルスキさんという方らしいのです。「タベルスキ」、「食べるのが好き」なんて、まるでおいしいものを作るために与えられた名前のようではないですか!これはぜひともお話を伺わなければと、一路、秋田県大仙市へと向かいました。
全国各地から人が押し寄せる大曲の花火
秋田県の南東部に位置する大仙市は、日本三大花火大会の一つ「大曲の花火」が有名です。JR大曲駅の目の前にある商店街も「花火通り商店街」という名前がついているほど。毎年8月に開催される全国花火競技大会では、全国から集まったたくさんの人がこのアーチをくぐって会場へと向かいます。花火というと夏のイメージがありますが、花火会社が5つもあるこの街は「毎月花火が打ち上がるまち」としても知られていて、いつ、どこで花火が上がるかを掲載した「花火暦」も発行されています。
秋田の地に浸透していく本物の味わい
その大曲駅から車で15分ほど走った場所にあるのが、タベルスキ・マイケルさんが代表取締役を務めている株式会社IMIです。POLMEAT(ポルミート)の屋号で、一番人気のソーセージをはじめ、ベーコンやハンバーグなどを製造していて、生産量はなんと月に15~16トン。秋田県のスーパーには必ずといっていいほど商品が置いてあるため、県民にとっては慣れ親しんだ味なのです。ただポルミートの味に慣れてしまうと、もうほかの商品では満足できなくなるかもしれません。一口食べればジューシーな肉汁があふれだし、芳醇なスパイスが香って、今まで食べてきたソーセージが吹き飛んでしまいそうになるからです。
経験値ゼロでスタートしたソーセージ作り
こんなに本格的なソーセージを作るなんて、きっと母国のポーランドでソーセージ職人をしていたに違いない。そう思ってマイケルさんに尋ねると「ソーセージの作り方なんて全く知りませんでした。必要な機械だけを揃えて、自宅の車庫で試作品を作ったのがはじまりです」と教えてくれました。
秋田県に移住後は、日本語の勉強をしながらさまざまな仕事を経験。やがて起業して食品の輸入販売を始めたものの上手くいかず、悩んでいた時に街のお肉屋さんから「ソーセージを作ってみたら?」とすすめられたそう。支えてくれる恩人との出会いもあり、マイケルさんは日夜、研究を続けて、半年かけて納得のいく味にたどり着いたのです。
スパイスの力で肉の旨味を際立たせる
ポルミートでは原料となる豚肉を、秋田県はもちろん、スペインからも仕入れています。ソーセージに甘みを加えるため水飴を使うやり方もありますが、独自に調合した本場のスパイスを混ぜることによって、肉本来の甘みと旨味を最大限に引き出しています。でき上がったタネを羊腸に詰めて燻製や加熱の処理を行った後、冷蔵庫で1日ほど熟成させて完成。そうすることによって、さらに水分が2?3%ほど抜けて味が落ち着くのだそうです。
秋田ならではのオリジナル商品も人気
ポルミートの商品は秋田県内のスーパーならどこでも買うことができますが、本社敷地内にある直売所に足を運ぶ常連客も少なくありません。ここにはギフト用のセットはもちろん、スーパーでは売っていないレア商品や、お買い得価格で購入できる規格外品なども並んでいます。直売所のスタッフを務めている中田茉里(なかた・まり)さんにイチオシ商品を伺うと「やっぱり秋田ならではの、いぶりがっこソーセージはぜひ食べていただきたいです」と教えてくれました。
伝統の味に新しい風を呼び込む
秋田名物のいぶりがっこは、生の大根をナラやサクラの薪でスモークして乾燥させ、その後、米ぬかや塩、ザラメなどと一緒に漬け込んで作る保存食です。そのいぶりがっこを絶妙な歯ごたえが残るサイズにカットして、肉やチーズ、醤油と一緒に混ぜ込んで作ったのが、「いぶりがっこソーセージ」です。「秋田食のチャンピオンシップ2019」で銀賞に輝いたこともあり、マイケルさん曰く「日本酒のおつまみに最高」なのだそうです。
どれも全く違う味わいが楽しめる贅沢セット
そんな「いぶりがっこソーセージ」も入った詰め合わせが「うま?いけるセット」です。進化形サラミと銘打った「ハンターソーセージ」は、発酵させず水分を飛ばして熟成させるため、酸味がなく歯ごたえのある逸品。そのほかにも、ビールと一緒に味わうために作られたソーセージ「ビアマイスター」や、フレッシュなライムの風味で白ワインにも合いそうな「ライムホワイト」。そして秋田県角館市にある老舗「安藤醸造」の醤油を使用した和風ソーセージに加え、本格手作りベーコンに至っては、なんと400グラムのブロックがごろりと入っています。全てオリジナルの味わいで、まさにポルミートの極みとも言うべきラインナップです。
驚きと喜び、そして感動を味わってほしい
「秋田発・ソーセージ革命」という言葉を掲げて商品づくりを行っているポルミート。その背景には「本当においしいものを、日々の暮らしの中で味わってほしい」という、マイケルさんの強い思いがあります。「良いものに高い値段をつけて売るのは、誰にでもできること。私は本当においしくて安心して食べられる商品を、日常の中で楽しめる価格で届けたい。スタッフもお客様も、みんなが喜ぶソーセージ革命を起こしていきたいんです」と語ります。時々、秋田の言葉を交えながら語るその姿は、まさに情熱を抱いた革命家のように見えました。そんなマイケルさんが胸を張って「うマイケル」と言う「うま?いけるセット」。ぜひ味わっていただきたいです。
東北支部(秋田県大仙市担当) / 山口 由(やまぐち ゆう)
2011年、被害日本大震災をきっかけに横浜から盛岡へUターン。現在はフリーライターとして、お店や人材の紹介、学校案内、会社案内、町の広報誌など幅広く活動中。取材を通して出会う様々な人の思いや歴史を知り、「岩手ってすごいなぁ」と時間する日々を送っています。趣味は散歩と読書、長距離ドライブなど。
秋田県の中央部に位置する大仙市は、花火の街としてはもちろん、県内有数の穀倉地帯としても知られています。美しい風景とおいしいご飯、そして人の暖かさが感じられる素敵な街を、ぜひ皆さんに知っていただきたいです!