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茶農園直営の喫茶で味わう黄金色の釜炒り茶

長崎県北部の北松浦半島に位置し、山々に囲まれた自然豊かな佐々町では、
山から吹き下ろす強い風や風がもたらす寒暖差を生かした「茶」の栽培が盛んです。
町内に複数ある茶農園のなかでも「釜炒り茶」とよばれる
珍しい製法にこだわる農園に注目し、その農園が直営する喫茶店を訪ねました。

茶農園直営の喫茶で味わう黄金色の釜炒り茶

長崎県北部の北松浦半島に位置し、山々に囲まれた自然豊かな佐々町では、山から吹き下ろす強い風や風がもたらす寒暖差を生かした「茶」の栽培が盛んです。町内に複数ある茶農園のなかでも「釜炒り茶」とよばれる珍しい製法にこだわる農園に注目し、その農園が直営する喫茶店を訪ねました。

5月下旬から6月中旬に咲く 約2万本の花菖蒲が有名

5月下旬から6月中旬に咲く 約2万本の花菖蒲が有名

 町の中央をとうとうと流れる佐々川、その向こうに連なる山々と、のどかな里山風景が広がる佐々町。季節ごとに桜や花菖蒲、シャクヤク、ツツジなどの花々が彩る「佐々町皿山公園」は、周辺地域に住む人々の憩いのスポットとなっており、特に花菖蒲の時期は多くの観光客で賑わいます。
 公園内にある「皿山窯」は、江戸時代の陶工で磁祖とも称された加藤民吉が、佐々町で修業したことにちなんで作られた窯業体験施設。陶芸を学びたい人向けの陶芸教室がメインですが、予約をすれば、ろくろや手びねり、絵付けなどの陶芸体験も楽しめます。

〈上〉公園内の菖蒲園は県北一の規模。満開時は「花菖蒲まつり」も開催され、夜には竹灯篭でのライトアップも行われる  〈左下〉陶芸家の新井憲彦さんが指導してくれる皿山窯  〈右下〉皿山窯の生徒さんたちの作品。基礎を学んだ後は自由に作れるのだそう


心まで和む、 香ばしい味わいの釜炒り茶

心まで和む、 香ばしい味わいの釜炒り茶

 陶芸体験の後に訪れたのは「上ノ原製茶園 息福」。佐々町東部にある韮岳山頂に茶畑を持つ上ノ原製茶園が、「お茶の文化を守り、その魅力を伝えたい」と町の中心部に開いた喫茶店です。
 上ノ原製茶園では、茶葉を蒸すのではなく大きな窯で炒る「釜炒り」という、現在では珍しい製法にこだわっており、店内では釜炒り茶をはじめとしたさまざまな商品が買えるほか、釜炒り茶で作る海鮮茶漬けや手作りぜんざいなどが味わえます。
 「息福(いっぷく)という店名は、おいしいお茶でホッとひと息ついて、幸福になって頂けたらとの思いで付けました」と、店を切り盛りする上ノ原美佳子さん。接客の合間においしいお茶の淹れ方を教えてくれるなど、美佳子さんが気さくに話しかけてくれたおかげで、くつろぎのティータイムが過ごせました。

〈上〉香ばしさとさっぱりした風味が特徴の釜炒り茶。鉄釜で炒って茶に加工することで強い香りと優しい旨みが最大限に引き出せるそう  〈左下〉海鮮茶漬けに店主特製のぜんざい、飲み物が付く息福セット650円  〈右下〉松浦鉄道佐々駅から徒歩すぐの好立地

 上ノ原製茶園代表の上ノ原宏二さんは研究熱心な人で、釜炒り茶の可能性を追求するうち、血圧上昇抑制効果があるとされるガンマアミノ酪酸(ギャバ)を大量に含む「ギャバロン茶」を飲みやすく加工する製造法を発見。「癖が強く、独特の匂いもあるギャバロン茶ですが、釜炒りの工程などを経ることで飲みやすくできました」と宏二さんは語ります。
 試飲したところ、苦みやえぐみ、臭気は感じられず、あっさりとした烏龍茶のような味わい。この釜炒りギャバロン茶に、専門家のアドバイスのもと薬草などをブレンドしたオリジナル茶「天賦のちから」は、今や店のヒット商品となっています。
 「もともとお茶は薬用として歴史が始まったとも伝わります。毎日飲むお茶で、みなさまの健康に役立てれば」と宏二さん。大切な人へのみやげにしても喜ばれそうです。

〈上〉天賦のちからに使われる薬草一例。ドクダミ、ベニバナ、黒豆、ハトムギ、ビワの葉など 〈左下〉天賦のちからは基本ブレンドのほか、高血圧や冷え性改善、ストレス解消など目的に合わせたブレンドもある。すべて120g入り1080円 〈右下〉多種多様な茶葉がずらりと並ぶ店内


自慢の餡がたっぷり詰まった民吉もなか

自慢の餡がたっぷり詰まった民吉もなか

 次に向かった先は、「息福」と同じく町の中心部にある「御菓子処 叶家末廣」。看板商品は、佐々町きっての銘菓「民吉もなか」です。
 民吉もなかは、文頭でもふれた磁祖・加藤民吉にちなんで、店主・前田廣志さんの師匠が昭和33年(1958)に考案したもの。最中種(最中の皮)は民吉が作ったとされる木の葉の形をした向付皿「だき柏」の原型から作られており、こしあん、ゆずあん、抹茶あんの3種類が揃います。いずれも種の間からはみ出さんばかりに餡がたっぷり詰まり、小ぶりながらずっしりとした重さ。北海道十勝産の最高級小豆を使用し、独自の製法で炊き上げる餡は上品な甘さで、1個といわず2個、3個と思わず手が出る味わいです。

〈上〉民吉もなか1個120円。ゆずあん、抹茶あんのベースとなる白餡には、北海道産の高級手芒豆を炊いた自家製手芒餡を使用  〈左下〉店主・前田廣志さんと奥様の美知子さん  〈右下〉大吉の焼き印が押された一口サイズの「大吉まんじゅう」1個70円も人気

 店主の前田さんは和菓子職人歴60年の大ベテラン。75歳になった今も毎日、自ら餡を炊いています。餡づくりは力仕事。大変ではないですか?と尋ねると「師匠の背中を見て学んだのは“丹念にやる”ということ。このやり方でお客さんに喜んでもらってきているし、キザな言い方をすると、たとえお客さんが他のやり方を許しても自分が許しきらんです」と柔和な笑顔で答えてくれた前田さん。その言葉からは、亡き師匠への尽きない感謝と、職人としての矜持がひしひしと感じられました。
 前田さん自慢の餡は民吉もなか以外にも、冬期のイチゴ大福、初夏の水羊羹や水まんじゅうなどさまざまな形で味わえるので、お気に入りを探してみるのもおすすめです。

 理想を追求する実直な人々の姿が強く心に残った佐々町。道を極めることの豊かさを感じる旅となりました。
(2018年11月)

〈左〉駅前通りに面した場所に立つ 〈右上〉向かって左手には、長崎ならではのカステラのコーナーも 〈右下〉季節に合わせて変わる生菓子を楽しみに来る客も多い

春の訪れを告げる 河津桜・シロウオまつりに注目

春の訪れを告げる 河津桜・シロウオまつりに注目

毎年3月上旬の土・日曜に開催される「河津桜・シロウオまつり」。佐々川下流の堤沿い約1.5kmに渡り植栽された約260本もの早咲きの桜「河津桜」と、同時期に最盛期を迎えるシロウオ漁の様子を同時に見ることができるイベントで、一足早い春が感じられると人気を集めています。遊歩道には出店も開店し、シロウオ漁の体験(要予約)なども行われます。

河津桜は県内一の規模で植えられている

約70基のシロウオ漁場が佐々川に開設される

SPOT LIST

佐々町皿山公園(さざちょうさらやまこうえん)

【電】0956-62-2101(佐々町役場建設課)【住】長崎県北松浦郡佐々町鴨川免351【交】西九州自動車道佐々ICから車で10分【料】入園無料【時】9〜18時【休】無休【P】160台

皿山窯(さらやまがま)

【電】0956-62-6772【住】長崎県北松浦郡佐々町鴨川免351佐々町皿山公園内【交】西九州自動車道佐々ICから車で10分【料】【時】【休】体験料や体験日時については要問合せ【P】160台

上ノ原製茶園 息福(うえのはらせいちゃえん いっぷく)

【電】0956-63-2712【住】長崎県北松浦郡佐々町本田原免234-2【交】松浦鉄道佐々駅から徒歩1分【時】9〜18時【休】日曜【P】3台

御菓子処 叶家末廣(おかしどころ かのうやすえひろ)

【電】0956-62-3227【住】長崎県北松浦郡佐々町羽須和免827【交】松浦鉄道佐々駅から徒歩3分【時】8時30分〜18時(3〜10月は9時〜18時30分)【休】水曜(祝日の場合は営業)【P】1台

河津桜・シロウオまつり(かわづざくら しろうおまつり)

【電】0956-59-7761(佐々町観光情報センター)【住】長崎県北松浦郡佐々町【交】松浦鉄道佐々駅から徒歩すぐ【料】【時】イベントの日程や詳細は問合せまで(8〜17時、水曜定休)【P】100台(佐々町役場と観光情報センターの駐車場利用)

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